瞬く間に、輝が目の前まで来た。まばゆい照明も、その整った容貌には及ばない。彼は皮肉を込めて、二人の男女を見やり、低く放つ。「まだ連絡を取り合ってるんだな……本物の愛ってやつか。まあそうだろう、岸本は三兆円の資産家だ。女にとっちゃ十分な魅力だ。我も我もと群がるって言葉、ぴったりじゃないか」耳障りな言葉だった。瑠璃はふと絵里香の方へ視線を送り、再び輝を見た。「茉莉のこと以外、私たちはもう長く連絡してないわ。どうしてそんなこと言うの」輝は涼しげに眉を上げた。「そうだったか?」そこへ、絵里香が近づき、彼の腕に手を添える。「輝」輝の表情がわずかに固くなる。岸本がゆっくり口を開いた。「俺と赤坂社長は友人であり、仕事仲間だ——この方は周防社長の新しい彼女か?なかなかの美人だな。結婚する時は招待状をくれよ、俺にもおすそ分けしてくれ」輝の視線は終始、瑠璃から外れない。二年——彼女は岸本と結婚せず、彼にも連絡しない。……終わったはずだ。彼女が気にしていないなら、なぜ自分は——輝は感情を押し隠し、微笑を作った。「必ず」隣の絵里香が嬉しそうに「輝」と呼ぶ。輝は彼女の肩を抱き、「もう少し座ったら帰ろう」とだけ言った。背を向ける瞬間、彼の腕がかすかに瑠璃の腕に触れた。それは心の奥に潜む火種、長く眠っていた火山の熱のようだった。——だが、彼は抑え込んだ。二人が去った後、岸本が軽く眉を下げる。「今日は店を選び間違えたな。悪かった」瑠璃は首を振る。「あなたのせいじゃない」時は流れ、輝とは相変わらずぎこちない。だが岸本とは、こうして穏やかに会話できる。彼は、機を逃さず切り込む。「瑠璃……もう一度、俺と考えてみないか?この年になれば、外の遊びなんて興味はない。家に置いておけば安全だし、コストパフォーマンスも悪くない。二人で暮らせば、それなりにやっていける」瑠璃は前菜のグラスを手に取り、よく手入れされた指先で杯を支え、一口だけ含んだ。「私は妥協はしないの」岸本の目に一瞬だけ落胆が走る。だがすぐに笑って言い返した。「そうだな。お前の立場なら、妥協は必要ない。俺みたいな女たらしの中年なんか、考える必要もない」「じゃあ、その女たらしさんに——乾杯?」「ああ、
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