All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 431 - Chapter 440

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6. 「あの日の僕ら2」⑲

-⑲ 罪のきっかけ- 突然現れたただの町中華の亭主が自らの目の前に座り、警察が積み上げた大量の資料を読み始めた事に多少の違和感を覚えた犯人は演技ではないか、何かの冗談では無いかと疑い始めた。犯人「あんた、誰なんだよ。何処からどう見ても警察の人間に見えないんだが。」龍太郎「さっき言っただろう、警視総監だって。それより冷めるから早く食えよ。」 先程から自らの事を警視総監だと言い張る町中華の店主・龍太郎は自分が資料を見ている間に料理を食べて栄養を付ける様にと伝えた。犯人「食って良いのかよ。」龍太郎「当たり前だろ、でないとこんな事言うかよ。」 確かにそうだ、犯人に食うなと言うなら、増してや自分も食べないと言うなら誰のための料理なのだろうか。犯人「でもよ、こんな時って大体カツ丼だろ?」 普段から刑事ドラマ等を見ているが故の先入観からだろうか、犯人は自らの持つ知識を持ちだした。龍太郎「うちは家族皆で切り盛りしている中華居酒屋だ、俺はずっと中国で料理の修業をしていたんだぞ、カツ丼なんてある訳がないだろう。」犯人「だからって町中華の店主が取り調べってのはおかしくねぇか?」 何処からどう考えても違和感があり過ぎる、目の前に座っているのはスーツを着ている刑事ではなくTシャツ姿の町中華の店主だ。犯人「証拠はあるのかよ、あんたが警視総監だっていう証拠はよ。」龍太郎「そうだな・・・、ちょっと待てよ・・・。」 龍太郎は料理を入れていた岡持の中を探り始めた、しかし証拠になりそうな物はないので料理代の精算用に持っていたポーチの中を探り始めた。奥底に目的の物を見つけたらしくそれを手で泥を掘り出す様に取り出して犯人の方に投げた、それにより炒飯の盛られた皿が落ちかけたので犯人は必死に止めた。犯人「危ねぇな・・・、折角の料理が勿体なくなるだろうが!!」龍太郎「お前は俺が作った町中華の安っぽい料理を大事にしてくれる奴なんだな、ただそれを見てみろよ。」 龍太郎は自らが投げた物を指差した。龍太郎「それを見ても認めねぇか?」 犯人は龍太郎が投げた物を改めて見た、警察手帳だ。犯人「見ても良いのかよ。」龍太郎「許す、開けてみな。」 犯人は恐る恐る警察手帳を開けてみた、特殊な制服を着た龍太郎の写真の下に「警視総監 松戸龍太郎」と書かれていた。龍太郎「それで分かったかよ、
last updateLast Updated : 2025-11-10
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6. 「あの日の僕ら2」⑳

-⑳ 娘には内緒にしていたから- 取り調べで犯人の事情を聞いた龍太郎はただ事では無いと思い、可能な限り真犯人に近付く為に、そして目の前にいる実行犯を救う為に事件について追及する事にした。龍太郎「宛名も何も書かれていなかったって?」犯人「ああ・・・、郵便局が運んで来た形跡も無かったんだ、消印が無かったからな。それに大家が言うには他の部屋の住人への届け物と全く違う時間に入っていたみたいだから尚更だ。」 犯人の目には全くもって曇りが無かった、どうやら嘘をつかず本当の事を言っているみたいだ。 龍太郎は証言を疑っている訳では無かったが、念の為に調べてみる事にした。龍太郎「すまんが、お前さんが受け取ったって言う封筒を借りても良いか?勿論乱暴には扱わないから。それに協力してくれたらお前さんの刑罰は軽くなると思うぜ。」犯人「勿論だ、金で雇われていたとはいえ悪い事をしてしまったのは真実だ。可能な限り協力させてくれ。」龍太郎「ふっ・・・、お前さんは心が綺麗な奴だな。可能な限り刑をより一層軽くしてもらう様に俺が掛け合ってやるよ、捜査協力のお礼だ。ただ1つだけ条件がある。」犯人「条件?」龍太郎「真帆ちゃんに謝る事だ、怪我はしてなかったとは言え怖い想いをさせてしまったのは事実だからな。」犯人「分かった、必ずあんたの言うその真帆ちゃんに謝罪させて貰うよ。」龍太郎「約束だぞ、裏切るなよ・・・。」犯人「勿論だ。」龍太郎「ほら、冷めちまうぞ。早く食ってしまえ。」 龍太郎は出前という形で拘留されている犯人の事を気遣って持って来た炒飯と餃子を指し示した、先程からろくに食べていないはずの犯人にしっかり食べる様に申し出ていたが少し遠慮気味だったので結構な量が残っていた。犯人「すまんな、今までの人生でまともな食事を摂った覚えが無くてな。」龍太郎「そうか、お前さんの今までの人生がどんな物だったかは知らんが今はしっかりと食ってくれ。」犯人「助かるよ、今は無理だが釈放されたら店にも伺わせてくれ。」龍太郎「勿論だ、ずっと待ってるからな。」 この日の取り調べはこれにて終了した、龍太郎は署で唯一正体を知る署長に犯人の使った蓮華や炒飯が盛られていた皿を提出すると鑑識に回す様に指示を出した。 第2取調室を出てからすぐの場所で、美恵と文香が龍太郎に声を掛けた。美恵「龍さん、長かった
last updateLast Updated : 2025-11-10
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6. 「あの日の僕ら2」㉑

