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All Chapters of 元夫、ナニが終わった日: Chapter 1081 - Chapter 1090

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第1081話

真司が来た!舞はずっと真司を待っていた。まるで首を長くして星や月に願うように、彼が現れるのを待ち焦がれていたのだ。そして今、彼が現れた。舞は頭に血がのぼり、思わず叫んだ。「藤村社長、ちょうどよかったわ!早く綾音を捕まえて!」真司は部下を連れて近づき、その冷ややかな視線を舞に向けた。舞はやや錯乱気味に叫んだ。「藤村社長、綾音が佳子を殺したのよ!本当は船で逃げようとしたのに逃げ損ねたの。あなたが来てくれてちょうどいいわ。早く彼女を捕まえて、佳子の仇を討って!」綾音は静かに舞を見つめながら言った。「自分が何を言っているのか分かってる?今になってもまだ状況が分からないの?」真司は冷笑を浮かべた。「小川舞。佳子に毒を盛ったのは一体誰だ?」舞はすぐさま指を伸ばし、綾音を指差した。「藤村社長、綾音よ!綾音がスープに毒を入れて、佳子に手ずから飲ませて殺したの。あなたもそのことをもう知っているはずでしょ?もともとあなたは彼女を捕まえさせたけど、彼女はこっそり逃げ出したの。今まさに逃げようとしていたのよ!」綾音の目には冷ややかな嘲りが浮かんでいる。「佳子を殺したのはあなただわ」舞は叫んだ。「藤村社長、綾音の言葉なんて信じないで!彼女こそが犯人なのよ!」真司は低く言った。「ひとり会わせたい人がいる」舞は一瞬戸惑った。今この場で人に会わせるとはどういう意味だろう。「誰?藤村社長、今はそんなことより佳子の仇討ちが先よ。早く綾音を捕まえて!」綾音が口を開いた。「私はあなたがその人に会うべきだと思うわ」舞は綾音を見、それから真司を見た。なぜ二人とも「人に会え」と言うの?その人って、誰なの?舞の胸の奥に、嫌な予感が生まれた。「あなたたち、誰に会わせようっていうの?」その時、シュッと音を立てて一台の高級車が滑り込んできた。真司は歩み寄り、後部ドアを開けた。そこから、見覚えのある人影がゆっくりと降り立った。舞はその姿を見た瞬間、呼吸が止まり、全身がその場で固まった。バン。舞は頭の中で爆発音が鳴り響いている。瞳孔が何度も収縮と拡張を繰り返し、信じられないという表情が広がった。どうして?どうして彼女が?佳子だ!真司は車のドアを大きく開け、優しく手を伸ばして佳子を支えた。佳子はゆったりとしたワンピースを着ている。
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第1082話

綾音「罪状は枚挙に暇がないね。刑務所があなたにとって最良の収容先だ!」舞は二歩後ろへ下がった。「分かった……分かった。これは全部あなたたちの陰謀なんだろ?」佳子は冷たく微笑んだ。「ようやく正気に戻ったのね。さっき愚かに振る舞っていた様子は、本当に滑稽だったわ」舞は叫んだ。「あなたたち三人は最初からグルだったんだ!」綾音「その通りよ!リビングの防犯カメラがあって、あなたが毒を入れる瞬間は既に映像に撮られている。私たちは策を弄したの。私がスープを病院に届け、病院に仮の死亡診断書を出させて、それからあなたの元へ戻って、あなたに自分の犯した罪を自白させたのよ!」舞の顔色は一瞬で蒼白になり、血の気が引いた。綾音が真司と佳子と既に結託していたとは、予想だにしていなかったのだ。舞「あの三人のチンピラを私に雇ったことを、いつ知ったの?」佳子「世の中に偶然なんてないのよ。私は真司にあなたの調査をさせて、真司があの三人を呼んで、綾音の前であなたの正体を暴かせたの。小川舞、いや、あなたをそう呼ぶべきじゃないわ。あなたは堀田舞だ!久しぶりね!」「堀田舞」と呼ばれ、舞の心は完全に冷え切った。「あなたはずっと私が誰だか知っていたの?」佳子「人に知られたくなければ、そもそもやらなければいいのよ!まさかあなたが顔を変えて私に復讐しに戻ってくるとは思わなかったわ!」舞は自分の終わりを悟った。すべてが終わったのだ。彼女の佳子への憎しみは頂点に達している。「どうして私が負けるの?どうしてあなただけがいつも勝ってるの?どうしてみんなあなたが好きなの?逸人はあなたが好きだし、藤村社長もあなたが好きだ……何でよ!私は納得できない!私はあなたのすべてを奪いたかった。あなたを死なせたかったのよ!」佳子は狂気じみた舞を見下し、嘲るように言った。「あなたは千代田たちと同類よ。本来ならあなたたちも素晴らしい人生を送れたはずなのに、欲深さと利己心と邪悪さが結局あなたたち自身を滅ぼしたのよ!」真司は冷たい軽蔑の目を向けた。「お前は本当に吐き気がするほど汚らわしい」綾音「あなたは私にとって悪夢そのもの。こんなに邪悪な人間がこの世に存在するなんて、出会ったことを心から後悔するわ!」その時、多くの記者が群がってきて、マイクを突きつけて一斉に質問した。「小川さん、まさかこ
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第1083話

