「あいつは家庭の事情で高校時代に心の病をひどく患い、性格も陰鬱で、もう少しで自ら命を絶つところだった。わしが当時に心理カウンセラーを探してやったのだが、本人がひどく嫌がってな。今回、改めて専門家を探し、あいつをカウンセリングさせるつもりだ」医師は頷き、何気なく尋ねた。「患者さんは高校時代から今まで、ずっと治っていなかったということですか」新井のお爺さんは答えた。「いや、高校を卒業してから徐々に回復し、気持ちも落ち着いてきた。これほどひどい発作は、長年ぶりだ。前回は胃痙攣を起こしただけだった」医師は尋ねた。「先ほど、患者さんは高校時代にカウンセラーを嫌がっていたと仰いましたが、では、どうやって回復されたのですか」新井のお爺さんは言葉に詰まり、唇を引き結んだ。どうやって回復したか……蓮司が言うには、美月が三年間そばにいて、彼を導き、励まし続けたことで、徐々に立ち直ったのだと。「一人の女のおかげだ」新井のお爺さんはため息をついて言った。「同級生だ。あいつが好意を寄せていた女学生だよ」「母親が亡くなってから、心の病を患ったのだ」医師は言った。「それは、失礼いたしました」新井のお爺さんは気にも留めなかった。そもそも事前に話していなかったし、ましてや蓮司の実の母親が、ただの病気ではなく、鬱病で自ら命を絶ったことなど、話すはずもない。医師は続けた。「その女学生とは、その後お付き合いされたのですか?患者さんのご年齢からすると、家庭を築いていらっしゃれば、お子さんがいてもおかしくない頃でしょう。そうなれば、彼の精神状態を安定させる助けにもなります」その言葉を聞き、新井のお爺さんは苦々しく口の端を歪め、視線を落として何も答えなかった。医師はすぐに察し、これは悲しい結末だったのだと、それ以上は何も言わなかった。彼は言った。「当院の心理専門家は、この分野では権威です。一度、患者さんに会わせてみてはいかがでしょう」新井のお爺さんは頷き、礼を言った。医師が去り、蓮司は特別病室へ移された。病室内。ベッドに横たわり目を閉じた男を見つめた。顔色は青白く、頬はわずかにこけ、前回入院してからまだ数日しか経っていないというのに……新井のお爺さんはため息が止まらず、心中は穏やかではない。執事は傍らで、辛そうな
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