京介は、しばらく手探りをしていたが、指先に温かなものが触れた。……泣いている?舞は彼の指先をそっとつかみ、もう一度、やわらかく問いかけた。「……気を遣っているの、そんなに辛い?」京介は静かに目を閉じ、ひと呼吸おいてから、思案するように口を開いた。「見えなくて、記憶もない人間の世界は……荒れ果てていて、時には恐怖すら伴う。明日がどうなるか分からないからだ。何もできず、毎日決まった時間に食事をして、眠る——それが全部のような気がする。だから、いっそ闇の中に横たわっていたほうがいい。安心できるし、心地もいいから。でも分かっている。昔の俺はこんなんじゃなかった。きっと、もっと魅力的だったはずだ。じゃなきゃ、お前が俺と結婚なんてしなかっただろう」……やがて、男はゆっくりと瞼を開けた。「今は……少し疲れている。あとどれくらい生きられるのかも分からない」底知れぬ深淵のような瞳。舞はそのまぶたにそっと触れ、わずかに震える指先を止められずにいた。しばしの間を置いてから、彼女はゆっくりと顔を彼の胸元へと埋め、心音に耳を傾ける。京介は拒むことなく、一枚の掌を静かに彼女の背へ添えた。それは、声なき慰めのようだった。彼はもう覚えてはいない。それでも——彼女を労わってくれている。舞は思った。半年前、京介が下したあの決断はきっとこの日を迎えないためだったのだ。彼はずっと誇り高い人だった。舞はそっと顔を横に向け、窓の外の落葉したガジュマルを眺めた。枝は裸同然だが、二ヶ月もすれば青葉が茂り、濃い緑の陰を落とすだろう。そして——ふいに心を決めた。「京介……私は、もっとあなたの声を聞くべきだった。これからは、知らない女と寝る必要もないし、無理に愛し合うこともない。好きなことをしていい。起きているときにぼんやりしても、眠りたいときに眠っても構わない。でも、あまり遠くには行かないで。私が会いに行ける距離にいて……子どもたちも、あなたに会えるようにしてほしい」彼女の脳裏には、いくつかの場所がよぎった。昔暮らしていたアパート……あるいは、白金御邸の隣に別荘を買うことも考えた。けれど最終的に、舞は小さくつぶやいた。「京介……家に帰ろう」周防家の邸宅——そこが、彼にとって一番いい場所だった。京
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