真司はもう舞に目を向けることさえせず、冷然と言い放った。「連れて行け」舞はそのまま連行されていった。綾音の心には、もはや舞への同情など一片も残っていない。彼女にとって舞は、自業自得の報いを受けただけの存在となった。綾音は佳子を見つめ、穏やかに言った。「佳子、舞が連れて行かれたわ。これでようやくすべてが終わったのね」真司は頷いた。「藤村グループの弁護士団に訴訟を起こさせる。堀田舞は一生、刑務所にいることになるのだろう」そう言いながら、真司は手を伸ばして佳子のふっくらとしたお腹に触れた。「佳子、大丈夫か?」佳子は唇を弧にして微笑んだ。「もちろん大丈夫よ。私も元気だし、赤ちゃんも元気だ」真司は眉をひそめ、低い声で言った。「もともと俺はこの計画には反対だった。君はもう妊娠七ヶ月だ。君も赤ちゃんも、少しの危険も許されないんだぞ」この「敵の策を逆手に取る」という計画は、もともと佳子の発案だった。最初、真司は断固として反対した。なにせ舞のような精神の歪んだ女が、どんな狂気の行動に出るか分からない。彼はただ、佳子と赤ちゃんの無事だけを願っている。だが佳子は譲らなかった。どうしても自分でケリをつけたいと言い張る彼女を、真司は尊重し、綾音とともに見事な演技で舞を罠にかけたのだ。佳子は微笑んで言った。「堀田舞は私を狙って来た。因果応報よ。だからこそ、私の手で決着をつけたかったの。綾音、今回はありがとう」綾音は佳子の手を握り返した。「佳子、ありがとうを言うのは私のほうよ。佳子がいなければ、私は堀田舞の本性を知ることもなかった。あのままなら、きっと彼女に売られても笑ってたわね」真司は柔らかく言った。「もういい。この件はすべて終わった。これからは俺たちのことを考えよう」佳子は首をかしげた。「『俺たちのこと』?どういうこと?」綾音は口元を押さえてくすくす笑った。「佳子のお腹は日に日に大きくなってるもの。傅先生が言う『こと』って、結婚式の準備に決まってるじゃない!」真司はその言葉に微笑み、佳子の肩を抱き寄せた。「佳子、もう結婚しよう」佳子は心の中で甘さが広がっている。「……うん」……佳子は家でゆっくりと休み、体力を取り戻した。真司はその間ずっと、結婚式の準備に奔走していた。その日、真司は会社に行かず、佳子を抱きしめながら言
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第1084話

