All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 441 - Chapter 450

482 Chapters

6. 「あの日の僕ら2」㉙

-㉙ 証言①- 王麗は娘に秘密の暗号について明かした後、辺りをずっと見廻していた。少し焦りの表情を見せているらしく、少し気を遣った美麗は母に声を掛けた。お客にバレてはいけない情報が含まれているかもしれないと思ったので勿論、中国語で。美麗(中国語)「ママ、どうかした?」王麗(中国語)「美麗、ここにあった唐揚げ弁当を見なかったかい?守君の所の真希子に頼まれて10人分用意したんだけど、1人前が見当たらないんだよ。」美麗(中国語)「知らないよ、食べちゃったんじゃないの?」王麗(中国語)「私はあんたと一緒に賄いの炒飯と父ちゃんが作り過ぎた麻婆豆腐を食べたじゃないか、本当に知らないのかい?」美麗(中国語)「見て無いよ、さっきからずっと一緒にいたでしょ。」王麗(中国語)「それもそうだね・・・、悪かったよ・・・。」 丁度その頃、警察署に着いた龍太郎は岡持片手に中に入って行った。そんな店主を美恵と文香が出迎えた。美恵「あれ?龍さん、今日も出前なの?」文香「私らは頼んでないけど・・・、誰?」龍太郎「めっちゃんに頼まれて持って来たんだ、いるかい?」文香「めっちゃんって・・・、聞いた事が無いけど誰の事かな?」 すると遠くから焦ってやって来た署長、「めっちゃん」こと姪家(めいけ)慎吾が急いで龍太郎を署長室に呼び込んだ。慎吾「龍さん、やっと来たか・・・。腹減ったよ、早く早く。」美恵・文香「署長!!」龍太郎「ほら、こいつの苗字って「姪家」だから「めっちゃん」なんだよ。めっちゃんな、俺は嬉しいがいつも唐揚げ弁当ばっかりじゃバランス悪いぞ。だからそんな体形になるんだろうが・・・、偶には野菜炒め弁当とか頼んでだな・・・。」慎吾「余計な事言わなくて良いから、早くこっち来て!!」 慎吾は龍太郎の背中を強く押して署長室の中に入って行った、そして中に入った瞬間中での会話を漏らさぬように扉をしっかりと閉めた後に2人は「警視総監」と「署長」の関係に戻った。龍太郎「よし、誰もいないな?」慎吾「はい、先程は大変失礼致しました、警視総監。」龍太郎「構わない、俺達が同級生ってのは本当の事だからな。それにしても唐揚げ弁当を1つ持って来ておいて正解だったよ、やはりあの場で美恵ちゃん達が出て来ると思ったんだよな。」 そう、「松龍・唐揚げ弁当事件」の犯人は龍太郎だった。龍太郎「あ、
last updateLast Updated : 2025-11-17
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉚

-㉚ 証言②- 2人が署長室の固定電話から銀行の店長に教えて貰った連絡先に電話をかけると2人にとって懐かしい声が聞こえて来た、どうやら店長も2人と同級生だったらしい。店長(電話)「お電話ありがとうございます、私店長の弥勒(みろく)でございます。」龍太郎「弥勒?聞き覚えのある名前だな・・・。」 銀行の電話に掛けている事を考慮した慎吾は「同級生モード」に戻った、龍太郎はその対応に安堵の表情を見せた。弥勒(電話)「龍さんじゃないか、今日は出前なんて頼んでないぞ。」龍太郎「すまんが別件なんだ、最近お前のいる店舗に警察官が行かなかったか?」弥勒(電話)「ああ、来たよ。確か署長をしているめっちゃんも一緒に来たはずだぜ。」慎吾「実はその事で電話したんだ、捜査に協力して欲しいから警察署に来れないか?」弥勒(電話)「俺は良いけど、どうしてそこに龍さんが?」龍太郎「長くなるから署で話すよ、すまんが協力してくれ。」 数分後、連絡を受けた弥勒が警察署に到着し、すぐさま慎吾が署長室に迎え入れた。龍太郎の秘密を知った弥勒は驚きを隠せない様子だ。弥勒「何だって?!龍さんが警視総監だって?!」龍太郎「みろちゃん、声がでかいよ、内緒にしているんだから。」弥勒「悪い、でも驚かない奴なんていないはずだぜ。」龍太郎「そうだな、それが普通か。さてと・・・、本題に入ろう。これはめっちゃんがお前の所から借りた監視カメラの映像で間違いないか?」弥勒「ああ・・・、俺も出勤していた日だ。間違いないよ。」 龍太郎は預け入れのあった時間まで映像を動かした、窓口と行き交う客達がずっと映っている中で大きな重箱を持つ男性が映りこんだので龍太郎はその男性を指差した。龍太郎「「義弘の代理人」として金を預け入れたのはこの男で間違いないか?」弥勒「ああ、そいつだ。あまりにも高額だったので俺も一緒に窓口で対応したから間違いないよ。」龍太郎「そうか・・・、分かった。そうだ、お前が知っていたらで良いんだがどうして「義弘」名義の口座に金が集まっているんだ?」弥勒「どうやら、「義弘」派閥の株主たちが使っている口座らしいんだ。俺も結愛社長と協力して敢えて泳がしてる。そうだ、思い出した事があるんだ・・・。」龍太郎「どうした?」弥勒「この男ってこの直後に行方不明になったって聞いたけど本当なのか?」龍太
last updateLast Updated : 2025-11-17
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉛

