その瞬間、智哉は立ち尽くした。 頭では玲子を疑っていたとはいえ、それが確定した今、心臓を鋭く貫くような痛みに襲われた。 呼吸すら忘れるほどの衝撃だった。 彼は何度も呟いた。 「ありえない……玲子が美智子さんを殺すはずがない……美桜の実の母親なんて、そんなはずが…… だってそうなら、なんで俺と美桜を結婚させようとした?……近親相姦になるって、分かってたはずだろ……」そんな智哉の姿を見て、結翔は深くため息をついた。 「俺も一時は疑ったよ。もしかしたらお前は玲子の子じゃないんじゃないかって」 その言葉を聞いた智哉は、結翔の胸ぐらを掴んだ。「それもあり得る。俺はDNA鑑定をする。もし美桜が玲子の娘なら、俺は絶対に玲子の子じゃないはずだ」 そう言って踵を返そうとした瞬間、結翔が彼の手首を掴んだ。 そしてポケットから一枚の封筒を取り出し、渡した。 「俺は既にお前と玲子のDNA鑑定を三機関で取ってる。全部母子関係ありと出てる」 智哉は震える手で書類を見つめた。 「そんな……嘘だろ……玲子は正気じゃないのか? 俺と美桜が兄妹だって分かってて、くっつけようとしてたのか……」「どうせ美桜は子どもを産めないんだから、問題ないって、本人はそう言ってた」 その一言で、智哉は腰を机にぶつけるほど力が抜けた。 身体の痛みよりも、心の痛みの方が遥かに強烈だった。 彼は震える手でポケットをまさぐり、タバコを探した。 けれど、何も出てこなかった。 そのまま結翔に向き直り、低く絞り出すような声で言った。 「タバコ……持ってるか」 結翔は一本差し出し、火もつけてやった。 智哉はまるで中毒者のように、タバコを口に咥え、激しく吸い込んだ。 一本吸い終わるとすぐに次を、さらに三本目まで吸い続けた。 そんな彼の耳に、結翔の冷静な声が届いた。 「いくらタバコを吸っても、事実は変わらない。玲子は俺の母を殺し、佳奈を外で何年も苦しめた。 彼女が橘家に戻れないように、何度も妨害し、傷つけてきた。 智哉、もし佳奈がこの事実を知ったら、どうすると思う?」 智哉の目は真っ赤に染まり、声が怒鳴り声に変わった。 「言うな……絶対に彼女には言うな……! 彼
Baca selengkapnya