二人の会話は続く。透子が口を開いた。「昨日、言い忘れてたことがあるんだけど、佐藤さんから聞いたの。新井が、また上訴するつもりだって」それを聞き、理恵は驚き、声を大きくした。「はぁ?!どの面下げてんのよ!上訴は諦めて、離婚は確定したんじゃなかったの?」透子は言った。「佐藤さんが言ってたんだから、間違いはないわ。たぶん、あの時は新井のお爺さんの圧力で、すぐに上訴できなかったんでしょうね。上訴期間は、判決から十五日以内だから」「大丈夫よ、透子。そんなに心配しないで。あいつは今、留置場にいるんだから。出てきたら……」理恵は慰めようとするが、そこまで言って言葉を止めた。蓮司が具体的に何日間勾留されるか、彼女は知らない。万が一、出てきた後もまだ有効期間内だったら?「カレンダー見てみる。あんたの裁判、何日だったっけ?」理恵はそう言って、スマホのカレンダーアプリを開いた。透子は言った。「見なくていいわ。もう見たから。ちょうど十日間よ」蓮司の元々の勾留期間は十日間だ。もし満期までいたとしても、代理人弁護士を控訴審に出席させることはできる。もし新井のお爺さんが手を回して期間が短縮され、早く出てくれば、彼自身が法廷に立つことになる。いずれにせよ、控訴審は避けられない。透子は言った。「今日、藤堂弁護士に連絡して、この件は伝えたわ。対応するために、関連証拠を準備してる」実のところ、第一審の証拠はすでに十分だ。翼からは、自分が受けた被害に関する情報を、できるだけ詳しく、多ければ多いほど良いから、もっと集めるように言われている。理恵は言った。「何か手伝えることがあったら、いつでも言ってね。技術的なサポートは任せて」透子は礼を言うが、今回は技術的なことは関係ないだろうと考える。そうなると、聡に迷惑をかける必要もない。提出すべき証拠は、第一審でほとんど提出済みだ。新たに追加するものといっても、特にない。過去二年間の、蓮司からのモラハラや言葉の暴力については、物的証拠がなく、書面で訴えるしかない。……それから数日、時間はあっという間に過ぎていく。蓮司が最初に依頼したハッカーによる防犯カメラのデータ復旧作業が完了し、削除されたファイルは完全に復元された。蓮司は留置場にいるため、相手は連絡が取れない。しかし幸い、蓮司自
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