「ですが、社長が具体的にどのような証拠で上訴するのかは分かりません。ただ、そういう動きがあるということだけお伝えしておきたくて」大輔は再び小声で言った。「僕にできるのはここまでです。会長様が社長を一時的に抑えられても、一生抑え続けられるわけではありません。奥様が一日も早く、この苦しみから解放されることを願っています」彼はため息をついた。「ありがとう」透子は彼を見つめ、心から感謝した。「二度もこうして知らせてくれたおかげで、証拠を準備する十分な時間ができたわ」大輔は言った。「いえ、大したことではありません」大輔は蓮司のアシスタントであり、誰にも言うなと口止めされているが……蓮司の悪行は、確かにもう許される範囲を超えている。これは、社長の代わりに徳を積むための行いだと思おう。透子は目の前の大輔を見つめ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。彼は蓮司とは全く違う。悪事に加担することなく、むしろ自分を助け、同情してくれている。彼女はどう恩返しをすればいいか分からない。何か言おうとしたその時、取調室から警察官が出てくる。警察官は言った。「如月さん、加害者はすべての罪を認め、警察の処分に協力するとのことです。他人を雇いストーカー行為をさせ、あなたのプライバシーを侵害し、生活に深刻な支障をきたしたとして、十日間の拘留と罰金二万円の処分となります。雇われた二人は、法を犯したと知りながら、営利目的で個人情報を売買したため、全収益を没収の上、十五日間の拘留、及び罰金四万円とします」十日間という日数を聞き、透子は満足して頷いた。隣にいる大輔は困惑した。十日間も……その間、社長の仕事はどうするのだ?彼が目を通さなければならない書類もある。彼は警察官を見て、罰金を多く支払うことで拘留を免れないかと尋ねようとするが、透子にちらりと視線を送り、その言葉を飲み込む。最終的に警察が事件を処理し、透子は先にその場を去る。大輔が最後に面会することになる。ガラス窓を隔てて、蓮司は魂が半分抜かれたかのように意気消沈し、まるで歩く屍のようだ。「社長……お爺様には、僕からお話ししておきます」彼の言葉には含みがある。警察は十日間の拘留としたが、新井のお爺さんが出向いてくれれば……日数は多少短くなるだろう。ただ、そうすることは透
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