「綺麗過ぎる? えっと小猫、妓女なんだから化粧はするんじゃ?」 化粧は女性を変える。美しく、それでいて気品もある。それが化粧の魅力でもあった。 二人は女性ではないゆえに、化粧について詳しくはない。けれど女性が化粧を好むということは知っていた。 全 思風は、それについて何らおかしいところはない。きれいなのはいけないことなのかと、困惑気味に眉をへの字にした。 「これは姐姐に聞いたんだけど、女性は着飾る生き物らしいよ。全員がそうとは限らないけど……綺麗にすれば見栄えもよくなって、男性からの求婚も増えるんだってさ」 女の人の考えることはわからないよねと、彼の腕の中で考える。フグのように頬を膨らませ、あーでもないこーでもないとぶつくさ呟いた。 しばらくすると全 思風に鼻先をつままれ、ジタバタとする。 「思!」 「ふふ、ごめんごめん」 湿っぽい潮の香が飛ぶなか、華 閻李を床へと下ろした。 「……話を戻すけど、あの遺体は綺麗過ぎると思うんだよね。これは僕の勘でしかないけど」 櫓は少しばかり高い位置にある。そのせいか、風の影響を受けやすかった。 華 閻李の長く伸びた銀髪が、さらさらと揺れる。髪を押さえながら運河を見つめた。 「あの遺体がどこから来たのか。それだけでも、ハッキリしたかな」 確信めいたものを瞳に乗せ、櫓の柱へ凭れかかる。切れ長の目をした全 思風を見、どういう意味かわかるかと問うた。けれど彼はお手上げだ
Last Updated : 2025-04-21 Read more