透子は唇を引き結んだ。一昨日、蓮司が弁護団を雇ったと言っていたが、まさか本当だったとは。しかも、これほど動きが早いなんて。大輔をブロックリストから解除し、電話をかけると、相手はすぐに出た。「教えてくれてありがとう。この二、三日で弁護士を探して対応するわ」「とんでもないです。社長は万全の準備を整えていらっしゃいます。必ず勝訴する、さもなければ弁護士たちをこの業界で生きていけなくするとまで豪語されているようです」大輔は答えた。その言葉に、透子の表情はさらに冷たくなった。大輔は、自分が情報を漏らしたことは内密にしてほしいと言い、透子はもちろんそれを理解した。「安心して、あなたのことは絶対に口外しないわ。新井のお爺さんにも、今はまだ話さないつもり。裁判が受理されたら、その時に知らせるわ」透子は言った。「昨日の夜、電話をくれたのはこのことを話すため?」彼女は再び尋ねた。「いえ、昨夜は社長があなたの住む団地へ行って、警備員に通報された件でして。口頭で示談にしていただけないかと思いまして」大輔は答えた。透子はその言葉に一瞬固まった。昨夜、蓮司が陽光団地に来ていた?!ふと、昨夜の理恵が「忙しい」と言って、一度階下へ降りて行ったことを思い出し、尋ねた。「それで、示談交渉は誰に頼んだの?柚木理恵?」「はい、柚木様にお願いしました。あの方も現場にいらっしゃって、一緒に通報されたようです」大輔は言った。透子は合点がいった。理恵がこっそり守ってくれていたなんて。心配させまいと、黙っていてくれたんだ。胸がじんと熱くなった。大輔はさらに、蓮司が旭日テクノロジーを買収しようとしていたこと、新井グループの人間が一度交渉に訪れたことまで話した。「えっ?!それ、いつの話?」透子は驚いて尋ねた。団地を買収されることと、旭日テクノロジーを買収されること、どちらが深刻かと言えば、当然後者だ。先輩を巻き込むなんて、考えたこともなかった。もしそうなったら、申し訳なくて死んでしまう。「昨日の午後です。桐生社長から何もお聞きになっていませんか?」大輔は言った。「聞いてないわ。全く知らなかった」透子は呆然と呟いた。この数日、水面下ではこんなにも多くのことが起きていたというのに、自分はまるで安全な港に隔離されて
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