-㉛ 不審な点- 龍太郎には不審に思っていた事があった、今の今までどうして「貝塚技巧」関連の事件が表沙汰になっていなかったかだ。好美の事故があって以来警察署内ではずっとこの事件でざわついているというのに、よく考えてみればトラック消失の事実も有名になったのは事件から数週間経った後だった気がした。 そんな中、久々の休日を真帆と楽しむ守は松龍でランチを食べていた。龍太郎「おい守、最近真帆ちゃんと一緒に見かける事が多くなったじゃねぇか。お前まさか、俺の娘捨てて浮気したのか?」真帆「何言ってんの、龍さん。告白したのは真帆の方なんだけど。」王麗「それにあんたの娘じゃないだろう、何回言わせたら気が済むんだい。」 店主の言葉に頬を膨らませる真帆と、お決まりとなっているお玉でのツッコミをかます王麗。王麗「ほら父ちゃん、あそこ見てみな。」 龍太郎の目線の先で美麗が目に涙を浮かべて肩を震わせていた。美麗「パパは私のパパだもん、好美のパパは徳島にいるでしょ!!」龍太郎「悪かったよ、ほらお小遣いあげるから許してくれよ。」美麗「ラッキー!!」 守が目を凝らしてみると龍太郎がレジから取り出した2千円を受け取った美麗の逆の手には小さなメモが握られていたのが見えた、どうやら王麗の差し金による演技をしていたらしい。きっと後で山分けするんだろう、何とも現金な親子だ。勿論メモは龍太郎が分からない様に中国語で書かれていた。 一家の様子を見た恋人達が笑っていると、守の携帯に懐かしい人物からの着信が。守「あれ?結愛だ。ちょっと出て来るよ。」龍太郎「おう、裏庭使って良いぞ。」 守は龍太郎に促されて裏庭に向かい、出てすぐの所にあるベンチに座って電話に出た。守は電話の向こうにいる大財閥の社長の声色からただ事では無い事を汲み取った、結愛は物凄く焦っている様子だ。守「もしもし、どうした?」結愛(電話)「「どうした?」じゃねぇよ、お前の元カノが死んだ事故な、どうやら俺のくそ親父が絡んでいるらしくてよ。」守「何?!義弘が?!」結愛(電話)「ああ、実は俺も警察とは別に工場長のデスクを調べてたんだがその時に「義弘」の名義での指示書が見つかったんだよ。」守「指示書?義弘から?」結愛(電話)「ああ、ざっと読むとだな、俺が会社の経費で取り付けた安全装置を全て売却して義弘の口座に入金しろって
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉜

-㉜ 高嶺の同級生との再会- 麻婆豆腐の追加注文が入ったので、龍太郎が必死に鍋を振っている横をお手洗いを済ませた守が浮かない顔をして通った。 守の表情を見た店主兼警視総監はさり気なく電話の内容について聞いてみる事にした。龍太郎「おい守、さっきまでの元気はどうしたんだよ。結愛ちゃんは何て言ってたんだ?」 結愛も守や正と一緒にちょこちょこ店に来ていたので龍太郎にとっては友達みたいなものだった為に普段から「結愛ちゃん」と呼んでいた。守「好美の事故についてだったんだけど、どうやら義弘が関与しているらしいって言ってたんだ。」 警視総監として義弘についてずっと捜査しているので龍太郎は勿論知ってはいるのだが、今は「ただの店主」として話をじっくりと聞く為に知らないフリをする事にした。龍太郎「義弘って釈放されてからずっと行方不明になってる前の社長の事だろ?確か・・・、顔写真が新聞に載っていたよな。」真帆「守兄ちゃん、「義弘」って名前が出てから辛そう。」 義弘が独裁政治を行っていた貝塚学園に通っていなかった真帆は、正直あの頃の学園の内情について余り詳しくはなかった。守「義弘のせいで多くの仲間が死んでいった、好美もその1人と言っても過言じゃない。俺は決してあいつを許せない、行方不明になっているらしいけどいつかもう1度復讐するって決めているんだ。」 義弘の名前を聞いて美恵と文香が食らいつかない訳が無かった、食事をする手を止めてメモを取り始めた。美恵「ねぇ守君、良かったら詳しく聞かせてくれない?」文香「私達で良かったら何でも協力させて欲しいの。」龍太郎「おいおい、ここは飯や酒を楽しむ場所だぞ。仕事に利用しないでくれよ。」文香「ごめん龍さん、でもちゃんと事件について調べて解決させたいから。」龍太郎「仕方ねぇな・・・、特別だからな。」 そう言うと龍太郎は隠しマイクとレコーダーのスイッチを押した、警視総監として隠れて捜査を進める為だ。美恵「守君、お願いします。」守「結愛が警察とは別に工場長のデスクを調べた時に「義弘」の名義での指示書が見つかったらしいんだ。」美恵「それって、手書きだったの?」守「そこまでは聞けてないな、ちょっと待って。」 守は携帯を取り出して結愛に電話を掛けた、美恵や文香に聞こえる様にスピーカーに設定した。結愛(電話)「もしもし、どう
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉝

-㉝ 馬鹿げた噂- 龍太郎は油淋鶏をおかずに白飯を頬張る結愛を調理場からチラチラと見ながら数回程首を傾げていた、何処か違和感があったからだ。高級外車で店にやって来た大財閥の代表取締役はそんな店主に気付いて一言尋ねた。結愛「さっきから何だよ、俺の顔に何か付いてるか?」龍太郎「いやすまねぇ、いつもそればっかり食ってるのにやたら美味そうに食うからよ。」結愛「大好物の美味いもんを不味そうに食えって言う方が難しいだろう。」 義弘による残虐な独裁政治が終末を迎えてから数日後、守や圭と一緒に松龍に来て初めて食べたこの「油淋鶏定食」に惚れこんだ結愛は店に来るとこればかり頼んでいた。龍太郎「そうだな、あれ?お前顔にタレが付いているぞ。」結愛「すまねぇ、サンキュー。」 懐から手鏡を取り出して顔をチェックし、近くにあったティッシュで付着していたタレを拭き取った。口調は相も変わらずだが、結愛も1人の女性なのだなと言える。 ふと龍太郎は横に添えてある中華スープを見た、いつもそうなのだが少しも減ってない。龍太郎「お前、中華スープ苦手なのか?嫌いなら味噌汁に変えても良いんだぞ。」結愛「これか?最後の楽しみに取ってあるんだよ、食った後に飲むと美味いんだよな。」 これも相変わらずだ、先程から本人の様子を伺ったり質問したりして確認していたのだがやはりここにいるのは龍太郎が昔から知っている結愛本人の様だ。 しかし、龍太郎はどうして違和感がするのかが分からなかった。龍太郎「ふっ・・・、まさかな・・・。」 龍太郎は一言こぼしながらとある事を思い出していた、貝塚財閥の意向で決して公にされていないが龍太郎や王麗を含めた警察内部の数人だけが知っている「ある噂」だ。龍太郎「でも確か・・・。」 龍太郎はその噂に関連する貝塚財閥の内部事情を思い出した、これも決して公にされていない事情だ。貝塚財閥の社員でもこの事情について知っている者は少なかった。 龍太郎は自らが感じた違和感や噂を確かめる為に行動を起こす事にした、片手に普段バッグに入れている警察手帳を持っていた。龍太郎「結愛ちゃんすまん、ちょっと来てくれるか?」結愛「さっきから何だよ、折角食ってるのに。」龍太郎「今日の飯代サービスするから頼むよ。」結愛「やった、後で餃子と春巻き追加ね。」龍太郎「社長になってからも食いしん坊
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉞

