真夕は、そろそろ本当の姿を現すべきだと思っていた。池本家の人間が自分の父親を死に追いやった。その清算は、自分自身の手で果たさなければならない。それに司だ。ずっとケー様の正体を知りたがっていたではないか。今こそ教えてやる!一方、堀田グループにて。社長室では、司がデスクに座り、書類に目を通している。手にした万年筆で、書類の末尾に自分の署名を「サッサッ」と走らせていく。そのとき、清がドアをノックして入ってきて、小声で報告した。「社長、ケー様に関する情報が入りました」司の手が止まり、鋭い目つきで清を見た。「話せ」「先ほど、ケー様からの伝言が届きました。今夜の宴会にケー様が現れるとのことです。あの人、本当に浜島市に来られました。社長に会いたいとのことです」司の瞳に光が宿った。自分はこのケー様を探し続け、長い月日が流れていた。何度もすれ違い、偽物のケー様の騒動まで起こったが、今ようやく本物が姿を現したのか。今夜こそ、このケー様が何者なのか、しっかりと見極めてやる。司は唇の端を少し持ち上げた。「いいだろう。今夜会おう」その後、司はVIP病室にやって来た。今朝、藍から電話があり、彩の心臓の具合がまた悪くなったため、付き添ってほしいと頼まれたのだ。司が病室に入ると、彩は苛立った。「司、昨夜、真夕とはどういうことなの?なんで彼女と一緒にいたのよ。絶対にあの女が先に誘惑したでしょ。わざとあなたの家の向かいに家を買って、いつでもあなたに近づけるようにしたんでしょ」「彩」と、司は彼女の言葉を遮った。彩は司を見た。司は静かに言った。「昨夜は俺が彼女を訪ねたんだ」何だと?彩は呆然とし、それから素早く両耳をふさいだ。「聞きたくない、聞きたくないわ!司、私が留学してたから真夕に代わりに嫁がせることになったんでしょ。それであなたと彼女の間に何かがあっても私は責めないわ。でもお願い、あの女に惑わされないで。確かに彼女は学歴は高いけど、ここ数年は専業主婦だったのよ?そんな女をあなたが本気で好きになるはずがないわ。彼女は確かに綺麗よ。男を操る術も心得てる。でも男って、最初はベッドから始まったんでしょ?真夕があなたをベッドで満足させたから、あなたは彼女に惹かれてるだけよ。色仕掛けで夢中にさせてるだけなの。あなた、彼女を愛してないよね?
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