「はい、そうです」と夕月は立ち上がって答えた。「年少2組の担任をしております」その言葉が終わらないうちに、京花が声を張り上げた。「夕月さん!あなたの娘、年少組の子供たちまで殴ったの?」周囲の年少組の保護者たちは、慌てて自分の子供を背後に隠した。「いいえ、違います!」担任は慌てて手を振った。「瑛優ちゃんは安全教育の際、不審者から年少組の子供たちを守ってくれたんです。その勇気ある行動を称えて、花丸を贈らせていただきました」「ママ、見て」瑛優は宝物のように花丸シールを見せた。京花は呆気に取られたような表情を浮かべている。「でも」夕月が首を傾げる。「担任の先生からは、今日安全教育があるとは聞いていませんでしたが」「そうよね!」京花も便乗する。突然の花丸にますます不審の念を抱いたようだ。「これは年少組だけの行事だったんです」担任は説明した。「瑛優ちゃんは正義感から自発的に助けてくれて……本当に立派な行動でした」そう言いながら、担任は夕月に近寄り、携帯を取り出した。「それで、不審者役を演じた方の治療費なんですが……」夕月は状況を理解し、自分も携帯を取り出した。「私が負担させていただきます」担任の先生が夕月と世間話を交わして去ると、下校時間を迎えた園児たちが次々と瑛優に別れを告げに駆け寄ってきた。「瑛優ちゃんは今や幼稚園の守護神なのよ」望月が母親の京花に得意げに報告する。京花は「……」と言葉を詰まらせ、顔に軽蔑の色を浮かべた。「ごめんなさい、ママ」瑛優が申し訳なさそうに呟いた。「力加減を間違えて、おじさんの手を折っちゃった……」「先生も言ってたでしょう?瑛優は正義のために立ち上がったの。不審者役の方を傷つけてしまったけど、年少組の子供たちを守ることができたわ。週末に、お見舞いに行きましょうね?」夕月は優しく諭した。瑛優は素直に頷く。「まったく女の子らしくないわね!」京花が嘲るように笑った。夕月の表情が冷たくなる。「瑛優がどんな子かが、そのまま女の子の在り方よ。力が強いからこそ、悪い人から自分を守れる」「なんて歪んだ考え方」京花は顔をしかめ、望月に念を押した。「あなたは絶対に真似しちゃダメよ。女の子は可愛らしくて儚げな方が愛されるの」「じゃあ」望月が不安そうに尋ねる。「悪い人が来たらどうするの?
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