寒真が昂ぶった様子を見せれば、それは必然的に、己の身を捧げるような激しい情愛へと繋がっていく。だが、夕梨はそれを拒んだ。彼の胸元に手を添え、小さな声で諭す。「あと三十分で空港へ向かわなきゃいけないのよ。少しゆっくりお話ししましょう。それに、あんまりしすぎると体に障るわ」しかし、男はすっかりのぼせ上がっており、なりふり構わず彼女に口づけを落とした。「体に障るなんてことないさ。俺の体力を見くびるなよ」確かに彼は、牛のように逞しく、溢れんばかりの生命力に満ちていた。対する夕梨は、二月の風に揺れる柳のようにしなやかで儚げだった。結局、どうにかそのひとときは終わりを迎えた。激しく、けれど慌ただしく幕を閉じる。男は名残惜しそうに女の頬をなでると、彼女を布団の中にくるみ、布団ごと抱きしめて深く、深く口づけをした。断ちがたい愛着を込めて、彼は囁く。「……本当に行かなきゃ。いい子で待っていてくれ。あと半月でクランクアップだ。そうすれば、もうこんなに長く離れることはないから」夕梨は疲れ果てていたが、それでも彼を強く抱きしめ返した。言葉には出さず、ただ彼の胸に顔を埋めて無言の別れを告げる。その温もりに、寒真はますます後ろ髪を引かれる思いだった。三十四歳にもなって、こんなに胸が締めつけられるなんて。つくづく、自分でも可笑しくなる。彼は最後にもう一度口づけを交わし、心を鬼にして部屋を後にした。布団に潜り込んだ夕梨は、遠ざかる寒真の足音を聞きながら、枕にそっと顔を擦り寄せた。そこにはまだ男の残り香が漂っている。彼女の心に、静かな安らぎが広がった。それはきっと、寒真が与えてくれたものだ。寒笙の帰還は、確かに彼女の心を揺さぶった。けれど、寒真と人生を歩もうと決めた時、彼女はすでに覚悟を決めていた。それは「好きだから」選んだ道だ。だから、寒笙が戻ってきたとしても、たとえ彼が独身であったとしても、彼女の決意が変わることはなかった。ただ、彼が生きていたことは、心から嬉しかった。――健やかに、生きてくれている。いつの間にか、夕梨の心には希望の種が芽生えていた。未来は、きっと皆、幸せになれる。そしてその希望の種を植えてくれたのも、やはり寒真だった。……深夜、スイス行きの航空機は時刻通りに離陸した。エンジン
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