弁護士から明日の開廷について連絡があり、蓮司の代理で出廷するかどうかを尋ねる内容だった。大輔は、はっとした。明日、二回目、必ず勝つ……まさか、社長が言っていたのは……「佐藤さん、どうかなさいましたか?」話が途切れたのをいぶかしんで、執事が尋ねた。「い、いえ、何でもありません……」大輔は慌てて言った。「思い出しました。その案件は最初の交渉が失敗したので、一度保留になっていたんです。それで書類を隅のほうにしまっていたので、すぐには見つからなくて」大輔の頭脳はフル回転し、もっともらしい言い訳をひねり出した。「これは小規模なプロジェクトでして、お爺様がご存じないのは、会長の承認が不要な案件だからです。以前、このプロジェクトは一度保留になったのですが、その後、社長が入院されたこともありまして。今回はもう一度挑戦して、何としてもその会社を買収しようということになったんです」大輔は顔色一つ変えず、平然と嘘を並べた。執事のほうは黙って聞いており、その説明を受け入れたようだった。大輔が、まだ仕事が残っているので、と電話を切ろうとした、そのとき、相手が突然言った。「お待ちください、佐藤さん」大輔の心臓がどきりと跳ねた。嘘をついた後ろめたさから不安になり、先ほどの自分の言葉に穴がなかったか、頭の中で素早く再確認した。執事は専門家ではないし、年も取っている。まさか調べたりはしないだろう。それに、電話をかけてきたのは執事自身で、お爺さんではない。お爺さんよりはごまかしやすいはずだ。「その買収というのは、まさか、如月さんが今お勤めの会社のことではございませんよね?」執事の声が聞こえた。大輔は驚いた。「……え?」そうだ、前回、社長は旭日テクノロジーを買収しようとして、お爺さんに止められたんだった。「違います、ご安心ください。社長は今、留置場にいらっしゃるんですよ。旭日テクノロジーをまた買収しようなんて、そんな度胸があるはずありません」大輔はほっと胸をなでおろし、相手に答えた。「別の工場です。ただ、相手の社長が頑固で、どうしても買収価格を吊り上げようとしていまして」執事はそれを聞いて完全に安心した。また透子のご迷惑になるようなことでなければ、それでいい。彼は、蓮司が留置場から出た途端にまた問
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