受付はスマホを開き、いくつかのグループチャットを確認した。大輔がチャット履歴に目を通すと、どれも社員たちの噂話と憶測ばかりで、確かな証拠はなかった。大輔は再び念を押した。「この件は他言無用だ。誰かに聞かれても、知らないと答えて」社員間の噂など、数日もすれば消える。この件は、以前の社長と美月のゴシップほど大きな騒ぎにはなっていない。大輔は最上階へと戻った。その頃、路上では。助手席には、書類の束とUSBメモリなどが置かれていた。雅人は眉をひそめ、物思いにふけっていた。裁判の証拠として使うため、パパラッチの連絡先もすべて手元にある。あとは、秘書に再度事実確認をさせるだけだ。頭の中に、蓮司が語った妹の様々な「悪行」が響き渡る。それに加えて、自分の目で見た防犯カメラの映像。正直なところ、秘書に調べさせるまでもなく、雅人はすでに蓮司の言葉を信じ始めていた。その頃、新井グループの社長室。執事から再び電話がかかってきた。雅人が帰ったことを事前に確認した上で、今日具体的に何があったのかを蓮司に尋ねるためだった。蓮司は、お爺さんに頼まれて聞いているのだと察し、こう言った。「朝比奈は橘社長の実の妹で、俺が彼女を裏切ったと思って、決着をつけに来たんだ」電話はスピーカーフォンになっていた。「実の妹」という単語が響いた瞬間、新井のお爺さんは完全に絶句した。彼も、橘家が昔、孫娘を一人失ったことは知っていた。それが彼ら一家が海外へ移住した理由でもある。しかし、まさか……その孫娘が、美月だったとは!誰でもよかった。なぜよりによって、美月なのだ。「騒ぎがあったのはどうやって知ったんだ?」蓮司はさらに尋ねた。執事が答えようとしたが、その前に、お爺さんの冷たい声が響いた。「わしが死なない限り、新井グループはお前が一人で好き勝手できる場所ではない」「そういう意味じゃ……」蓮司は気まずそうに弁解した。彼はただ、どの口の軽い奴が情報を漏らしたのか聞きたかっただけだ……電話は切られた。ないがしろにされた気分で、蓮司は仕事に集中することにした。舌先で頬の内側を押す。そこはまだ痛む。雅人は本気で殴ってきた。少しの情けもなかった。階下、デザイン部。写真がスマホに転送されてきた。悠斗は男の横顔と半ば正面からの顔を見て、
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