その上、祥平は蓮司が義人を利用しているのではないかと、強く疑っていた。雅人が話しているのが聞こえたからだ。蓮司は一度会場を出て行ったはずなのに、その後、義人を連れて戻ってきた、と。宴会の雰囲気は水を差され、会場のあちこちでひそひそと囁きが交わされている。橘家の人々の心中は穏やかではない。新井家の後ろ盾がなければ、蓮司という厄介者を、決して軽々しく許すことはなかっただろう。理恵は事の次第を知ると、透子のそばへ行き、慰めの言葉をかけた。透子は言った。「私は大丈夫よ。それに、私と新井さんのかつての関係なんて、遅かれ早かれ皆に知られることだったから」理恵はその言葉を聞き、ため息をついて言った。「こんなことになるなら、最初から警備に言って、あいつをつまみ出してもらえばよかったわ」蓮司は、やはり騒ぎを起こしに来たのだ。これで、今夜ここにいる全員、ひいては京田市の上流階級全体、さらには国際社会に至るまで、瑞相グループが探し出した令嬢が、あの新井蓮司の元妻であることを知ってしまった。蓮司が何を考えているかなど、理恵には考えるまでもない。他の男たちに、透子に手を出すなと知らしめたいのだろう。だが、蓮司もよく考えればいい。彼はもう、ただの元夫なのだ。誰が、今更彼の顔色を窺うというのか。国際的に見ても、新井家が誰も逆らえないほど恐ろしい存在というわけでもない。ましてや、透子には美貌も地位もある。たとえ彼女が蓮司の元妻だと知っても、彼女を追い求める男は、星の数ほど現れるに違いない。理恵はそう思うと、蓮司は本気でどうかしている、と感じた。本気で、世界が自分を中心に回っているとでも思っているのだろうか。誰も彼のことなど全く相手にしていないというのに。蓮司が去り、あれほどの騒ぎを起こした後では、新井のお爺さんも、もはやその場に居続けるわけにはいかなかった。彼も橘家の人々に挨拶をすると、まもなく会場を後にした。悠斗はまだ会場に残り、他の名家の人々と交流していた。同時に、先ほど蓮司を庇った中年男性の正体も突き止めていた。水野義人、蓮司の実の叔父だ。湊市の水野家の人間であるだけでなく、その妻は祥平の従姉妹だという。悠斗はシャンパングラスを握る指に力を込めた。怒りと嫉妬で、腸が煮えくり返る思いだった。蓮司は母方の
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