「もし彼が離婚に応じないと訴えてきたら、これらは全部証拠になるわ」透子は言った。「でも、新井のお爺さんが出てきたら、あの方の顔を立てるしかない」「それじゃあ、あなたが受けた苦しみは無駄になるじゃない!」理恵は納得いかない様子で言った。「心配しないで、透子。私は絶対にあなたの味方だから」「ありがとう。でも、誰も巻き込みたくないの。先輩の会社も、もう蓮司に目をつけられてる。これ以上何かされるかもしれない」彼女は理恵を巻き込みたくなかった。自分のせいで、柚木家と新井家が対立するなんてことになったら……あの狂犬のような蓮司なら、本当に報復しかねない。透子の言葉を聞き、理恵は心から彼女を気の毒に思うと同時に、悲しくなった。「そんなに悪く考えないで。うちの会社まで巻き込まれたりはしないわよ。それに、うちと新井家を比べたって、ほんの少し劣るくらいで、天と地ほどの差があるわけじゃないのよ」理恵は言った。「とにかく、あなたのこれからの幸せのためなら、私は絶対に手を貸すから」透子は横を向き、感謝の気持ちでいっぱいだった。お爺さんと、手元にある証拠があれば、離婚はもう決まったようなものだ。蓮司が裁判官を買収でもしない限り。二人は食事に行こうとしたが、角を曲がった時、理恵はバックミラーに映る見慣れたロールスロイスに気づいた。「うそ、新井蓮司が追ってきた?」理恵は驚いて言った。透子が後ろを振り返ると、案の定、あの黒い車が見え、途端に彼女の指に力が入った。「お願い、彼をまいて。じゃないと、住んでるところまでついてくるわ」透子は言った。「任せて」理恵は答えた。……その頃、後方の車内。蓮司はフェラーリが本来曲がるはずだったのに、車線を変えて直進したのを見て、自分もそれに続いた。「透子、話がある。車を停めてくれ」蓮司は並走しながら、窓を開けて言った。しかし、運転席の理恵が透子の姿を完全に遮っていたため、彼はさらに声を張り上げた。理恵は横目でちらりと見ると、そのままオープンカーの幌を閉じた。蓮司はそれを見て憤然とクラクションを鳴らし、並走を続けた。「なんなのよ、あの男。しつこくて、まいてもまいてもついてくる」しばらく走ってから、理恵は呆れたように吐き捨てた。「先週、彼に会社がバレ
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