雅人は、聡に助け舟を出すつもりはなかった。何しろ、いい歳をした大人の男だ。女一人を好きだという気持ちさえ、他人に指摘されて初めて気づくような男は、たとえビジネスでどれほど成功していようと、愛を手にする資格などない。聡が本気で妹を好きだというのなら、それを阻むつもりはない。だが、正式な手順と告白は必須だ。なあなあの関係のまま、いつの間にか妹と恋人になっているなど、断じて許さない。……一方で、パートナーが突然、聡に代わった後も、透子はただ黙って彼のリードに合わせて踊り続け、何も話さなかった。彼女が尋ねることも、聡が何かを言うこともなかった。音楽の長さから察するに、残りはあと五分ほどだろう。透子が静かに曲の終わりを待っていると、それまで何分も黙っていた聡が、ついに口を開いた。「ダンスのステップ、随分と様になっているな。このために、特別に練習したのか?」透子は「ええ」と応え、家族がマナー講師とダンスの先生を手配してくれたことを話した。透子は言った。「本当に急ごしらえで、このダンスしか踊れないんです」それに、彼女はダンスに特に興味があるわけではなく、この一種類を学んだのも、ただ宴会の場に対応するためだった。聡は言った。「たった一ヶ月でここまで?やっぱりすごいな」そのような称賛に、透子はただ「ありがとうございます」と返すしかなかった。聡自身も、二人の間の会話がどこかぎこちないことに気づき、短いやり取りの後、それ以上話題を振ることはなかった。透子は、彼を直視していなかった。そのため、聡はかえって気兼ねすることなく視線を落とし、彼女のその繊細で白い顔立ちをじっくりと見つめることができた。透子は美しかった。かつて、病床で虫の息だった頃に比べ、顔色は随分と良くなっている。少しふっくらしたようにも見えた。頬には子供のような柔らかな丸みが戻り、弾むような感触がしそうだった。とはいえ、全体的にはまだ華奢で、あと五キロほど増えれば、ちょうどいいくらいだろう。彼がそうして知らず知らずのうちに彼女を眺めている間に、舞曲はすでに終わりに近づいていた。透子は顔を上げて聡と視線を合わせることはなかったが、これほど近い距離だ。聡がずっと自分を見つめているのを、はっきりと感じていた。やがて舞曲が終わり、透子は聡に手を引か
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