佳子の胸の中は甘く満たされている。そう、真司は、自分に関するすべてのものを愛している。彼の選ぶものには、いつも自分の影があるのだ。二人は若い頃から恋を育み、そして今日、ついに結婚という幸福の殿堂へと歩み出した。二時間後、ネイリストが声をかけた。「葉月さん、ネイルが完成しました!気になるところがあればお直しできますよ!」佳子「とても満足です。直さなくて大丈夫です!」佳子は振り返って真司を見た。「どう?きれい?」この二時間、真司はずっと彼女のそばにいた。ソファに座って新聞を読んでいたが、佳子の声を聞くと立ち上がり、彼女の前に歩み寄って両手を包み込むように握った。「きれいだ」佳子「私もそう思う!」その瞬間、彼女の指に何かがはめられた。下を見ると、それはダイヤの指輪だ。真司が指輪を彼女の手にはめたのだ。佳子はきょとんとした。「なにをしてるの?」真司はゆっくりと片膝をついた。「佳子、君にプロポーズしたい」佳子「でも、もう一度プロポーズしてくれたじゃない!」そのとき、「シャッ」と音を立ててカーテンが開かれた。佳子が見ると、中にはあふれるほどの花と揺れる灯りが広がっている。パンッ!色とりどりのテープが舞い、たくさんの人たちが姿を現した。佳子の両親、真司の妹である奈苗、五郎、真夕、司、そして綾音……彼らの共通の家族や友人たちが勢ぞろいしている。皆いるのだ。真司「佳子、確かに一度プロポーズしたけれど、あれでは足りなかった!今日はみんなの前で、改めて正式に君にプロポーズしたい!」佳子の目に、ふと涙がにじんだ。真司「佳子、これは俺たちが出会って七年目の記念日だ。俺の人生に来てくれてありがとう。君が来てくれたおかげで、真っ黒だった世界に色がついた。君は、俺がずっと掴みたかった温もりそのものだ。愛してる。君と家族をつくりたい。お父さんもお母さんも、子どももいる家を。君と、ずっと、ずっと、幸せでいたい。佳子、俺と結婚してくれ!」佳子の両親も感極まって言った。「佳子、ほら!」真夕と司も祝福の眼差しを向けた。「佳子、一緒になって!」奈苗と五郎は一番はしゃいでいる。奈苗は笑顔で叫んだ。「やっと兄嫁ができるの!」彼女にとって佳子は、ただの兄嫁ではない。親を失った自分を育ててくれた、姉だ。そして、まるで母親の
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第1085話

真司と佳子が幸せな結末を迎えるのを見て、真夕は思わず涙をこぼした。自分の一番の親友が、ようやく、ついに最愛の人と結ばれたのだ。涙で視界が滲む中、真夕は力いっぱい拍手を送っている。そのとき、一枚のティッシュを差し出す手が現れた。真夕が視線を落とすと、清潔で長い五本の指が白いシャツの袖口に包まれているのが見えた。しなやかで端正なその手首には高級なスチール製の時計が光り、ティッシュを持って彼女に差し出している。顔を上げると、そこにいるのは司だ。司はずっと彼女のそばに立っている。涙をこぼした彼女にティッシュを渡したのだ。実のところ、真夕と司はしばらく会っていない。司は呪縛の毒にかかっており、彼女に近づくことができないのだ。近づけば激しい痛みに襲われる。そのため、司は彩との結婚を決めた。二人の結婚式はずっと準備中だが、随分と時間がかかっている。真司と佳子が結婚するというのに、彼らの式はまだ整っていない。今日、真司が佳子にプロポーズし、真夕はようやく司と顔を合わせたのだ。今、司がティッシュを差し出し、真夕はそれを受け取り、「ありがとう」と言った。真夕は礼を言った。まるで他人に礼を言うように。しかし、真夕がティッシュを引こうとしても、司はそれを握ったまま離さなかった。渡しておきながら、手放さない。どういうこと?真夕の長い睫毛がわずかに震え、驚いたように彼を見上げた。澄んだ瞳が彼の顔を映し出している。少し戸惑ったような、涙に濡れたその瞳は柔らかくて愛らしい。司の薄い唇がふっと弧を描き、笑みが浮かんだ。なにを笑っているの?からかわれたような気がし、真夕はティッシュをぐいっと引っ張った。すると司は彼女の指を掴んだ。二人の手がぴたりと重なった。司の指先は少しざらついた感触で、その冷たさの中にわずかな体温が混じり、真夕の指先を包み込んだ。真夕はびっくりした。熱い。彼女の掌ほどの小さな顔が、一瞬にして真っ赤になった。みんなが真司と佳子を見ているというのに、彼がこんなところでこんなことをするなんて!真夕は慌てて手を引っ込めた。もういい、ティッシュなんていらない!そのとき、奈苗が不思議そうに彼女を見つめ、「真夕姉さん、なんでそんなに顔が赤いの?」と尋ねた。真夕「……たぶん暑いから」
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第1086話

