All Chapters of 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈: Chapter 21 - Chapter 30

42 Chapters

俺に従魔ができた件2

とりあえず色々試した結果、レオンに付随するもの(衣服、小物など)は自由に生成可能だと分かった。イメージ次第で衣服を着替えることもできるが、脱いだ衣服をそのまま維持するには「レオンと別の個体として残す」イメージが必要。意識せずに脱ぐとレオンの身体から離れたとたん魔素に戻って霧散してしまう。 ついつい面白くなっていろいろとさせたため、レオンはすっかり拗ねてしまった。子供の用に頬を膨らませて三角座りで部屋の隅に蹲っている。わかりやすい「拗ねました」「構ってください」ポーズ。 「全く。今のお前は俺の従魔なんだぞ?主人の希望を叶えるのが仕事だろう?」 ドカリとベッドに腰かけながら声だけかけてやる。放置してやってもいいが、まだまだやらせたいことがあるからな。早く立ち直らせねば。 「でも、心は俺なんだぞ?ようやくアスカと共にいられるようになったのに……。これじゃあ俺、着せ替え人形?実験体?じゃん」「自己認識がきちんとしているようで何よりだ」「ひっでえ!!」「前世の自分のしでかしを思い出せ。側にいることを許してやっただけありがたいと思え」「またそれ!!……………そりゃちょっとばかし暴走したなって反省してるけどさ。アスカだって悪いんだぜ?」「はあ?俺の何が悪いっていうんだ?」 アスナが切々と訴える。要は、「俺がアスナを受け入れすぎたから」独占欲が湧いたというのだ。 「だってさ、俺んちの親は金はくれるけど愛情はくれなかったし。冷え切ってたんだよ。周りは俺をもてはやすか避けるかだし。対等に扱ってくれたのは飛鳥だけだったんだ。お前、俺が何しても『らしくない』とか言わなかったろ?そのままの俺を受け入れてくれたから。お前の傍でだけ息ができる気がした。本当の俺のままで居られ
last updateLast Updated : 2025-05-08
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俺に従魔ができた件3

「ほら」 腕を広げてやれば、戸惑ったような瞳が俺を見つめる。傍に行きたい気持ちと、行ってはダメだという気持ちがせめぎ合っているようだ。一瞬俺に手を伸ばしかけ、諦めたようにその手を引くアスナ。 俺は首をかしげ、少しだけ笑って見せる。 「来ないのか?ハグしてやると言っている」「アスカ!!」 ドカン、と大きな犬が飛び込んできた。受け止めそこね、アスナごとベッドに倒れ込みながら俺は笑った。 「アハハハ!なんだよ、クソイケメンが。お前、単なるガキじゃねーか。俺はお前の母親じゃねえんだぞ?」「うん。知ってる」 くすん、と俺の胸元でアスナが鼻を鳴らす。……泣いてんのか?俺はそんなアスナの頭を黙って撫で続けた。 ……そうか。俺の15年とこいつの15年は違うのだ。俺はこっちに来て「悪役令息アスカ」に生まれ変わっていたのには驚いたが、すぐさま「好きに生きてやる」と決め、好き勝手に生きてきた。両親は2人とも俺に愛情をふんだんに与えてくれたし、好き勝手に生きることを許してくれる。だから……自分で言うとアレだが、前世でできなかったことを全部やって生きてきたんだ。でもこいつは唯一のよりどころを失い、絶望と後悔の中で生きてきた。俺に再開することだけをひたすらに願って、必死で世界を超え、俺を探し続けた。 グッ、と喉が詰まった。熱い塊がこみあげてくる。愛おしい。ああ、なんて奴だ。 ここまでされてほだされない奴がいるか?絶対にこいつから逃げると決めた前世の俺も、こいつを憎んだ俺も……それでもこい
last updateLast Updated : 2025-05-09
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俺にとてもかわいい従魔ができた件

