佳奈は理由もわからずに、そっと智哉の背中を撫でて尋ねた。 「智哉……お父さんに何か言われたの?」智哉は即座に否定した。 「いや……ただ急に、君が俺から離れていくような気がして怖くなっただけだ」「何言ってるの?もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだよ。智哉が頑張ってミルク代を稼いでくれなきゃ困るんだからね。最近いろいろ大変だったでしょう?今日は親友達と一緒にゆっくり飲んで、気分転換してきて」佳奈は心配そうに智哉の頬を優しく揉みほぐし、背伸びをして軽くキスをした。 「これで少しは元気になった?」智哉は佳奈の腰を片手でしっかり抱き寄せ、ぎゅっと胸に引き寄せた。 深い黒瞳の奥に、抑えきれない感情が溢れている。温かな唇が彼女の頬をそっとかすめ、智哉は掠れた声で囁いた。 「君さえそばにいてくれれば、俺は何も怖くない」そう言って、佳奈の柔らかな唇を深く覆った。ふたりは庭の芝生の上で、眩しい昼の陽射しの下、愛情たっぷりに抱き合いキスを交わした。 智哉は心に抱えていた不安をすべて投げ捨て、ただ腕の中の佳奈がもたらす幸せだけを存分に味わった。気持ちが高まりすぎて、何度キスをしても離したくないと思ったほどだ。 最終的には佳奈の方からそっと止めに入った。「智哉……もうダメ。これ以上キスされたら、耐えられないよ」智哉は微笑みを浮かべ、赤く染まった佳奈の唇を指先で優しく撫でながらからかった。 「キスだけで耐えられなくなるの?高橋夫人、欲求が強いね。最近、俺がちゃんと頑張ってなかったからかな?」耳元に唇を寄せ、そっと耳たぶを甘噛みしながら囁く。 「お客さんが帰ったら、ゆっくり満足させてあげるよ。いい?」佳奈は顔を真っ赤にして、彼の胸を軽く叩いた。 「もう、変なこと言わないで。みんな待ってるんだから」智哉はそんな佳奈の頬を愛おしそうに撫で、微笑んだ。 「分かったよ、中に入ろう」そう言って、智哉は佳奈の肩を抱き寄せ、一緒に室内へと歩いていった。窓際で静かにその様子を眺めていた征爾は、ゆったりお茶を飲みながらため息まじりに呟いた。 「あんなに仲がいいふたりだ。もし本当に離れるようなことになれば、智哉は耐えられずに壊れてしまうだろうな」傍らにいた奈津子は征爾を見上げ、穏やかな口
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