真夕はその場を背にして歩き出した。ひとりで回廊に出たところで、背後から低くて落ち着いた声が響いた。「真夕」真夕は足を止め、振り返った。そこには追いかけてきた司の姿がある。彼が追ってきた。司は一歩前に出た。「真夕!」真夕は慌てて数歩後ろへ下がった。「そんなに近づかないで!私たち、距離を保ったほうがいいよ!」彼の体にはいま、呪縛の毒が仕込まれている。彼女に近づけば近づくほど、彼は激しい痛みに襲われるのだ。司は、どんなに痛くても声に出さないような人間だ。だから真夕には、彼がどれほど苦しんでいるのか分からない。だからこそ、彼女にできるのはただ、離れることだけだ。真夕が後ずさるのを見て、司の体はその場で固まった。二人の間には、たった数歩の距離しかない。だがその距離が、いまの二人には永遠のように遠い。真夕「司、私に何か用?」司はしばらく黙ってから、低く言った。「いや、ただ……君の顔が見たくなっただけだ」その言葉に、真夕の胸の奥が少し柔らかくなった。「私……」そう言いかけた瞬間、ある聞き慣れた女性の声が割って入った。「司、こんなところで何をしてるの?」真夕が顔を上げると、そこには彩が歩いてくるのが見えた。彩まで来たのだ。真司が佳子にプロポーズするこの場には、親しい友人や家族しか招かれていない。それなのに彩がここを見つけて現れたということは、司への執着がどれほど強いかを物語っている。彩は近づくと、当然のように司の腕に手を絡めた。「司、なんで私に言ってくれなかったの?探し回っちゃったじゃない!」司は視線を真夕から外し、彩を見た。「……俺を探して、何か用か?」「もちろんあるわよ!」と、彩は甘えた声で笑った。「もうすぐ私たち結婚するでしょ?明日、一緒にウェディングドレスを見に行ってほしいの。小百合さんが私のために特注してくれたの。最初に司に見てもらいたいのよ!」真夕の前に、彩はわざとそう言ったのだ。司の腕に絡めたその手も、見せつけるように強く握りしめた。司からは何の反応もない。彩は、ようやく真夕に気づいたような顔をして言った。「あら、真夕もいたのね。ねえ、明日司と一緒に行くけど、あなたも来る?」真夕の瞳は冷ややかに光っている。「明日は予定がある」それだけ言うと、真夕は踵を返して去っていった。
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第1087話

真夕はびっくりした。誰なの?驚いて振り返ると、司の優美で気高く整った顔が、彼女の視界に大きく映った。司がまた追いかけてきたのだ。真夕はすぐに自分の細い腕を引っ込めようとした。「司、何するのよ!離して!」司は鋭い眉をひそめた。「離さない」真夕「離して!あっ!」司は彼女を担ごうとした。妊娠している身の真夕は怖くなった。彼女はすぐに抵抗した。「そんな風に抱かないで!離して!司!」激しく抵抗する真夕を見て、司はすぐに方法を変え、真夕を横抱きにした。そして彼は自分の高級車まで歩き、後部座席のドアを開けて真夕を中に押し込んだ。真夕は降りようとしたが、司も乗り込んできて、彼女をぐいと掴んだ。「真夕、騒ぐな!」真夕は一瞬止まり、彼を見た。「司、騒いでいるのはあなたの方よ!」司は力強く引っ張り、彼女を自分の胸の中に抱き寄せた。「真夕、大丈夫だ。俺は痛くないから!」彼は自分が痛くないと言った。そんなはずがない。真夕は彼が嘘をついていると知っている。呪縛の毒の痛みは凄まじく、人間が耐えられる限界を超えている。これは小百合が学んできた邪悪な術だ。こんな短時間で、真夕には呪縛の毒を解く方法などない。再び彼の胸に落ち、真夕は彼の身にまとうあの慣れ親しんだ香りを嗅いだ。清潔で清らかな蘭の香りだ。その香りは懐かしく、そしてとても遠く感じられる。真夕は手を上げて彼の胸を押した。「司、命より大切なものはない。あなたには自分の体を大切に……むっ!」真夕の言葉がまだ終わらないうちに、司は彼女の赤い唇を封じた。彼女が言おうとしたすべての言葉を、このキスで封じ込めた。真夕の瞳は縮んだ。「司……むっ!」彼女が口を開いた隙に、司はまた強引に城門を破り、より深いキスをした。真夕は彼特有の気配が天地に満ちるのを感じ、逃げ出したいと思ったが、逃げ場はない。真夕は体が柔らかくなるのを感じた。彼女は自分の脳を理性で保つことはできたが、体の本能的な反応は全く制御できない。自分は依然として司の触れ合いが好きだ。彼との親密な行為が好きだ。司は当然彼女の反応を知っている。彼は手を伸ばして彼女の柔らかな腰を抱き、彼女を自分の太ももの上に座らせた。司は彼女にキスしながら、その服のボタンを外し始めた。真夕ははっとし、理性が戻っ
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第1088話

