翌日の朝。新聞の片隅に、小さくこう記されていた。「片岡達哉は刑罰を逃れるため、刑務所内で苛性ソーダを飲み込んだ。しかし量が多すぎ、死亡した」通勤ラッシュで賑わう街では、地下鉄へと急ぐサラリーマンたちが同じ新聞を手にしていたが、その片隅の目立たぬ記事に目を留める者はほとんどいなかった。その日は金曜日。明日香は昨夜遅くまで起きていたため、朝は外出せず家にいた。使用人が郵便受けから今朝の新聞を取り出し、いつものように樹の習慣に従って茶卓へ置く。ちょうどそのとき、制服姿の明日香がキッチンからオレンジジュースのグラスを手に現れ、ふと新聞に目を留め、何気なく手に取った。「若様」使用人の声に応じ、樹が袖のボタンを留めながら、颯爽と二階から降りてきた。相変わらず清々しい風貌である。「学校に戻りたくないなら、無理に行かなくてもいい。最高の家庭教師を手配するから、家で勉強しても変わらないさ」「大丈夫。一日中、家に閉じこもって何もしないわけにはいかないから」そう言って、明日香は新聞を開いた。達哉が刑務所で死んだ。苛性ソーダを飲み、刑罰を逃れようとしたのだ。彼女の顔に表情はなく、心中もほとんど動揺していなかった。ただ、少し驚きはした。あのホテルで樹に殴られて病院へ運ばれたとき、すでに助からないと告げられていたはずではなかったか。今になって彼の消息を再び知ることになるとは……それも新聞を通して。樹が仕組んだことなのだろうか?苛性ソーダを飲むなんて……彼は遼一ではない。明日香は小さく頭を振り、その思考を振り払った。彼女は歩み寄り、樹の胸元のピンを整えた。ダイヤモンドに縁取られた中央の赤い宝石が、チェーンに揺られて胸元で光を放ち、目の前の男をいっそう貴公子然と際立たせている。「どうした?気分でも悪いのか?」彼は彼女の様子がどこかおかしいことに気づき、手を伸ばして額に触れた。その視線が茶卓の新聞へと移る。表情は曇り、読み取りにくい。「ううん……ただ、この前学校に戻ったとき、ちょうどテストがあって。今日、結果が出るの。もし悪い点数だったらどうしようかと思って」樹は慰めるように彼女の髪を撫でた。「そんなにプレッシャーを感じなくていい。僕が稼いだ金は、これから先も十分すぎるほどある」明日香は静
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