-㉞ 店主としての対応- 高校生の頃から通っている松龍という身近な場所に自分が死者である事を知っている人間がいる事を知った結愛は驚きを隠せなかったが、自らの事情を悟られない様にする為に何とか平静を保とうとしながら席に戻って行った。 しかし、何処か浮かない表情をする友人を守は見逃さなかった。守「おい結愛、何かあったのか?」結愛「ちょっとな・・・、最近経営の事で頭を痛めててよ、龍さんに相談してたんだ。」 なんとか誤魔化そうとする結愛の言葉を調理場から聞いた龍太郎は目の前の死者に話を合わせた。龍太郎「でもよ、俺の言葉なんざ参考にならんだろう。第一扱ってる金額の桁が違うからな。俺みたいな小さな店の店主の言葉を聞いても仕方ないはずだぞ。」結愛「いやそんな事ねぇよ、話聞いて貰えて嬉しいぜ。」守「でもよ、さっき呼んだのは龍さんの方からだっただろ?話があったのは龍さんの方だったんじゃないのか?」結愛「見透かされてたって言えば良いのかな、俺が無理して笑ってたのがバレたみてぇだ。」 そんな中、店主兼警視総監は先程まで結愛が食べていた定食を眺めて言った。龍太郎「それすっかり冷めちゃったな、温めなおしてやるよ。」結愛「良いよ、もうちょっとだけだし。」龍太郎「俺が呼び出したから冷めちゃった訳だからな、やらせてくれ。」 龍太郎はそう告げると結愛の定食を手に調理場に入り冷めた油淋鶏をオーブントースターに入れた。温めなおしに決して電子レンジを使わないのは店主の拘りらしい。 次に龍太郎は冷めて少し硬くなった白飯を熱した中華鍋に入れて卵と炒め始めた、塩胡椒と醤油で味を調えて簡単な卵炒飯に変身させた。 出来上がりと同時にオーブントースターの音が鳴った、丁度いいタイミングだ。龍太郎「ほらよ、食ってくれ。」 店主は出来たばかりの卵炒飯を先に渡した、結愛が熱々の炒飯に食らいついていると龍太郎が温かくなった油淋鶏を手にやって来た。ただ逆の手には小さな容器、よく見ると中にはタルタルソースが入っていた。結愛「何だよ、これ。」龍太郎「味変だ、チキン南蛮みたいに食ってみてくれ。」 結愛が言われた通りタルタルソースをつけて食べ、その味を噛みしめていると龍太郎の携帯が鳴った。画面に映っていたのは「姪家慎吾」の名前。龍太郎「めっちゃんじゃないか、どうしたんだよ。」慎吾「警視総監
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㉟

-㉟ 重要参考人の死者- 龍太郎は携帯を握る手の力を強くした、我原 悟が余りにも自己中心的な理由で自分の娘と呼んでいた好美を殺したからだ。 今回の事件、全ての犯人は最初から工場長の我原 悟と分かってはいたが犯した罪が余りにも酷すぎる。慎吾(電話)「あの・・・、警視総監、聞こえてますでしょうか?」龍太郎「ああ、悪い。続けてくれ。」慎吾(電話)「入金があった日はトラックの消失事件が起こった日と同じだったんです。」 これも龍太郎の予想通りだった、風の噂で現場である貝塚技巧がずっと経営難に陥っている事を聞いていたからだ。龍太郎「という事はトラックを売って作った7000万を・・・。」慎吾(電話)「義弘の口座に入れたという事になりますね。」 しかし、どうしてそこまでして入金をする必要があったのだろうか。 そんな中、温めなおした油淋鶏定食を完食した結愛は1人裏庭に向かった。守が後を追うと食事を終えた社長は出てすぐの所にあるベンチに座って煙草を燻らせていた。守「お前、煙草吸うんだな。」結愛「守いたのかよ、迷惑になると思って人の前では吸わない様にしてたんだけどよ。」守「分かるよ・・・。」 そう言うと守もポケットから煙草を取り出して咥えた。結愛「お前もかよ、ほら・・・。」 結愛がそう一言告げてライターの火を近づけると守はゆっくりと吸い始めた。守「悪いな、でかい会社の社長さんに火を付けて貰えるとは思わなかったよ。」結愛「今はそんなの関係ねぇよ、俺らはただの友達だろ。それに俺の方が謝らないといけないんだからよ。」守「なんでお前が謝るんだよ。」結愛「当たり前だろうが、うちの子会社の人間がお前から好美ちゃんを奪ったんだぞ。」守「悪いのはお前じゃなくて工場長だろ、あの顔を思い出すだけでも腹が立って来るぜ。」 2人が煙草を楽しんでいると店から真帆が出て来た。真帆「守もゆ・・・、結愛さんも煙草吸うんだね。」結愛「ああ・・・、真帆ちゃんだっけ。消そうか?」真帆「いや、大丈夫だよ。」 そう言うと真帆も懐から煙草を取り出して吸い始めた、守には黙っていたかったらしいがこの際構わないかと思ったからだ。真帆「守は煙草を吸う彼女は嫌?」守「そんな事無いよ、どっちかというと黙っていた事の方が嫌だ。」真帆「そう、良かった。」 そんな会話を交わしていると龍太
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㊱

