勝は目を剥いて睨みつけた。怒りで頭から湯気が出そうだ。この介護士の頑固さにも腹が立つし、大輔が見て見ぬふりをして涼しい顔で皮肉を言ったことにも腹が立つ。もう病院まで来ているのだ。今さら取次など必要あるか。今日こそは絶対に上に行かなければ。「いいか、よく聞け。私は一昨日も来たんだぞ。新井社長の部下だ。重要な用件があるんだ」勝はそう言いながら博を押し退けようとするが、何度押してもびくともしない。「私の仕事を邪魔して、十億単位のプロジェクトが遅れたら、お前に責任が取れるのか!」勝は再び脅し文句を口にした。だが博は頑固一徹で、ダメなものはダメだと譲らない。相手がまだ諦めずに割り込もうとするのを見て、後ろに向かって言った。「佐藤さん、先に上がってください。この人は僕が食い止めますから」大輔は閉まるボタンを押し、笑いを堪えながら言った。「助かります。お願いします」それから勝に向かって、いかにも公正で丁寧な口調で続けた。「坂本部長、今日は無駄足になってしまってお気の毒です。ですが、安田さんも職務を全うしているだけですから、責めないであげてください」それを聞いた博の中で、大輔への好感度はうなぎ上りだった。一方で、無理やりエレベーターに乗り込もうとする目の前の男に対しては、さらに冷ややかな視線を向けた。見ろ、同じスーツ姿でも、片や礼儀正しく、片や野蛮で理不尽だ。どうしてこうも人間性に差があるのか。エレベーターのドアが閉まりかけるのを見て、勝は焦って叫んだ。「おい、佐藤!本当に私を置いていく気か!私が悪かったよ!嫌がらせなんてしなきゃよかった、謝るから!あれはただの冗談だ。次はもう巻き込んだりしないから!勘弁してくれ!この頑固者め、社長が融通が利かないと言うわけだ。早く乗せろ……」勝の謝罪と罵倒は閉ざされたドアに遮られ、大輔にはもう聞こえなかった。エレベーターはそのままスムーズに上階へと向かった。病室の前まで来ると、中に入る前から蓮司の声が聞こえてきた。「高橋さん、もう行っていいぞ。佐藤たちがすぐに上がってくる」執事が答えた。「若旦那様、そう急ぐこともないでしょう」蓮司の声には苛立ちが滲んでいた。「急ぐこともないと言うが、この隙に俺が上の階へ走って行けるとでも思うか?間に合うわけないだろう」執事は冷静に答えた。
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