-㉑ 暴露- 流石にこれ以上は黙っている訳にも行かないと思った龍太郎はいい機会だと思い真実を美麗に伝える事にした、しかしその為にはある事実を暴露する必要があった。龍太郎「美麗、ずっと隠しているつもりは無かったんだが父ちゃんと母ちゃんには夫婦以外での関係があるんだ。」美麗「夫婦以外の関係ってどういう事?」 そこに偶然居合わせた王麗が口を挟んだ。王麗「父ちゃんと母ちゃんはここで中華居酒屋をしている裏で警察として動いていて、実は上司と部下の関係でもあるんだよ。父ちゃんは警視総監で、母ちゃんは警視。」龍太郎「実は今日も暴走車事件の取り調べに行ってたんだ、父ちゃんと母ちゃんが行方を追っているある人物に関係があるって聞いてな。」 龍太郎は美麗の指紋が付いてはいけないと手袋を渡して犯人から押収した手紙を差し出した、手紙を受け取ると美麗はゆっくりと開いた。美麗「読んで良いの?」龍太郎「ああ・・・、ただ機密書類だから静かに読めよ。」 美麗は開いた手紙をゆっくりと黙読し始めた、手紙にはこうあった。この手紙を受け取った君へ 君がずっと金に困っているのは明白だ、この札束が欲しければ駅と警察署の近くにあるレンタカー屋から車を盗みロータリー周辺を走り続けろ。 勿論、信号が赤でも無視して走れ。私の言う事が聞けないならその金は返して貰う、今の君にはとても出来ないと思うがな。 パソコンで作成された手紙の下部に記載された名前を見た美麗は驚きを隠せなかった、手紙を持つ両手が小刻みに震えていた。美麗「貝塚・・・、義弘・・・。」龍太郎「そうだ、守達が通っていた高校で散々好き勝手したあいつだよ。今は行方不明とされているが、父ちゃんと母ちゃんはずっとあいつを追っているんだ。学生達と親しくしている理由はあいつらが好きだからってのもあるが、内部の情報を密かに手に入れる為だ。」王麗「守君のお母さんがちょこちょこ弁当を買いに来ているだろ、あれも実は荷物の中に紙を忍ばせてお互いに情報を交換し合っていたんだよ。」 目の前で展開される話について行けていない美麗は、2人を急いで止めた。美麗「待ってよ、話が早すぎて訳が分からない!!」龍太郎「そうだな・・・、すまん。じゃあ今美麗に言える最新の情報を言おう、実は好美ちゃんが亡くなったのも義弘が関係しているんじゃないかと踏んでいるんだ。あいつ
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6. 「あの日の僕ら2」㉒