訂正しよう。俺にとてもかわいい従魔ができた。そう、いっそこのままでいいんじゃないか?むしろこのままの方が全方向に幸せな気がする。 俺はアスにゃんをモフり倒しながらにやける顔を抑えることができなかった。最高だ。もうこいつを手放せる気がしない。 再度腹に顔を薄めぐりぐりしていると、「にゃあん!」ひときわ高い声でアスにゃんが鳴いた。とたん、むくむくむくっと腕の中の身体が大きくなり、その重量がそのまま俺の顔の上に。 「んんーーーーっ!!」 ジタバタと押しのければ、真っ赤になったアスナが大慌てで俺から離れた。 「ご、ごめん…っ!」 何故か前かがみになっている。って……おい、まさか…… 「……何デカくしてやがる。変態め!せっかくアスにゃんを堪能していたのに、勝手に戻るな!」 ムスっと抗議してやると、股間を押さえたまま真っ赤になって涙目で反論された。 「いや、あんなんされたら無理でしょ?!アスカ、分かってる?あの猫も俺なんだぞ?アスカは猫を可愛がったつもりだろうが、実際は俺の手や身体を撫でまわして腹に顔を埋めてぐりぐりしたんだぞ?!完全にセクハラ!好きな奴にされたら誰だってこうなる!!あれ他の奴にしたら誘われたと判断されるぞ!」「それくらい耐えろこのケダモノめが!」「ごみクズでも見るような目で俺を見るなよ!不可抗力だろ?!」「………さっさと戻せ」「そんなすぐには無理だって!お前だって分かるだろ?!」「…&hellip
last updateLast Updated : 2025-05-10
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公爵家にて

アスナを伴い家族用の居間に。座り心地の良いお気に入りのソファにドカリと腰をおろせば、入り口でアスナが茫然としていた。「?どうした?来ないのか?」一応声をかけてやると、しみじみとこんなことを言い出す。「……いや、なんつーか今さらなんだが、アスカって高位貴族なんだなあと思ってさ……。すごい邸だし、家具もゲームのまんまっていうか。お貴族様って感じ」「レオンに憑いてたんだろう?アイツのところで見慣れているかと思ったが」「いや、だってアイツは王族じゃん。家っていったって、城だしさ。当たり前みたいな?」その気持ちは分かるかもしれない。城というイメージ自体が豪華で当たり前、というか。城だから、で全て納得できてしまうというか。「……やっぱり、アスカはアスカなんだけど……飛鳥じゃねえんだな」思わぬ寂しげな様子に面食らってしまう。「だから最初からそう言っているだろう?お前だってアスナだが阿須那じゃない。俺たちはもう別の世界を生きているんだ」改めて口にした言葉。その内容とは裏腹に、存外優し気な響きになってしまったのはどうしてだろう。俺はこの15年、アスカ・ゴールドウィンとして生きる中でそれを実感してきた。だけどアスナ、お前は違うんだな。阿須那のままで飛鳥をずっと求め続けてきたのか。アスナが自嘲のような笑みを漏らした。「……俺は生きてるっていっていいのか分かねーけどな!」明るい口調とは裏腹に、その瞳の色は暗い。思わず俺がこう聞いてしまうほどに。「……大丈夫か?アスナ」返事はなかった。その代わり、あっという間に現れたアスにゃんが俺の膝に飛び乗り、すり、とその頭を俺の腹に擦り付けて甘えてきた。「……俺は自分のものを大切にする。だから、お前のことも捨てはしない。お前が俺のものである限り、ずっと可愛がってやるから安心するといい。お前はいい選択をした。言っておくが、俺は主人としては最高だぞ?なんといっても魔力が多いし、最強なんだから」腕の中の小さな身体がふるふるっと震える。真っ黒な瞳が俺をじっと見つめ、同意するかのように「にゃあん」と鳴いた。そう。お前も俺もこの新しい世界で生きていくんだ。前世のすれ違いも恨みも憎しみも……愛情も。何もかもを置き去りにして。『俺も最高の従魔だぜ?俺は必ずアスカを守る。何があろうとアスカと共に居る。決して裏切ら
last updateLast Updated : 2025-05-11
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公爵家にて2

