「ああ、俺も浮気したさ。あんたのような畜生の血を引いているのだからな。見事に受け継いだというわけだ」蓮司は、侮蔑を込めて言い返した。「だがな、あんたと俺とでは、浮気の格が違う。俺は女の力を使ってこの玉座に手をかけたが、あんたは?愛人の力で、本社の床を踏めたか?あんたは、一生、ただの負け犬だ。未来永劫、浮かび上がる目はない」そう言い放つと、彼は容赦なく通話を切った。電話の向こうで、博明は、蓮司のそのあまりに厚顔無恥な態度に、怒りのあまり意識が朦朧とし、最後の力を振り絞ってアシスタントに電話をかけ、助けを求めた。携帯電話が床に落ちたその瞬間、彼は心筋梗塞を起こし、床の上で痙攣した。間違いなく、蓮司の最後の言葉が、彼にとどめを刺したのだ。同じ浮気行為でも、彼は情緒的な価値しかもたらさない女と浮気し、この様だ。一方、蓮司は瑞相グループの唯一の令嬢と浮気し、女の力でやすやすと新井グループ後継者の地位を盤石なものにした。なんと皮肉な対照だ。息子が親父を出し抜き、その上で威張り散らし、二度も親父を病院送りにするほど怒らせるなんて。……ほどなくして、新井家の本邸。執事が、子会社『利発』での状況を、新井のお爺さんに報告した。「博明様は救急車で運ばれました。診断は、やはり不整脈。過度な精神的刺激による、呼吸困難とのことです」新井のお爺さんはそれを聞いても顔色一つ変えず、淡々と言った。「死んだら報告しろ。水野家への良い言い訳にもなる」執事はその言葉を聞き、水野家が誰を指すのかを理解したが、何も言わなかった。「若旦那様が関わっております故、念のためご報告をと存じまして。博明様が発作を起こされる直前、若旦那様とお電話をされておりました」新井のお爺さんはわずかに瞼を上げたが、特に大きな反応は見せず、言った。「また、怒りで病院送りにされたか」執事は答えた。「おそらくは……若旦那様は本日、悠斗様を本社から異動させ、ちょうど博明様のいらっしゃる『利発』へとお移しになりましたので」新井のお爺さんはふんと鼻を鳴らした。蓮司のそのやり方は、実に人を不快にさせる。隠し子と、その父である博明は、二人揃って子会社へ島流しだと、衆目に知らしめるつもりか?本部にいる資格はない、と?執事は続けた。「博明様は当然、お気に召さなか
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