-㉒ 夫婦が故に- 数年前、美麗がまだ学生だった頃に龍太郎は義弘が自らの派閥に属する株主の重岡により釈放された事を聞いてから王麗と2人で密かに関連する事件について調べていた。 そんな中で「貝塚義弘、山小屋から突然消失」という例の記事が新聞や雑誌を賑わしていたので美麗が好美と徳島に向かっている間、自ら話題となった山小屋へと赴いていた。 何処からどう見ても「廃屋」としか言えないその山小屋には記事の通りコンビニで買ったと思われるお握り等の食べかすが放置されていた、どうやらここで義弘が生活をしていたのは間違いない様だ。 その数日前に龍太郎は王麗にあるお願いをしていた、上司と部下として調査をしているにも関わらず夫婦関係や主従関係は変わらない様だ。龍太郎「母ちゃん、すまん(調査を頼む)。」王麗「何さ、また醤油が無くなった(しょうもない調べもの)かい?もう懲り懲りだ(父ちゃんが言うなら構わない)よ。」龍太郎「いや葱油(重要案件)だ・・・、いつもより多めで頼む(母ちゃんにしか頼めないんだ)よ。」 因みに何故か最初の一部分だけ暗号化されているこの相談は松龍の調理場で行われていたが、カウンターの客や夏季限定のかき氷要因でのバイトとして店を手伝っていた花梨は全くもって2人の会話の内容に気付いていない、何故なら2人にしか理解できない暗号を交えている為と調理場から聞こえて来る中華鍋で炒め物を作る音が聴覚を遮っていた為だ。 龍太郎はわざと火力を強めにして大袈裟に鍋を振り、激しく音が鳴るようにお玉を鍋にぶつけていた、勿論出来上がった料理に影響の出ない程度に。 それよりか、目の前で調理をしている2人がまさか正体を隠して義弘について調査をしている警視総監と警視だとは誰も思わない。龍太郎「貝・・・、技・・・、の・・・、トラッ・・・、件って・・・、れるか・・・?」 炒飯でも作っているのだろうか、換気扇や鍋の音が激しすぎて全くもって内容が入って来ない、こりゃあ客や花梨が会話を聞き取れないのも納得できる。王麗「父ちゃ・・・、分かっ・・・、ど・・・、全・・・、きこ・・・、な・・・。」 実は2人の間ではこれで会話が成立しているのだそうだ、長年連れ添った間柄が故に出来る事なのだろうか。そんな2人の会話を遮る様に花梨が調理場に入って来た、かなり焦っている模様だ。花梨「女将さん、苺とブ
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6. 「あの日の僕ら2」㉓

-㉓ 向こうから来た- 2人が裏庭で相談していると、店の電話が鳴り出したので王麗がベンチから立ち上がった。王麗「ちょっと電話出て来るね。」龍太郎「おう、頼むわ。」 裏庭で1人になった龍太郎は煙草に火を付けてゆっくりと蒸かし始めた、店主が昼間の優しい風に当たりながら煙草を燻らせていると店内から王麗の声が聞こえて来た。王麗「はいもしもし、松龍です。今お昼休みを頂いているのですが・・・、はい・・・。あ、ご予約ですね。大丈夫ですよ、お名前お願いします・・・、はい・・・、そうですか。」 美麗と一緒で長年に渡り予約の電話を受けているので慣れた口調で受け答えしてメモを取る王麗、ただ今回の電話では少し嬉しそうな口調で話している様だ。王麗「お時間はどうしましょう、19:00ね?勿論大丈夫ですよ、お席のご希望は御座いますか?あ、お座敷で・・・。ちょっと確認しますね・・・。」 龍太郎は少し違和感を感じた、いつもは席の希望など聞かないのだが・・・。龍太郎「このパターンは・・・、まさかな・・・。」 王麗の電話は続いた、少し時間を延ばす様にしている様だ。王麗「お待たせしました、お座敷大丈夫ですのでね、お電話番号お願い致します。はい・・・、はい・・・、ありがとうございます。呑み放題お付けしますか?」 これもおかしかった、食べ吞み放題を付けるかどうかは店に来てから聞く事になっているからだ。王麗「両方で・・・、分かりました。では19:00にお待ちしております、ありがとうございます。」 龍太郎は裏庭に戻って来た妻に話しかけた、予約の電話にしては不審な点があったが龍太郎が想像していた通りの理由だったらしい。龍太郎「どうした、長かったみたいだがもしかして逆探知でもしてたか?」 裏庭の近くにあるノートパソコンには独自の逆探知システムがインストールされていた、勿論この事は夫婦2人以外は誰も知らない。秘密のフォルダに入れているのでこのパソコンを時々使う美麗も同様だ。王麗「そうさね、念の為やっておいたよ。」龍太郎「でもよ、「普通の予約」じゃあ逆探知なんかしないし席の希望なんて聞かないだろ?」王麗「それが「普通の予約」じゃないんだよ、貝塚技巧の従業員らしき人が予約の電話をして来てね。」龍太郎「でも席の希望を聞いたのはどうしてだよ。」王麗「下手したら事件についての情報を聞け
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6. 「あの日の僕ら2」㉔