慌ててソファに座り居住まいを正すアスナ。なんとかギリギリ体裁が整ったところに、父が飛び込んできた。「アスカ!戻ったか!従魔を連れていると聞いたが、真か?!どのような従魔なのだ?」執事の話を聞いて急いで来たのだろう。珍しく髪を振り乱している。その後ろから母、俺の従者のアリアとセリアが続く。「アーク!少し落ち着きなさいな?おかえりなさい、アスカ」「「坊ちゃま、お帰りなさいませ!」」皆の視線が一斉にアスナに集中した。「……失礼。お客人を連れているとは思わず……」言いかけてふと何かに気付いたように目を見開く父。「いや、それにしては魔力が……。もしや、彼が従魔か?」アスナの魔力に俺の魔力が混じっていることに気付いたのか?さすが父だ。一方、母は「まあ!とてもカッコいいのね!素敵!」と少女のような笑い声をあげた。アリアとセリアは仇敵にあったかのようにギリリと唇を噛み締め、アスナを睨んでいる。俺は「こほん」と咳ばらいを一つ。改めて皆にアスナを紹介した。「あー……、みなに紹介しようと連れて戻りました。彼は俺の従魔、アスナです。高位精霊に近い存在で実体がないため、従魔契約をし、俺とアスナの魔力を注いで器を作りました。この実体はアスナの本来の魂の形に添ったものとなっております」アスナが緊張した面持ちで立ち上がり、正式な礼をとる。「初めまして。アスナと申します。わたくしはアスカ様の忠実なるしもべ。この命ある限りアスカ様にお仕えいたします所存」うん。レオンの中にいるときに学んだのだろうか。文句の付け所のない、綺麗な礼だ。「…………レオンハルト殿下とそっくりではないか。どういうことなのだ?」言われると思った。どうしたって気付くだろう。誰もが同じ疑問を抱いているようで、4対の視線が俺に向けられた。うーん……そう言われても、俺にもわからんのだから説明のしようがない。「あー……。たまたま?」信じて貰えないだろうが、本当にレオンを真似して作ったわけではないのだ。案の定、胡乱な眼差しになる父と母。するとアスナがフォローしてくれた。「どうやら私の姿は、王太子とそっくりの様子。しかしながら、これは私本来の姿なのです。私はアスカ様の魂を追ってこの世界に渡って参りました。その過程で実体は失われてしまいましたが……。アスカ様のおっしゃる通り、殿下と姿が
last updateLast Updated : 2025-05-12
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従者VS.従魔

「では、場所のご移動を」控えていたバードがスッと出てきて三人を練習場へ誘導する。実は公爵家の練習場は、俺が好きなだけ新しい魔法を試せるようにと、強度な結界を張ってある。折にふれ強化してきたから、三人が存分に戦っても十分耐えうるはずだ。練習場に向かいながら、アスナが俺を振り返り、こう確認してきた。「私はどこまでやってよろしいのでしょうか??」「そうだな……。こちらの世界に渡った時点で、お前もかなりチートなんだよ。魔力は言うまでもないが、お前の身体能力も……恐らく従来の5倍から10倍くらいにはなっていると思うぞ?アリアとセリアの能力は魔力ではなく純粋に身体能力に特化したものだ。だから、ここは公平に……魔法禁止な?その身体を使いこなして見せろ」アスカの片方の眉尻がくいっと上がった。「それは、命令でしょうか?私の能力は主に魔力によるものなのですが……」うん。だからこそだよ。魔力を使えば勝負にすらならないだろう?だから俺は傲然と顎を上げ、ニヤリと笑ってこう言った。「不利な状況で勝ってこそその価値を示せるというもの。命令だ。アスナ、俺のためにその身体能力だけでこの二人を制してみろ!ちなみに、この二人は俺の師匠だからな?強いぞ?」声に出さずに口の動きだけでアスナが言う。「マジか……」それに俺も口の動きだけで返してやる。「俺を守るんだろ?」アリアがフン、と鼻を鳴らした。「主人を守るのが下僕の務め。私たちにも負けるような従魔にいったい何の価値が?」セリアがニコリとほほ笑む。「我らは学園ヘはいけぬ。我々に勝って、己の価値を示せ。アスカ様をお守りできるのだと、証明してみろ」アスナはスッと俺の前で片膝をつき、俺の手を恭しく持ち上げるとその甲にキスを落とした。「我が主人に必ず勝利をささげます」アスナが二人に向き直った途端、アリアとセリアが左右に分かれアスナに襲い掛かった。ひとりは上段、一人は下段を狙い鋭い蹴りを放つ。とっさに上段の蹴りをその腕で受け、後ろにバク転することでその反動を殺すとともに下段の蹴りを避けるアスナ。「ふん、いい判断だ」「ありがとうございます」双方ともまだ余裕の表情。ここから猛攻に次ぐ猛攻。前後左右あらゆる方向から腕や足がアスナを襲う。双子なだけあり打ち合わせてもいないのに、どちらかに目を向ければどちらかが必
last updateLast Updated : 2025-05-14
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従者アスナ

