二日後、礼二はS市へ向かい、国際AIカンファレンスに参加した。去年のテック展示会と同様、今回のAIカンファレンスも業界関係者にとってAIの最新情報を知り、技術交流を行う絶好の機会だった。彼と一緒に同行したのは玲奈のほか、翔太ら長墨ソフトに新しく入社した数名のエンジニアたちだった。今回、翔太たち新人を連れてきたのは、彼らがまだ社内の機密技術に触れていないため、情報漏洩のリスクを気にせず参加させられるからだった。S市に到着し、会場に入った頃にはすでに多くの人が集まっていた。今回のイベントには、海外のAI分野の大物技術者も参加しているらしい。前回の展示会では、礼二は真田教授の弟子というだけで非常に高い注目を集めた。そして今や長墨ソフトが台頭していることもあり、彼が会場に姿を見せるや否や、その場の大半の注目が彼に集まった。彼の到着を見て、多くの人がすぐに挨拶にやって来た。礼二は挨拶の応対で手いっぱいだった。玲奈と翔太たちは一歩離れて礼二の応対を見ていたが、玲奈が何も言う前に、どこかで聞き覚えのある声が耳に届いた。「あなたたちも来てたのか?」玲奈が振り返る。辰也だった。その隣には一平が立っていた。玲奈は頷いた。「辰也さんも来られてたんだね?」本来ならこの種のカンファレンスには辰也本人が来る必要はなく、会社の幹部や一平のような中核技術者を派遣すれば十分だった。しかし、彼はしばらく玲奈に会っていなかった。こんな一大イベントなら玲奈が来るに違いないと考えて、彼も足を運んだのだった。彼は玲奈と軽く言葉を交わしながらも、ふと翔太が冷ややかな視線を向けているのに気づいた。辰也は彼を無視し、その時ちょうど智昭も姿を見せた。だが今回は、優里の姿は彼のそばになかった。玲奈と礼二が様子を見ていると、反応する間もなく、主催側のスタッフが六十歳前後の外国人を丁重に迎え入れるのが見えた。玲奈と礼二は、国内外のAI業界で影響力のある人物についてある程度把握していた。その顔を見た瞬間、彼がカイウェット・スミスであるとすぐに分かった。スミスはAI分野において非常に高い業績を持つ人物だ。先ほど、玲奈と礼二は、優里が智昭のそばにいないことを少し不思議に思っていた。だが、スミスの姿を目にした瞬間、その理由が
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