-㊱ 事故の理由- 守は訳が分からなくなっていた、何処からどう見ても目の前にいるのは先程まで鍋を振っていた中華料理屋の店主だからだ。守「待ってくれよ、今までそんな素振りしてなかったじゃねぇか。」龍太郎「のほほんと暮らしたかったからずっと隠してたんだ、悪いな。俺は警視総監で母ちゃんは警視、ずっと義弘に関する事件を調べているんだ。」王麗「あんたの母ちゃんと情報交換しながらね。」 王麗が警察手帳片手に裏庭に出て来た、龍太郎も同様に警察手帳を出している。王麗「実はあんたの母ちゃんに貝塚財閥の筆頭株主になってくれって言ったのは私なんだよ、ずっと義弘を監視出来る様にね。」守「話がデカすぎる・・・、頭がおかしくなりそうだ。」結愛「それにおば様が筆頭株主になっている理由が警察絡みだったなんて驚きだぜ。」守「え・・・、結愛も知らなかったのか。」結愛「龍さん達が警察の人間だってことを知ったのが今日だからな。」 大企業の社長は会社の株主の事を全て知り尽くしている物だと思っていた守、それに走り屋である自らの母も警察に協力していたとは想像もしていなかった。結愛「それでよ、光明から聞いたんだけど暴走車事件があった日に貝塚技巧の工場長室に仕掛けた隠しカメラに茂手木の姿が映っていたらしいんだ。」守「茂手木って確か古文の・・・。」結愛「そう、ほら昔俺ん所の株主総会にいただろ?義弘派閥の人間として。」守「確か投資家だって言ってたっけ、それで茂手木がどうしたってんだよ。」 結愛は守の言葉を聞いてため息をついた。結愛「それがな、悟が茂手木に呼び出されて一緒に出ていったって言うんだよ。悟の手には大きな風呂敷があったらしいんだ。」龍太郎「今風呂敷って言ったか、どれ位の大きさだ?」結愛「やたらと食らいついてくるな、確か花見や運動会の弁当位の大きさって言ってたよ。」龍太郎「花見や運動会の弁当・・・、って事は重箱だよな。母ちゃん、確かあの山小屋のそばに捨てられてたよな。」王麗「ああ、それに風呂敷も一緒だったよ。」龍太郎「その風呂敷って何処にあるんだ?」王麗「確かあそこに・・・。」 王麗は店内からフリーザーパックを出して来た、中には押収したと思われる黄緑色の風呂敷が入っている。結愛「それだよ、光明も黄緑だって言ってたもん。」龍太郎「という事は・・・。」王麗「だろ
last updateLast Updated : 2025-11-24
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㊲