「とりあえず、こいつのことは認めてくれたということでいいんだよな?」念のため確認すると、父上もアリアとセリアもしぶしぶ頷いた。母上は……「ねえ。アスナくん?あなたウチのアスカちゃんを追いかけてきたって言ってたわよね?どこから?アスカちゃんとどんな縁があるの?もしかして、愛だったりするのかしら?きゃああああ!素敵ねえ!世界を超える愛だなんて!ロマンチックだわあ!」大丈夫そうだな。違う意味で問題がありそうではあるが……。とりあえず放置していいだろう。俺は改めて皆の顔を見渡した。この部屋にいるのは俺の信頼できる家族と、もう一人の親であり兄姉のような師匠たち、幼い頃から俺を見守ってくれている祖父のような執事のみ。ちょうどアスナが「俺を追いかけてきた」などと口にしたことだし、いい機会だ、話してしまおう。「あー……。アスナと俺について皆に話しておきたいことがあります」「なんでも話してみるがいい。この父がどんな話でも受け止めて見せよう」うん。父上ならそういうと思った。実際にこの両親ならば俺が何をしようと、どんなことをしようと受け止めてくれるはずだ。そう言った意味で、俺は本当に恵まれている。「驚かずに聞いてください。俺にはこの世界に生まれてくる前の、つまり前世の記憶があるのです。前世の俺は、アスナが居たのと同じ世界にいました。俺とアスナは幼馴染の親友だったのです。だが……まあ色々あって俺は死に、この世界に転生してきました。正直、アスナがどうやってここの世界に来たのかはわかりませんが、まあ、そういった訳で俺とアスナには前世の因縁があるのです。こいつに害はありません。安心してください」いきなり前世を持ち出され、さすがの父上も目を見張った。「前世の記憶持ちの話は聞いたことがあるが……アスナと同じ世界とはどういうことなのだ?こことは別の世界から来たというのか?」「そうです。前世の私とアスナはこことは別の世界に生まれ、地球という惑星の日本という国で生きておりました」「地球?日本?……確かに聞いたこともない名だ。…………いや、アスカの言うことを信じないわけではないが……信じがたい話なのでな。頭がついていかぬのだ」さもあらん。俺も前世で誰かにこんなことを言い出されたら同じ反応をしただろう。「アスカの言っていることは真実です。私は、私の元いた世界で飛鳥
last updateLast Updated : 2025-05-15
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従者アスナ

とってつけたような笑みを浮かべ「勿論でございます、ご主人様」とへりくだって見せるアスナ。一見すれば非のつけようもない従者としての態度なのだが、先ほどのやり取りでアスナの素を知った師匠たちは、それを見て鼻の頭にしわを寄せた。 「そうすると礼儀正しい貴族にしか見えないな……。れでいいはずなのに、どこかうさん臭く感じるのは何故だ?」「確かに。今改めて見ると、嘘くささしか感じませんね……」 いや、いったいどうしろと?これにはさすがのアスナも苦笑するしかない。 「ご主人様の師匠は厳しいですねえ……」 師匠は俺の保護者だからな。お前に厳しくなるのは仕方ない。諦めろ。  少々打ち解けたところで、本題に入ることにした。 「アスナのことはレオンも知っています。実は、アスナをどこで見つけたかというと……レオンに憑いていたのです」 「……は?!アスカ、今なんと言った?」「アスカ、憑いていた、ってどういうこと?それって……まさか、レオンハルト殿下に憑りついていた、ということかしら?」 こくりと頷く俺。ガクリと父上の顎が落ちた。そこまで隙を見せるなんて珍しい。よほど驚いたようだ。だが……申し訳ないが、まだ先がある。 「アスナですが……実は、自分に似てるレオンの身体を乗っ取ろうと思っていたそうで。ですが、思った以上に魔力を消耗していたため、レオンに憑りつきながら徐々に力を取り戻しているところだったのです。レオンもうすうすそれに気づき、内にいるアスナの力が増していることに危機感を抱いた。そこで俺に『呪いを解いて欲しい』と相談をしてきました。俺は貴重な闇の魔力も持っていますから。で、調べてみたらこいつだったのです。俺の傍に居たいだけだとい
last updateLast Updated : 2025-05-16
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俺の弟