彩は追いかけてきたのだ。今まさに司の車の窓を叩いている。真夕は慌てて言った。「岩崎彩が来たのよ!」司「ほっとけ」「すぐ外にいるけど」「外からは中は見えないさ。叩きたければ叩かせておけ」彩は確かに追ってきている。司の冷淡さに耐えられず、諦めきれずに彼の車を見つけて窓を叩いたのだ。だがしばらく叩いても、車内に何の反応もない。彩は不安になった。司が車の中にいるのは確かだ。では、答えは一つしかない。司は自分に会いたくないのだ。彼女は即座にスマホを取り出し、司の番号を押した。車の中では提示音が響いた。司のスマホだ。真夕はすぐに司から離れた。「彼女からの電話だ。出て」司「出たくない!」「じゃあ彼女、これからずっとかけ続けるでしょ?」真夕は彩をよく知っている。司が電話に出ないなら、彩は確かにかけ続けるのだ。やはり、司が電話に出ないため、彩は疑い始めた。司は一人で車の中で何をしているの?電話にも出ないし、車も発進しない。一体何をしているの?ふと彩は真夕のことを思い出した。司、まさか真夕と一緒にいるんじゃ……そう思いながら、彼女は真夕の番号をかけてみた。すると、車の中で真夕のスマホが鳴った。真夕は驚きもなく自分のスマホを手に取った。「あなたが電話に出ないから、私にかけてきたのね」司は真夕の艶やかな頬を見つめ、不快感を隠せない様子で呟いた。「奴を始末してやる!」「あなたは呪縛の毒にかかっている。今回なら彼女を始末できるかもしれない。でも次はどうなる?だからもう、私たちは会わない方がいいわ」と、真夕は冷静に言った。司は唇をかみしめ、厳しい表情になった。「じゃあ、あなたがまず彼女を始末して、それから私が車から降りる。彼女には私たちが一緒にいるところを見せたくない」それを聞き、司はふっと笑った。「何を笑っているの?」「なぜ奴に見られてはいけないんだ?外にいるだろ?さあ、今見せてやるよ!」そう言いながら、司は窓を下ろし始めた。真夕は驚愕した。司がここまで大胆だとは思っていなかった。まさか彩の目の前で窓を下ろすとは。自分に拒否する余地はまるでない。真夕はとっさに身をかがめ、隅にうずくまって司の脚元に体を寄せた。彼女はさらに目を上げ、彼を睨んでみせた。司は真夕を見て、どこか満
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第1089話

