「バタンッ!!」 蓮司は勢いよくドアを閉め、苛立ちを抱えたままキッチンへと向かった。 テーブルの上には、彼が買って帰った夕飯の包み。じっと見つめた蓮司は、ふっと鼻で笑った。 ――バカバカしい。 次の瞬間、怒りに任せてそのまま全部ゴミ箱に叩き込んだ。 スマホを取り出し、無言で透子の番号を押す。 ……コール3回。誰も出ない。 「チッ……」 舌打ちをしながら怒りが再燃しかけたが――その時、ふと透子のスマホが壊れていたことを思い出した。 仕方なく電話を切り、そのまま険しい顔で寝室へ向かう。 ――どこへ行こうが、死のうが、生きようが、俺には関係ねぇ。 冷たい怒りを抱えたまま、シャワーを浴び、ベッドに潜り込む。 ――午前2時、深夜。 蓮司は胃のムカつきで目を覚ました。頭は重く、胸元が焼けるような不快感。 「……透子、スープ……」 思わず、いつものように口をついて出た名前。 だが、斜め向かいの部屋のドアは、今朝自分がぶちまけたまま、開け放たれていた。 拳を握りしめ、舌打ちを一つ。そして台所へ胃薬を取りに行く。 思い返せば、焼き肉は脂っこすぎたし、酒も飲んだ。そのせいで胃が完全に反乱を起こしている。 腹は空っぽ。透子が用意してくれた夕食が頭に浮かび、冷蔵庫を開けてみる。 だが――中は空。 急いでキッチンへ戻る。そこにも料理の影はなし。棚も、台も、何もかも綺麗に片付いていた。 怒りが、また一気に吹き上がった。 「ここまでやるか?ふざけんな……誰に向かって反抗してんだ……」 顔をしかめながら吐き捨てる。 「そんなに出ていきたいなら、二度と帰ってくんな!!」 ――翌朝、オフィス。 いつにも増して険しいオーラをまとった蓮司。アシスタントの佐藤大輔(さとう だいすけ)は、遠巻きに怯えながら業務報告。 「そこの、お前。スマホ買ってこい」 書類を差し出しながら蓮司が言う。 「え、えっと……機種とか、ご指定は……?」 「どうでもいい!」 「で、でも色とか、機能は……」 「電話できりゃいいだろが!!」 怒声が飛ぶ。大輔はビクビクしながら、ファイルを抱えて逃げるように退室。 ドアが閉まった瞬間、深くため息をついた。 「おかしいな……新井社長、買うって言ってたの
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