あの日、蓮司は助けを求めるメッセージを受け取ってすぐに駆けつけ、ドアを蹴破り、あのクズを制圧した。彼はまず、窓際に座り、今にも飛び降りようとしている透子の姿を目にした。あの瞬間、彼は透子こそが「その人」だと、ほぼ確信しかけていた。だが、彼が歩み寄って問いかけるより早く、美月が横から駆け寄ってきて彼に抱きつき、「やっと来てくれた」と言ったのだ。まさにその行動が、彼の中に芽生えかけていた「透子こそがその人ではないか」という確信を打ち消してしまった。結局、彼が尋ねようとしていた言葉は口にすることもできず、警察が到着し、美月は彼にすべてを「告白」した。自分が、ネットで彼とやり取りしていた『きら星』なのだと。そして、二人にしか分からない細かな経緯や、チャットの内容の一部まで語ってみせた。それで、彼は美月の言葉を完全に信じ込んでしまった。そうして真相とは完全に食い違い、運命の悪戯によって、透子とすれ違ってしまったのだ。回想から、我に返る。蓮司は目を閉じ、全身の筋肉を強張らせた。自分が騙されていたことを認めるしかなかった。当時の美月の言葉は、あまりにも真に迫っていたからだ。そして今、考えてみれば簡単なことだ。美月は透子の友人だった。だからこそ、あれほど細かな事情まで知っていたのだろう。だが、当時の彼は微塵も疑わず、自分にメッセージを送ってきたのは美月だと信じ切っていた。……それに、透子は、なぜ一度も自分に話してくれなかったんだ?たとえ自分が誤解していても、彼女は自分が「きら星」だと、ただの友達としてでも、打ち明けることはできたはずだ。しかし次の瞬間、蓮司は自らその理由に思い至った。もともと透子は、あの噂を耳にして以来、自分に告白するつもりなどなかったのだ。友達を裏切りたくなかったからだ。様々な葛藤を抱えながら、あのメッセージを送ったのが彼女にとっての最後の賭けだったのに、そのすべてを美月が台無しにしたのだ。蓮司は両の拳を固く握りしめ、爪が掌に食い込んだ。朝比奈美月……今となっては、彼女を八つ裂きにしてやりたいほど憎かった。すべては彼女のせいで、自分と透子の間にこれほど多くの誤解とすれ違いが生まれたのだ。だが、もはやその仇を討つことさえ叶わない。美月はとっくに、橘家によって始末されていたからだ。
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