病室―― 透子はベッドの上でうつ伏せになりながら、デジタルペンを握ってスケッチ練習をしていた。感覚を取り戻すため、ひたすら構図を描いている。 その時、隣に置いていたスマホが鳴った。画面を一瞥しただけで、すぐに冷ややかな表情でポイと放り出す。 ――四十秒後、通話は自動で切れた。 これで終わるかと思いきや、またすぐに着信。 続けて三本目、四本目…… まるで今朝の「百連発」を繰り返すかのような粘着ぶり。 一体何の用なのか、透子には理解できなかった。 まさか「夕飯作れ」とでも? ――でも入院してることは知ってるはず。 もしまた昼間みたいに病室へ突撃されては困ると思い、透子はペンを置いて深呼吸し、渋々スマホを取って通話に出た。 「……」 「なんで四回目でようやく出るんだ。理由をはっきり言え」 「もしもし」すら言う前に、蓮司の怒号が耳に飛び込んできた。 「……」 ――ふん、これで四回目だってこと、あんたも分かってるんでしょ? 少しでも空気読める人なら、「電話に出たくない」ってサインくらい気づくはず。 そう思ったものの、口には出さなかった。喧嘩する気もなかった。 「トイレに行ってただけよ。今戻ったとこ」 冷淡な声で返す。 その言葉を聞いて、蓮司の怒りはほんの少し和らいだようだった。 「看護師が付き添ったのか?」 透子の目が呆れたように泳ぐ。 なにこれ、まさか心配してるつもり? それとも演技?どっちにしろ意味不明。 「いない」 「じゃあ、トイレ行く前にナースコール押さなかったのか?」 何が言いたいんだこいつは――透子は思わず遮った。 「……何が言いたいの?」 スマホの向こう、数秒間の沈黙。 通信の遅延か、あるいは本気で答えに詰まったのか―― 「そんなに質問攻めして、まさか……心配?」 わざと引っかかるように言ってみた。 案の定、反応は秒速。 「はあ!?誰が心配なんだよ!自惚れんな!」 案の定の逆ギレに、透子は小さく冷笑した。 目に浮かぶのは、どこまでも冷たい色。 ちょうど切ろうとした時、蓮司の声がまた飛び込んできた。 「……ただ、転んでさらに怪我でもしたら、あとでじいさんにどやされるからだ」 「佐藤さんに伝えといたでしょ。おじい
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