-㉔ 先輩と後輩- 夫婦は貝塚技巧から来た2人の客の言葉を一言も聞き逃すまいと全神経の7割以上をイヤホンを付けた右耳に集中させていた、目の前のカウンターで晩酌をしている客の言葉を聞く逃す位だ。カウンター客「龍さん、そろそろお愛想して。龍さん?龍さん、聞いてる?」龍太郎「ああ、悪い。注文か?」カウンター客「頼むよ、ずっとイヤホンで何聞いている訳?」 王麗は龍太郎が嘘が苦手だったことをつい先ほど思い出した。龍太郎「ボートの実況を聞いててな、若松の⑫レースが荒れると思って買ったんだよ。」カウンター客「どれどれ・・・、俺も見てみようかな。」 まずいと思った王麗は急いで助け舟を出した、今夜若松ではレースは行われていない。王麗「父ちゃん何言ってんだい、今日買ったのは蒲郡だろう。自分で買った舟券も忘れちまったのかい?」龍太郎「そうだった、色々と買ったから忘れてたよ。」王麗「忘れる位って事はあんた買い過ぎなんだよ、それで負けたらどうするつもりだい?」 カウンターの客は携帯を取り出して蒲郡競艇のホームページをチェックした、どうやら⑫レースは1番人気で終わりそうな模様だ。カウンター客「龍さん、何を買ったんだよ。ベタじゃないか、勿体ない事をしたな。」龍太郎「くそぉ・・・、1万やられたわ・・・。」カウンター客「取り敢えずお愛想して。」龍太郎「そうか、ビールと唐揚げと・・・、フカヒレね。えっと・・・、5千・・・。」王麗「父ちゃん、うちにそんな高級なもんいつ入荷したんだい。唐揚げと瓶ビールでしょ。」 龍太郎と王麗の会話は勿論嘘だ、捜査と店が忙しすぎて今日は舟券など買えてはいない。王麗は思い出したかのように例の座敷席へと瓶ビールを持って行った。王麗「お待たせしました、瓶ビール2本ね。」客①「女将さん、ありがとうね。」王麗「あらあんた、ヤケに嬉しそうな顔をしているじゃないか。」客①「聞いてくれる?今日俺の誕生日なんだよ、それでコイツが酒奢ってくれるって言うから来た訳。良い奴だろ、泣かせてくれるよな。」客②「いやいや、世話になっている先輩に感謝したいだけっすよ。」 どうやらこの2人は貝塚技巧で働く先輩と後輩の関係らしい、良い機会だと思った王麗はこの誕生日を利用する事にした。王麗「そうかい、じゃあ私からのお祝いと言っちゃなんだけど注がせて貰えるかい?
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6. 「あの日の僕ら2」㉕

-㉕ 釈放後の様子- 次の日の朝から龍太郎と王麗は行方不明とされていた義弘が暮らしていたと噂される山小屋へと向かった、暗い木々の中にひっそりと立つその山小屋は何処からどう見ても廃墟としか思えなかった。王麗「父ちゃん、気味が悪くてどう見ても人が住んでいたなんて思えないよ。私、何か寒気がしてきたんだけどね。」龍太郎「敢えてこういった場所を選んだんだろう、でないと行方を眩ませることなんて到底出来ないからな。ほら母ちゃん、見てみな。」 龍太郎は少し遠くの方向を指さした、よく見てみるとコンビニのおにぎりの食べカスが捨てられている。何故か全部「ツナマヨ」だったのが少し気になったのだが。王麗「あいつ、魚が好きな奴だったかね。」龍太郎「ここに釈放されてすぐだったはずからほぼ無一文だったんじゃないか?これがやっと買える物だったんだろう。」 それにしても不可解な事が一点あった、食べカスと一緒に何故か重箱が放られていたのだ、しかも1つだけではなく何個も。ただその数個もの重箱に共通して言えるのは全てが綺麗だった事だ、米一粒も入っていた形跡が無い。王麗「おかしくないかい?お握りを買うのがやっとの奴がお重の弁当なんて食べていたとは思えないよ。」龍太郎「お重だからって食い物が入っていたとは限らんだろう。」王麗「それって・・・、まさか・・・。」龍太郎「ほぼビンゴで間違いないようだな。」 如何にして釈放されたばかりの義弘が生活してこれていたかが見えてきた時、山小屋の隅でとんでもない物を見つけてしまった王麗は思わず叫び声を上げてしまった。王麗「あんた!!大変だよ!!」龍太郎「母ちゃん、ここにいるのが周りの連中にばれたらどうするつもりだよ。」王麗「それどころじゃないよ、あれ・・・。」龍太郎「何だってんだよ・・・、って嘘だろ・・・。」王麗「父ちゃん、これどこからどう見ても。」龍太郎「ああ・・・、間違いなさそうだ。」 2人の目線の先に転がっていたのは何と孤独死したと思われる義弘の遺体であった。龍太郎「異世界に行っちまったっていう馬鹿げた噂も出ていたがやっぱり嘘だったな、もし本当だとしても証明できる奴がいない。現に目の前に転がっている義弘本人が証明しているんだからな。」王麗「でも父ちゃん、遺体以外に見つけないといけない物があるだろう。一先ず遺体については署長に言って
last updateLast Updated : 2025-11-15
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6. 「あの日の僕ら2」㉖