-㊲ 取り調べ開始- 翌日、本人に知らされる事なく裁判所から我原 悟の逮捕状が出された。それが故に龍太郎が自ら取り調べを行う事となった、悟は貝塚技巧に入社してから週に幾度も松龍に通っていたので誰よりも龍太郎が相手した方が話しやすいと思われたからだ。 いつも通り岡持を片手に警察署に到着した龍太郎は一先ず慎吾に確認する事にした。龍太郎「めっちゃん、悟は取調室にいるんだよな?」 すぐそばに他の署員がいるのでただの友人として対応する慎吾。慎吾「勿論だよ、それよりちゃんと料理作って来たのか?」龍太郎「当たり前だろ、俺が忘れて来た事があるか?」 念の為に岡持の中身を確認させる龍太郎、そこには悟が昔から好きだった麻婆豆腐丼と油淋鶏が入っていた。慎吾「龍さん、俺の唐揚げは?女将さんに頼んでいたんだけど。」龍太郎「母ちゃんに?今日は美麗(みれい)と出かけているぞ。」 慎吾の言葉を聞いて携帯を確認する龍太郎、確かに王麗からメッセージが入っていた。王麗(メッセージ・中国語)「姪家さんが唐揚げ丼を注文してたよ、今日の取り調べの時に持って行ってやんな。」龍太郎「分かるか!!」 龍太郎は中国語が全くダメなので分かる訳が無い、中国で料理修業をしていた時も張朴が日本語で丁寧に教えていたので余計だった。 龍太郎はその場で王麗に電話を掛けた。龍太郎「母ちゃん、中国語でメッセージ送るなって何度も言っただろう?」 そう、このような件は今回が初めてではない。王麗(電話)「悪かったよ、直前まで美麗(メイリー)と中国語で話していたから許しておくれ。」龍太郎「仕方ねぇな・・・、それにしても何であいつは中国語が達者なんだ?」王麗(電話)「そりゃあたしと父さんが教え込んだからね、当然だよ。」 電話を切った龍太郎は後で美麗が唐揚げ丼を持って来ると告げて悟の待つ取調室に入った、悟はパイプ椅子に深く腰を掛けてうなだれていた。悟「何で・・・、龍さんがここにいるんだよ・・・。」龍太郎「お前が好きだったものを持って来たんじゃねぇか、ほら食えよ。」 岡持から持参した2品を取り出した龍太郎、料理を見た悟は涙を流した。悟「食って良いのかよ。」龍太郎「当たり前だろう、ダメなら持って来ねぇよ。」 店主の言葉を聞いて涙ながらに蓮華を手にする犯人。悟「頂きます・・・。」 ゆっくりと両手
last updateLast Updated : 2025-11-24
Read more

6. 「あの日の僕ら2」㊳

-㊳ 怒りの取り調べ- 警視総監がある男性の写真を見せた時の犯人の反応は正直言って薄かった、あまり印象に残っていなかったのだろうか。悟「確か・・・、そうだ。工場見学に来た五味光明さんだよ!!」龍太郎「そうだな、でも本当にそれだけか?」悟「どういう意味だよ。」 龍太郎は悟が自分の工場を支える親会社の事をちゃんと把握しているか改めて把握したかったのだ。龍太郎「仕方のない奴だな・・・、お前は親会社の社長夫婦の事を忘れたってのか?」悟「忘れている訳が無いだろう、貝塚結愛社長と貝塚光あ・・・、あ!!」龍太郎「そうだよ、お前の工場の見学に行ったのは副社長の貝塚光明さんだ。お前には言ってなかったが工場見学に紛れて隠しカメラを仕掛けて貰っていたんだ。」悟「何だって?!どうしてただの中華料理屋の龍さんがそんな事を!!」 龍太郎は警察手帳を取り出した、「警視総監 松戸龍太郎」と書いてある。龍太郎「これで分かっただろう、俺が今ここにいる理由が。」悟「十分だ、それで何が聞きたい?」龍太郎「レンタカー屋からの盗まれた車で犯行が行われた暴走車事件の時、お前は何処にいた?」悟「職場だよ、取引先の方と仕事の話をしていたんだ。」龍太郎「本当か?」悟「な・・・、何だよ。」 龍太郎は光明が工場長室に仕掛けていた隠しカメラの映像を出した。悟「これは何だよ、俺は知らねぇぞ!!」龍太郎「それもそうだな、副工場長の島木さんしか知らない事だったんだからな。」悟「島木め・・・、後で覚えていやがれ、とっちめてやる・・・。」龍太郎「それはどうかな?」悟「何だって?!」龍太郎「まぁ、見てみろって。」 龍太郎は映像を少し早送りした、そこには悟と茂手木の2人が映っていた。悟が両手に重箱を抱えていた。悟「ほら、取引先の人と話していただろうが。」龍太郎「取引先との会話で重箱なんて必要なのか?」悟「誰だって腹が減るだろうがよ。」龍太郎「時計を見てみろ、運動会でも花見でも無いのにあんながっつりとした弁当を食う奴がいるか?」悟「食いしん坊だったんだよ、俺も茂手木さんも。」龍太郎「お前今、「茂手木」って言ったな?」悟「な・・・、何だよ・・・。」 龍太郎は悟の言葉を聞き逃さなかった、そして街中に設置された監視カメラやオービスの映像を出した。龍太郎「お前は警察の人間の目が暴
last updateLast Updated : 2025-11-24
Read more
PREV
1
...
4344454647
...
49
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status