まるで、物事は本来こうなるべきだったかのようにすら思えた。結局のところ、彼女はこれまでずっと緒莉に対して色眼鏡で見てきた。その美しい幻想が打ち砕かれ、薄い紙一枚のような真実が突き破られた。受け入れられないのも、無理はない。紗雪はそう思うと、それ以上は何も言わなかった。美月の方からしばらく音沙汰がなかったので、そのまま電話を切った。どうせこれ以上引き延ばしても意味はない。ただ受話器を握ったまま沈黙しているだけなら、無駄に時間を浪費するだけだった。電話が切れた画面を見つめながら、美月はいつまでも心を落ち着けられなかった。暗くなり、最後には消え落ちていく画面に映った自分の顔は、信じられないほど打ちひしがれていた。そこには、いつもの自信と華やかさはどこにもなかった。代わりに、目には深い疲労と年輪のような翳りが浮かんでいた。彼女はふと我に返った。いつから自分はこんなふうになってしまったのだろう。すべてが思い描いた通りに進むことはなく、むしろ道を外れていくばかり。そう考えると、美月は胸の奥に痛みを覚えた。もともと、物事が自分の手から離れていくのが嫌で仕方がなかった。今はなおさらだ。しかし、どうやって掌握すればいいのか、ますます分からなくなっていた。すでに多くのことが、自分の手の届かないところへ行ってしまっている。その事実に思い至ると、心は迷いに包まれた。けれど、どうすればいいのかは分からない。ただ、一歩一歩進み、自分の心に従うしかない。無理にどうこうしようとしても解決できることではない。人生も、そして伴侶も同じだ。これまでの出来事を経て、美月も理解した。今一番大切なのは、真相をはっきりさせることだ。この件が本当に緒莉と辰琉に関わっているのかどうか。もしそうなら、決して二人を許さない。紗雪は自分の娘だ。娘に手をかけるなんて、まるで自分を死んだ者扱いしているようなものだ。美月の顔に一瞬浮かんだ陰りを見て、伊藤は思わず身震いした。奥様は、もうこれ以上我慢なさらないおつもりなのだろうか。さきほど紗雪の体験談を聞いただけで、自分ですら恐ろしくなった。辰琉という男が、どうして紗雪様にそんなことをできるのか。これまでは、紗雪の体調が悪く、奇病を患っている
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