その日は一晩公爵家に泊まり、朝早くまた学園に戻ることになった。寮に戻るつもりだったのだが、父上や母上に「久しぶりに戻ったのだからゆっくりしていけ」と請われたのと、なにより執事のバースが「アスナを従者にするのならば、最低限アスナに教えておかねばならぬことがございます!」と譲らなかったのだ。「さあ、まいりましょうか?あなたは従魔。眠る必要はございませんよね?」「…………お手柔らかに」アスナはドナドナされる仔牛のような表情で、いい笑顔のバースに引きずられていった。せいぜい頑張ってくれ!残された俺は、父上と母上と久しぶりの公爵家の食事に舌鼓を打った。「さあ、これも食べなさい。アスカの好物だろう?」と父上が手づから牛肉を取り分けてくれる。触れたとたんスッとナイフの刃が通り、スルスルと気持ちよく切り取られていく。我が家の肉はとても柔らかいのだ。俺はこれが普通だと思っていたから、学園の肉料理を食べて驚いた。味はともかく、食感がまるでゴムを噛んでいるようだったからだ。とにかく、ウチの味に慣れていた俺にとって食べられたものではなかった。噛んでも噛んでも消えないので、最後は無理やりに吞み下している。公爵家の肉は、口に入れるとほろりとほどけ、噛む必要がないくらいなのに。「ありがとうございます。……ああ、美味い」思わず幸せなため息が漏れた。この味だ。学園のあれば食事ではない。餌だ。これこそが食事というもの!「ああ、久しぶりに満足のいくものを食べた気が致します」と心からの笑みを浮かべる。するとそれを聞きとがめた母上が、心配そうな表情に。「アスカちゃん、学園できちんとお食事している?そんなにひどいの?」「……食べてはおりますよ?機械的に噛み下して飲み込めばいいのです。ここの食事が特別なのです。どこも同じようなものでしょう」そううそぶけば、絶句してしまった。お嬢様育ちの母上にはショックだったようだ。母上と父上が居た頃は、皆がこぞって父上と母上に忖度し、特別席にせっせとシェフに作らせた食事を運ばせていたという。一般の生徒が食べるようなものを食べたことなどないのだろう。俺もそうしようと思えばできなくもない。だが、有象無象に捕まるのも面倒なので、周りを排除し、一番早くできる「本日のメニュー」とやらでさっさと食事を済ませることにしている。ただそ
last updateLast Updated : 2025-05-17
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ゲームの世界

父上も母上も、俺が普通の子供とは違うことは分かっていたという。 「だって、ねえ?あなたは規格外すぎたもの。言葉もそうだけれど……幼児とは思えない落ち着きや、物言いだとかね?」「うむ。なぜか母に懐かずこの私に懐いていたことといい、神童というには余りある逸脱した知力と能力。何かあるのだというほうがしっくりくる。前世の記憶があると聞けば納得がいく」 俺からすると、父上と母上も十分規格外なのだが、その両親からしても俺は明らかに規格外だったようだ。 「お二人の子だから、ということで誤魔化されてくれているものとばかり……」 苦笑すれば、父上が呆れたように片方の眉を上げた。 「そこまで愚かだと思うか?我が息子のことなのだぞ?何があるにしろ、お前が私の愛する息子だということは変わらぬ。それでよいと思ったまで」「うふふ。そうね。あなたが何を抱えているにしろ、あなたは私たちの可愛い息子。理由はわからなかったけれど、あなたが幸せで元気でいてくれるのならそれでいいと思ったの」 慈しみに満ちた目で俺を見つめるふたりに、何も言えなかった。そうか。両親というものは、そういうものなのか……。俺のありのままを受け入れ、見守ってくれていた両親。改めて知った親の愛というものの深さに、胸が震えた。 「俺は……前世では親の愛に恵まれませんでした。両親と姉と俺という家族に生まれましたが、父は仕事のため家を出ており、母と姉は好き放題。金銭的に困ったことはありませんでしたが、幼い頃から俺が家事をやるしかなく、心許せる友をつくる暇もありませんでした」 母上が「まあ」とショックを受けたように口元を押さえた。泣きそうな表情で俺に駆け寄ると、そっと俺の背を抱きしめてくれる。 「……辛かったわね。なんという親なのかしら!使用人はいなかったの?」
last updateLast Updated : 2025-05-18
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