「まあいい、たかが食事一回のことだ。あやつも随分と食い下がっておるようだしな」執事は、新井のお爺さんの態度が軟化したのを見て、特に蓮司のことは心配しなかった。新井のお爺さんの蓮司に対する愛情は、あの隠し子へのそれとは比べ物にならない。執事は相槌を打った。「おそらく、旦那様との関係を深め、孝行の心を示したいのでしょう」新井のお爺さんは答えなかった。彼が認める孫は蓮司ただ一人だが、もちろん、悠斗に対してそこまで非情になるつもりもなく、何も与えないわけではない。遺産や子会社の名義変更については、弁護士に見直させるつもりだ。だが、多くを与えるつもりはない。何しろ、実の息子の博明でさえ、本社から追い出したのだから。将来、悠斗も父親と同じように、いくらかの金を持ち、子会社を一つ任され、食うに困らない生活は送れるだろう。だが、蓮司と新井グループの後継者の座を争う資格は与えない。執事はお爺さんの意向に従って折り返しの電話を入れた。食事会の日取りは、明後日の夜に決まった。……一方、病室にて。義人が雇った介護士の名は安田博(やすだ ひろし)といった。この男は、言われたことを忠実にこなすタイプだった。蓮司は遠回しに買収を持ちかけようとしたが、こいつは見た目どおり朴訥で、頭の回転も鈍いようで、蓮司のほのめかしをまるで理解しなかった。色々と探りを入れてみたが、博の家族は健康で、本人にもギャンブルなどの悪癖はない。つまり、つけ込む隙がなかった。打つ手がなくなった蓮司は、直接聞くことにした。「叔父さんは、月にいくら払ってる?」博は正直に答えた。「六十万円です」蓮司は尋ねた。「たった六十万か。もっと稼ぎたくないか?」博は頭をかきながら、人のよさそうな顔で言った。「そりゃあ、まあ。金が嫌いな人なんていませんし」蓮司は口元を緩めた。……いいぞ。最初からストレートに言えばよかったんだ。彼はすぐに条件を出した。二百万円やるから、自分を外出させ、叔父には黙っていてくれと。博はその直球すぎる話を聞いて、ようやく気づいた。蓮司は、自分を買収しようとしているのだ!だが、彼の頭に最初に浮かんだのは「二百万円ももらえる、欲しい」ではなく、「水野社長の読みは正しかった」という感想だった。博はそこまで間抜けではなかった。何しろ、蓮
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