一週間後、舞はあの店舗を手に入れた。立地も価格も申し分なく、彼女は五年契約を結び、一組の小切手を書いて貸主に渡した。景気が悪い中での長期契約に、大家も上機嫌だった。用事があった大家は先に立ち、舞は残りのコーヒーをゆっくり飲み干した。それは、彼女が長年続けてきた習慣だった。すると突然、耳元に甘く透き通る声が響いた。「舞さん」舞は思わず目を見開いた——現れたのは、九郎の妹、上原桃寧(うえはら もね)だった。桃寧はまだ大学生で、普段はそれほど親しい間柄ではなかった。だが今日の彼女はなぜかやけに愛想がよく、駆け寄ってきて舞の腕に抱きつき、甘えるように親しげに話しかけてきた。明るくて愛らしいその少女に、普段は人に距離を置く舞も、どこか惹かれるものを感じた。彼女はウェイターを呼び、桃寧のためにデザートを二つ注文した。しばらくして、ウェイターがデザートを運んできた。桃寧は満面の笑みでそれを食べた。一皿を食べ終えたころ、桃寧はようやく何かを思い出したように顔を上げた。「明日はお兄ちゃんの誕生日なの。パーティーがあるんだけど、一緒に来ない?」九郎の誕生日?舞は特に考えることもなく、やんわりと断った。「時間が取れないかも」すると桃寧は、安心させるようににっこりと笑った。「安心して!京介は絶対に来ないよ。こんなつまらないパーティー、あの人は一度も来たことないし……お兄ちゃんの命にかけて保証する!」舞は、九郎が九つくらい命を持っているのかもしれないと、ふと思った。でなければ、こんなに好き放題に使われて平気なはずがない。彼女は少し考えてから、結局承諾した。確かに、九郎には借りがあった。……帰り道、舞はデパートに立ち寄り、九郎への誕生日プレゼントを選ぶことにした。ふたりの関係を考え、あまりにも親密になりすぎず、けれども失礼に見えないものとして、彼女は金のボールペンを選ぶことに決めた。長い時間をかけて選び、ようやくひとつに決めた。値札には「2,520,000円」と記されていた。カードでの支払いを済ませると、店員がにこやかに声をかけてきた。「奥さま、ご主人へのお誕生日プレゼントですね!当店には他にも素敵なカフスボタンとカフスリンクがありますよ。材質は市場で最高級です。ついでに見ていかれませんか?」舞が何か言おう
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