-㉖ 見え始めた真相- 龍太郎は少し焦りながらも冷静さを取り戻して会話を続ける事にした、本人からすれば署長を通して警視総監である事がばれないと良いのだがとただただ願うばかりであった。龍太郎「本当に頼むぜ、中華居酒屋をしながらひっそりと過ごしたいんだからよ。」署長(電話)「悪かったよ、それでどうしたって言うんだい?」 龍太郎が周りに誰もいないかを確認させると再び保留音が鳴った、どうやら署長室に向かったようだ。署長(電話)「すみません、警視総監。」龍太郎「良いか?よく聞いてくれ、今俺と母ちゃんは義弘が生前暮らしていたとされている山小屋にいるんだが、そこに何があったと思う?」署長(電話)「食べカスがあるとはお伺いしておりますが他に何か?」龍太郎「義弘の遺体だ、しかも死後硬直の様子から1週間は経っている可能性がある。そこでお前に何点か頼みたい事があるんだ。」署長(電話)「どの様なご用件でも何なりと仰ってください。」龍太郎「じゃあ一先ずお前が昼に食った天丼を俺にも食わせてくれ。」署長(電話)「へ?天丼ですか?」王麗「こんな時に馬鹿な事言ってんじゃないよ。」 電話の向こうにいる署長にも聞こえる位の大きな音を立てて王麗が拳骨した、この夫婦の主従関係はいつでも変わる事はない。龍太郎「痛ってぇなぁ・・・、母ちゃんは相変わらず強すぎんだよ。」王麗「あんたが下らない冗談を言うからだろ、美麗が聞いたら呆れるに決まっているね。」龍太郎「まぁ、一先ずだ。天丼は冗談として取りあえず義弘の遺体を検死と司法解剖してくれるか?出来るだけ正確に死んだ日を知りたい。」署長(電話)「分かりました、遺体を取りにすぐに向かいます。」龍太郎「それとだ、義弘の個人口座の入出金履歴を調べてくれ。ここ1カ月の物で構わない。」署長(電話)「貝塚財閥の結愛社長に頼めば何とかなるでしょう、聞いてみます。」龍太郎「急いでくれ、頼む。それと、この前の犯人とまた話がしたいんだがいいか?」署長(電話)「勿論大丈夫です、なるべく早く手配致します。」王麗「父ちゃん、我原 悟はいつ逮捕するんだい?」 電話をきったばかりの龍太郎に間髪を入れることなく王麗が声をかけた。龍太郎「証拠が揃い次第だ、これで守と好美ちゃんの無念も晴れるだろう。」 2人が山中で捜査をしていた前日、そう、夫婦が隠しマイ
last updateLast Updated : 2025-11-17
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6. 「あの日の僕ら2」㉗

