透子が人前に出ることを許さず、狭い世界に閉じ込め、まるで家政婦のように扱っていたのは蓮司自身なのだ。認めざるを得ない。透子は家族の元へ戻り、自信に満ち、強く、穏やかで落ち着いた女性へと、見事に磨き上げられた。それに引き換え、自分と一緒にいたあの二年間は……蓮司は逃げるように、後悔と自責の念に満ちた苦しい記憶から意識を逸らし、それ以上思い出すことをやめた。それは彼の永遠の傷跡となり、一生をかけて償わなければならない罪となるだろう。……会議室では。他の提携先の人間も、とっくに資料の内容には目を通していた。そのため、それほど集中する必要もなく、ここぞとばかりに横目で「ゴシップ」を楽しんでいた。新井社長の、まるでナメクジのように粘着質な視線が、透子に注がれている。橘社長の、今にも刀を抜いて斬りかからんばかりの鋭い眼差しも、まるで意に介していない。空気中には、無言の硝煙が立ち込めている。彼らは最初、双方が「殴り合い」を始めるのではないかと心配していたが、意外にも事態は平穏を保っている。どうやら橘社長は、噂よりもずっと気性が穏やかなようだ。それにしても、新井社長はよくもまあ、姿を現せたものだ。彼が、橘社長と透子が会議に出席することを知らなかったとは、到底信じられない。しかもこの新井社長、担当者を急遽変更するという芝居がかった真似を、順和建設側に通知さえしていなかった。でなければ、冒頭の石橋社長のあの発言はなかったはずだ。つまり、これは新井社長が意図的にやったことだと彼らは確信した。彼がずっと透子を粘つくような目で見ていることからも、それは明らかだ。しかし当の透子は、最初から新井社長を完全に無視しているように見える。まるで空気のように扱っている。この有様に、野次馬たちは新井社長に同情のかけらも抱かず、ただ因果応報だと感じていた。……透子は、プロジェクトのキックオフの段取りについていくつか提案を述べた。大きな変更ではなく、すべて細部のことだ。皆、ゴシップを楽しむ合間にも透子の発言を聞いていた。確かに彼女は細やかな気配りができ、その提案はいずれも、計画の精度を高めるために必要なものだと感じられた。しかし、これらの提案が彼女自身の考えなのか、それとも橘社長側が彼女のために「準備」したものなのかは、知る由もなかっ
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