寒真ははっきりと息を呑んだ。次の瞬間、腕の中の女をきつく抱き寄せ、顔を伏せて熱い口付けを落とした。絡みあうようなその最中、喉を震わせた掠れた声で言った――「寒笙が生きていた。戻ってきたんだ!一緒に立都市へ帰ろう!今すぐだ。一刻も早く、チャーター機で帰るぞ」……男はあまりにも昂ぶっていた。そのため、腕の中の人の異変に気づかなかった。抑えきれない歓喜。熱を帯びすぎた感情を、どこかで発散させなければならなかった。光と影が幾重にも重なり、理性は乱れていく。……二時間後、彼らは立都市行きの専用機の中にいた。四月を目前にした陽気だというのに、夕梨の手足は氷のように冷たかった。寒笙が生きていると知った瞬間から、全身の筋肉が機能を失ったかのように、強張ってしまったのだ。寒真はそれに気づかなかった。彼はスマートフォンで弟の写真を眺めながら、年少の頃の思い出話を恋人に聞かせていた。やがて、夕梨の肩に腕を回し、真剣な表情で言った。「寒笙は穏やかな性格だから、お前ともきっと気が合うよ。あいつ、お前にあったら驚くだろうな、いきなり義姉さんができるんだから」夕梨は画面に映る寒笙の写真を凝視しながら、心乱れていた。 本当なら、ここで寒真との関係を終わらせてしまえばいい。そうすれば、秘密は永遠に秘密のままだった。けれど、彼女にはできなかった。好きになったからこそ、覚悟を決めて、寒真と一緒にいたのだから。彼女の心の中で、寒笙は「過去」であり、寒真こそが「現在」と「未来」だった。その境界線は自分の中ではっきりと引けている。だが、運命とはかくも残酷なものだった。……立都市。朝倉家の邸宅はかつてないほどの賑わいに包まれていた。寒笙は九死に一生を得て、六年ぶりに帰還した。しかも単身ではなく、妻と一対の子どもを連れての帰宅だった。聞けば、六年前、彼は激流に呑まれて川底に沈み、そのまま下流へと流されたのだという。そこは立都市に隣接する県にある小さな村だった。運悪く、寒笙は頭部を岩に強打し、記憶を失ってしまったのだ。村長がそんな彼を拾い上げてくれたのだ。二年後、寒笙は村長の娘・上野翠乃(うえの あきの)と結婚し、やがて男女の双子を授かった。子どもたちは二人とも母親の姓を名乗っている。そして今週、寒笙
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