-㉗ 一歩を踏み出す- 少し浮かない表情を見せる守の様子を見て自らの言動に気掛かりな事があったのではないかと懸念し始めた真美は一息ついてから守に声を掛けた。真美「真美、何かまずい事言っちゃった?」 自分の事を名前で呼称するのも姉の真帆と変わらない、これも一卵性双生児だからだろうか(※因みに作者は二卵性双生児です)。守「いや、そんな事無いよ。ちょっと死んだ昔の彼女の事を思い出しただけさ。」真帆「また思い出してんの?いい加減にしろ、守!!」 顔を赤くした真帆は酔った勢いで守に怒鳴りつけた、いつも付けている「兄ちゃん」を忘れる位だから相当だ。真美「お姉ちゃん、呑み過ぎだから!!守兄ちゃん、本当にごめんね。」守「大丈夫だよ、圭にも言われたから。」真帆「目の前にいる可愛い女の子がずっと大好きだって言ってんのに、ずっと過去の恋愛を引きずってるからってその気持ちに応えないなんてどうかと思うけどね!!」真美「お姉ちゃん、家に入ってよ。近所迷惑になるじゃん。」真帆「真美は黙っててよ!!」 悪くないはずなのに怒鳴りつけられた真美は泣きながら家の中に駆けこんでしまった。真帆「あのね、守兄ちゃんがどれだけその人を想っててもその人とはもう会えないの!!会えない人の事を想っても付き合えないの、だったら今すぐにでも会える人と新しい一歩を踏み出そうって思わない訳?!」守「でも俺・・・。」真帆「でもじゃない!!いい加減にしてよ、ずっと真帆が「大好き」って言ってんのにあやふやにして返事くれて無いじゃん、それに何年守兄ちゃんの事探したと思ってんの?」 確かにそうだ、真帆が守を探し続けた約10年は決して短いとは言えない。守「それは本当に申し訳ないと思ってる、ただ今は死んだ好美の無念を晴らす事を優先させたいんだ。俺は貝塚技巧の工場長を許すつもりはない、好美を殺したあいつを・・・。」 すると泣いて家に入って来た真美を見て玄関前の様子を見に来た圭が守に声を掛けた、どうやら真帆と真美の両親と晩酌をしていて少し出来上がっているらしい。圭「守、その間も真帆ちゃんに待たせるつもりなの?さっきから聞いてたけど私も真帆ちゃんがさっき言ってた事は正しいと思うよ。」 圭はビンタをしなかったが、守はされた時の様に何処かに痛みを感じた。きっと「心」だろう、それが故に泣き崩れてしまった。圭
last updateLast Updated : 2025-11-17
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6. 「あの日の僕ら2」㉘

-㉘ 進展する捜査- 久々の幸せに浸る守はゆっくりと顔を離した、息が荒くなっていたがすぐに落ち着きを取り戻した。2人は遠くから覗き込む圭に気付き少し顔を赤らめていた。圭「今更何恥ずかしがってんのよ、暗い夜だけど道の真ん中で堂々とキスしてたくせに。見てるこっちが恥ずかしくなったわよ。」守「良いだろうが、恋人と口づけするのは当たり前の事だろう?一先ず今日は遅いからもう帰るよ。真帆ちゃ・・・、いや真帆、じゃあね。圭もね。」真帆・圭「うん、バイバイ!!」 守は新しい彼女が出来たが故に笑顔を隠せなかった、真帆の笑顔を思い出すだけで今は顔がにやけついてしまう。今は先程のキスの余韻に浸っていたかった。 次の日、署長から10人前の炒飯を作った直後の龍太郎の下に1本の電話が入った。署長(電話)「お疲れ様です、警視総監。今お電話大丈夫でしょうか?」龍太郎「ああ、勿論大丈夫だ。どうした?」署長(電話)「先日の件なのですが、警察医による司法解剖と検視の結果、義弘の遺体は死後推定2週間との結果が出ました。また、結愛社長によると義弘の口座に死亡する1週間前に7000万円もの預け入れがあったそうです。そこで預け入れに利用した銀行の店長から話を聞いてみたのですが、どうやら行方を眩ませている義弘に直接会った代理人が当時重箱に入った札束を積み上げて預け入れを依頼していたと言っています。」龍太郎「やはりそうか・・・、分かった。ありがとう。」署長(電話)「あの・・・、警視総監。犯人にはいつ会われますか?」龍太郎「そうだったな、いつなら大丈夫そうだ?今から向かっても良いか?」署長(電話)「勿論、どうぞ。」 真剣な表情で会話をする龍太郎に美麗が声を掛けた。美麗「パパ、餃子3人前注文入ったよ。」署長(電話)「餃子焼いてから来られますか?そんなに時間かからないでしょう。」龍太郎「ああ・・・、焼くだけだからすぐに・・・。あ・・・、すまん。少しだけだが包まなきゃいかんみたいだから少し時間貰って良いか?今日思った以上に餃子が出てたの忘れてたんだよ、美麗に頼んでから行くわ。」署長(電話)「分かりました、じゃあ到着する寸前位にご連絡頂けますか?」龍太郎「ああ、分かったよ。」 龍太郎は餃子を急いで包んでいるとその様子を見た美麗が呆れた表情でため息をついていた。美麗「パパ・・・、今日
last updateLast Updated : 2025-11-17
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