蓮司が手で合図を送ると、受付はすぐに意図を察してうなずき、持ち場に戻った。社長のお客様だったのか。でも、どうしてこちらには連絡がなかったのだろう?しかも、あの男は一人で来て、運転手もアシスタントもいない。その上、背が高くて体格も良く、物騒な顔つきをしている……本当に提携の話をしに来たのだろうか?まさか、喧嘩をしに来たわけでは……?受付は心の中でつぶやいた。男は確かにハンサムだが、あまりにも威圧的な雰囲気がそれを上回り、恐ろしささえ感じさせる。「喧嘩をしに」というのは、ただの心の中の冗談のつもりだった。しかし、まさかーー二人が顔を合わせた途端、男が拳を繰り出すのが見えた。それが現実になってしまったのだ。ロビーにて。蓮司が口を開く間もなく、雅人の拳が彼を襲った。彼はすぐに身をかわしてそれを避けると、カッと頭に血が上り、言葉を交わすことなく、拳で応戦した。前置きも、雰囲気を探る時間もなく、いきなり殴り合いが始まった。そのあまりに突然の出来事に、大輔は驚いて数歩後ずさった。「社長!橘社長!やめてください!」大輔は慌てて警備員に連絡を取りながら、止めに入ろうとした。しかし、二人の男はどちらも聞く耳を持たず、激しい殴り合いを繰り広げている。蓮司は自分の腕っぷしには自信があったが、雅人と対峙して、思わず息を呑んだ。この男は自分より数センチ背が高く、体格もずっとたくましい。拳には型がなく、ただただ凄まじい腕力と怒りのままに殴りかかってくる。まるで、怒り狂った猛獣のようだ。蓮司の脳裏に、雅人を的確に表す言葉が浮かんだ。だが、彼は負けを認めるつもりも、怯むつもりもなかった。そもそも、先に手を出してきたのは雅人の方だ。非は向こうにある。大輔は二人の社長が公然と殴り合っているのを見ながら、自分ではどうすることもできず、ただただ焦って右往左往するしかなかった。幸いにも警備員の到着は早く、三分も経たないうちに、二つのチームがロビーに駆けつけた。「この卑怯者め。一人じゃ勝てないって分かったからって、大勢で襲ってくる気か?」雅人はついに口を開き、蓮司を睨みつけた。蓮司は彼と力比べをしながら、同じように睨み返し、歯を食いしばって大声で叫んだ。「全員、下がれ!」社長の命令に、二つのチームは再び足を止め、どう
Read more