一体、裏で手を引いているのは誰だ?蓮司か?……まさか、雅人ではないか。彼は蓮司の炎上を収めたが、元妻の情報を漏洩させた人間まで後始末するほどお人好しではないだろう。何もかも、不可解で、奇怪で、馬鹿げている。悠斗は言った。「橋本恵の件は、また別の方法を考えろ。他のルートから探れないか。直感が告げている。この件には、必ず何か人に言えない秘密が隠されている」悠斗は目を細めた。必ず、暴き出してやる。……昼に兄と立てた、雅人を改めて追いかける計画について、理恵は食事を終えると透子に話した。理恵は言った。「そういうわけで、昼間は病院に付き添いに来れなくなるの。じゃないと、病院でもこっちでも私の顔を見るようになったら、さすがに怪しまれるでしょ」透子は微笑んで言った。「大丈夫よ。傷もだいぶ良くなったし、先生が来週から少し歩行訓練を始めるって言ってた。ずっとベッドにいると筋肉が衰えちゃうからって。理恵は自分のことに集中して。成功を祈ってるわ」理恵は言った。「まずは試してみるわ。だめだったらまたその時考える。夜、仕事が終わったら少しだけ顔を出してから帰るから」翌日。ちょうど午後一時に会議があり、聡は事前に妹に連絡し、万全の準備をしておくようにと伝えた。理恵は自信満々だった。資料は退屈で長ったらしいため、じっくり読む気にはなれなかったが、関連する要点は兄のアシスタントが事前にレクチャーしてくれていた。あとは、兄が用意してくれたいくつかの「見せ場」で発言し、雅人の気を引くだけだ。定刻、柚木グループの役員会議室。雅人はアシスタントと数人の部下を連れてやって来た。彼は聡と握手を交わすと、ふと視線を動かし、聡の隣に立つ理恵の姿を認めた。彼は一瞬動きを止め、聡はそれを察して微笑んで言った。「妹が今日からビジネスの勉強を始めたくてな。それで、俺が直々に連れてきた。安心してくれ、身内だから、会議の内容を漏らすようなことはない」理恵はその言葉に合わせて完璧な笑みを浮かべ、小さく頷いた。しかし、雅人と握手するために手を差し出すことはなかった。自分にはまだその「資格」がないと、自覚していたからだ。雅人の顔には何の感情も浮かばず、そのまま席に着いた。これで、今日、病室で理恵を見かけなかった理由が説明できた。双方がそれぞ
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