スタッフの報告を聞き、眉間に深いしわを寄せる。叔父と夕月は、そこまで親しい関係だったのか?記憶を辿っても、二人が言葉を交わす場面など見たことがない。だが冬真はすぐに納得した。叔父は才能を愛でる人物だ。夕月への配慮も、その才能ゆえなのだろう。それに、叔父は古風な人間だ。夕月とは離婚したとはいえ、瑛優の血には橘家の血が流れている。叔父は単に、橘家の孫娘の母親として、彼女に気を配っているに過ぎない。冬真は部下に電話をかけた。「叔父の車を尾行しろ。どこへ向かうのか確認したい」「冬真くん」一度は帰ろうとした盛樹が、センチュリー ノブレスが去っていくのを目撃し、妻と娘を連れて戻ってきた。「博士はなぜ?それに夕月は?まさか博士と一緒に?」盛樹は個室に冬真だけが残っているのを見て、不思議そうに尋ねた。「夕月姉さん、あなたの叔父様とそんなに親しかったの?さっきから夕月姉さんの味方ばかりして」楓の声には妙な響きが混じっていた。冬真は椅子に深く腰掛けたまま、整った顔に冷気を漂わせ、一度目を閉じて深く息を吸い込んだ。再び開いた瞳は、底なしの淵のように暗く沈んでいた。「まだ帰らないのか?」冬真の一喝に、盛樹の体が小さく震えた。「冬真くん、どうしてもサミットの入場券が必要なんです。オームテックが藤宮テックの買収に興味を示していますが、サミットで他の道を探りたくて……」冬真は盛樹の腹の内を見抜いていた。藤宮テックの業績は年々下降の一途を辿り、今年は国の新しい貿易規制で輸出収益が完全に断たれた。海外のオームテックが安値での買収を狙っている今、盛樹は名流が集うサミットで、買収価格を吊り上げてくれる企業を探そうとしているのだ。「来週のサミットのレセプションパーティー、楓と北斗も一緒に来い」冬真の言葉に、盛樹は目を丸くした。「もう、そういう付き合いって大嫌いなのに!」楓は喜びを抑えきれない様子で声を上げた。「先に言っておくけど、ドレスは絶対着ないからね!」「好きにしろ」楓がドレスを着ようが着まいが、どうでもいい。夕月との対立を意識した冬真の頭の中には、別の思惑が渦巻いていた。自分の好意を突っぱねた夕月への報復——手に入れられるはずもない招待状が、他の者にとっては朝飯前というところを見せつけてやる。藤宮家の
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