ずっと隅に身を潜めている真夕は、彩の言葉を聞いた瞬間、体がびくりと震え、思わず司の方を見上げた。司もまた、目を垂らしながら彼女を見つめている。その瞳は暗く、熱を帯びている。二人の視線が絡み合った。彩「司?司、聞いてるの?」司「過去のことは全部忘れた。もうその話はするな」「じゃあ、今のことを話そう。今夜、あなたのところに行ってもいい?」と、彩は立ち上がった。今日の彼女は高級ブランドのワンピースを着ており、もとよりダンサー出身のしなやかな体つきと美しい顔立ちで、今まさに輝く時期にいるのだ。「あなたは池本真夕と、もう別れたんでしょ?私のこと、恋しくないの?」彩はかつて司と付き合っていたため、彼のことはよく知っている。司は健康な男性で、むしろ強い性欲を持つほうだ。真夕は居たたまれない。そんな会話を聞いていたくないのだ。司が彩と結婚するのを決めたのは理解しているが、実際にそのやりとりを目の当たりにすると、どうしても心がざわつく。司の整った顔には何の感情も浮かんでいない。「今夜は忙しい。会社に行かなきゃならない」彩は肩を落とした。また断られた。それでも彼女は悔しそうに、まだ続けたいと思っている。「司、私……」司「俺は君と結婚すると約束した。だからといって、あまりしつこくされると疲れる」彩「わかったわ、司。じゃあ行くね」彼女はそう言い残し、去っていった。司は窓を上げ、足元に小さく丸まっている真夕を見下ろし、口の端を上げた。「行ったぞ。もう立っていいよ」真夕は立ち上がり、車のドアに手を伸ばした。「私、もう帰る!」だが、その手がドアに触れた瞬間、司の大きな手が伸び、彼女の細い腰をつかみ、ぐいと引き寄せた。真夕は彼の膝の上に倒れ込み、そのまま胸の中に収まった。司は彼女を見つめながら聞いた。「どうした?怒ってるのか?」彼が何も言わなければまだよかったのに、口にした途端、真夕の顔は引きつってしまった。しかし、彼女はそれを認めたくない。「怒ってない」「嘘つけ。怒ってる顔だぞ」真夕は彼を睨み返した。「怒ってないって言ってるでしょ。私に怒る資格なんてないもの!」司は彼女を抱き寄せた。「俺と岩崎彩の間には何もないよ」真夕「それは彼女が拒んだからでしょ。彼女が同意してたら、もうとっくに何かあったんじゃない?」
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第1090話

真夕「誰が嫉妬なんかしてるのよ!離して……んっ!」そう言いかけた瞬間、司は彼女を抱き寄せ、そのまま唇を重ねた。真夕は押し返そうとしたが、胸の中の怒りは消えず、思わず彼の唇の端を噛んだ。っ……司は痛みで息を呑んだ。「小犬か?本当に噛むのが好きだな!」真夕「離してくれなきゃ、もっと噛むから!」司は体勢を変え、真夕を自分の腰の上に跨らせた。「痛いのなんか怖くない。好きなだけ噛めばいい」そう言って彼は再び彼女の唇を奪った。真夕の全身が力を失い、抵抗する気力も薄れていく。気づけば、ブラウスのボタンが外されている。真夕は慌てて制した。「だめ!」司の瞳が暗く燃え、低く言った。「拒むな」真夕「でも、体が……」司「心配してくれるなら、時間を無駄にするな。ずっと、こうしたかった」真夕は彼を軽く叩いた。「私に会いに来たのはこのため?」司「そうだ。だめか?」真夕は拳で彼の胸を叩こうとしたが、口がすぐに彼の唇で塞がれた。彼女はふと、自分が妊娠していると思い出した。三か月を過ぎれば問題がないはずだが、彼が強引すぎるのが怖い。真夕は彼の肩に手を置いた。「待って」司は彼女の鼻先にキスを落とし、かすれた声で尋ねた。「今度は何だ?」真夕「強くしないで……優しくして」司は口元を上げた。「いつからそんなに弱気になった?」真夕「嫌ならいい!」「嫌じゃない。ちゃんと約束する。今夜は何でも君の言う通りにする。真夕、キスしてくれ」彼はキスを求めている。そう囁かれ、真夕は彼の首に腕を回し、自ら唇を重ねた…………どれくらい時間が過ぎたのか、真夕はようやく汗に濡れた肌を司の胸に預け、荒い呼吸を整えている。司もシャツのボタンが外れ、息を荒げながら彼女を抱きしめている。言葉はない。嵐のような熱のあとに訪れた静かな抱擁は、何よりも甘く、尊いものだ。やがて真夕が口を開いた。「もう帰るわ」司は彼女の額にキスを落とした。「送っていく」「いいの。今夜はもう長く一緒にいたから。本当に帰らなきゃ」司は彼女をさらに抱き寄せた。「真夕、君を連れて帰りたい。一緒に眠りたい」それを聞いた真夕の胸が締めつけられた。司の呪縛の毒が解けない限り、二人に未来はない。さっきまでの甘さが、今は切なさに変わった。彼女は彼を押しの
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