大きな月が光を地上へ落とす|丑三《うしみ》つ時。逃げろと、誰が声あげた。
そこかしこから悲鳴が聞こえ、辺りは|阿鼻叫喚《あびきょうかん》を生む。
茶色の|革鎧《かわよろい》を着た兵たちが女子供を先導し、火の粉が上がる場から逃がそうとしていた。商人は大事な荷物を捨て、|一目散《いちもくさん》に駆け出す。
「──こっちだ! こっちはまだ安全だ!」
そのなかの一人、|革鎧《かわよろい》に鉄|槍《やり》を持った男がいた。彼は必死に皆を|誘導《ゆうどう》し、安全確保をしようと|躍起《やっき》になっている。そんな男が持つ|槍《やり》には、黒い|房《くさ》がついていた。
「さあ、早く中に!」
生き残っている者たちとともに三階へと逃げこみ、扉を閉める。
同じ|革鎧《かわよろい》を着た者たちとともに扉が開かないように、机などの物を重ねて廊下側へと押しつけた。
扉の外にある廊下からは、未だに悲鳴が|轟《とどろ》いている。時おりプツッという鈍い音、人とは思えぬ|雄叫《おたけ》びも耳に届いてきた。
建物の外を見れば、おびただしいほどの死体が転がっている。砂や雑草が見えていたはずの地面は|既《すで》になく、あるのは赤黒い|水溜《みずた》まりばかりであった。
行商人が乗ってきたであろう馬の頭部はなく、身体だけが転がっている。
「……っ! なぜ、こんな事に……!」
部屋の中を|注視《ちゅうし》すれば、逃げ|延《の》びた者たちが|震《ふる》えていた。女子供は泣き、農民の男たちは顔を青ざめさせている。
数名の|革鎧《かわよろい》を着た者たちは剣を手にしながら、どうしてこんなことになったのかと口々に語った。
「無事なのは我らだけか」
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それは、|青龍《せいりゅう》としての|神聖《しんせい》なる姿だった── るるると、|謳《うた》うかのような声で、青い|蛇《へび》が舌を出す。|蒼《あお》く輝く光を|纏《まと》いながら、少しずつ、目に見えるかたちで|身体《からだ》を大きくさせていった。 やがて手のひらには収まりきらぬほどに大きくなる。|鋭《するど》い|眼光《がんこう》で、|殭屍《キョンシー》をねめつける。『──るるるぅー!』 長い|胴体《どうたい》を宙に浮かせながら、口元にある二本の|髭《ひげ》をゆらゆらと。|額《ひたい》の左右にある白く輝く|角《つの》が、ときおり|蒼《あお》く発光していた。 青く、美しい|鱗《うろこ》を見せびらかすように、|堂々《どうどう》たる姿勢で|殭屍《キョンシー》へと近づく。 子供を捕らえている化け物の顔に息を吹きかけ、これまでかというほどに|瞳孔《どうこう》を見開いた。 瞬間、|殭屍《キョンシー》は土の中でもがき始める。手を離し、耳をつんざくほどの|雄叫《おたけ》びをあげながら『い、だぁ、いぃーー!』と、悲痛を|訴《うった》えていた。 目、鼻、口、そして耳。穴という穴から|煙《けむり》のようなものを出し、両目から血の涙を流す。「るるるーー!」 それでも|青龍《せいりゅう》は容赦なく、土の中にまで息を吐きちらした。 すると土が大きく|盛《も》り上がり、|殭屍《キョンシー》が外へと|這《は》い上がっていく。けれど|皮膚《ひふ》は|爛《ただ》れ、溶けてしまっていた。身体の一部の骨が見えてしまってもいる。 |殭屍《キョンシー》はふらりと身体を前のめりさせ、見えているのかさえわからかい目を向けた。 |青龍《せいりゅう》は子供を化け物の視界から隠すように、子供の前で浮く。鈴虫のようにゆったりとした鳴き声を放ち、|殭屍《キョンシ
死者の魂を|蹂躙《じゅうりん》し、従える。それが|冥界《めいかい》の王である、|全 思風《チュアン スーファン》がなさねばならぬことであった。けれど彼はそれを選ぶどころか、|放棄《ほうき》しているもよう。 人間たちの暮らす世界とは真逆で、光すら当たらぬ暗き|國《せかい》。じめじめとした空気を常に|纏《まと》い、そこに住まう何かしらが、彼へ|媚《こび》を売る。 冥界とは、そんな場所だった。 ──あそこにいる者たちは私自身などではなく、王としての地位しか見ていない。欲しいのならくれてやる。そう|謂《い》っても、誰も私を倒そうとしない。挑戦すらしてこないんだ。 そんな場所に未練などありはしない。あるのは、つまらない日々だけだった。けれど……「──私のそんな日々を変えてくれのは、あの子だ。だから私は、あの子を|護《まも》るためなら……」 悪魔にでもなろう。 低く、|凪《なき》がざわつくような|響《ひび》きで、目の前にいる者たちへと忠告する。剣の切っ先を彼らへと向け、美しくも残酷な笑みを浮かべた。 軽く地を|蹴《け》り、一番近いところにいる第三級らしき|殭屍《キョンシー》の首を|跳《は》ねる。「私の|小猫《シャオマオ》を狙うというのならば、容赦はしない」 後悔しろと、片足で地を踏んだ。 □ □ □ ■ ■ ■「──|思《スー》さんたち、大丈夫かな?」 荷車の中で待つのは|儚《はかな》い|見目《みめ》の少年、|華 閻李《ホゥア イェンリー》である。 子供は頭に|蝙蝠《こうもり》、|襟《えり》の中に青い|蛇《へび》こと|青龍《せいりゅう》を。仔猫のような姿をした|白虎《びゃっこ》を抱きしめ、荷車の|隅《すみ》に身をよせて
|殭屍《キョンシー》が走る。 そんな状況を見て、|全 思風《チュアン スーファン》は眉を曲げた。腰を上げて腰にかけてある剣の|柄《つか》へと触れる。「……あいつらが走るなんて、|前代未聞《ぜんだいみもん》だな」 ほくそ笑みながら荷台から飛び降りた。馬をひくために前にいる|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》に目配せし、互いに|頷《うなず》く。 |瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》は馬を落ち着かせると、急いで彼の隣に立った。|袖《そで》の中から札を取りだし、走ってくる|殭屍《キョンシー》たちへと投げつける。 札は、次々と|殭屍《キョンシー》たちの額に貼りついていった。「これで安心……っ何!?」 ホッとしたのも|束《つか》の間、額に貼られた札は次々と落とされていく。それも化け物自らが手を伸ばし、|剥《は》がしていたのだ。 なぜそんなことができるのか。ふたりは|驚《おどろ》き、眉間にシワをよせた。それでも|経験豊富《けいけんほうふ》な彼らは|怯《ひる》むことなく、それぞれが行動を開始する。「……嫌な予感しかしないけど。|排除《はいじょ》はさせてもらうよ」 |全 思風《チュアン スーファン》の声がその場を駆け巡った。 地を蹴りながら腰にある剣を抜く。|磨《みがか》かれた鏡のように彼の姿を映す|鋼《はがね》は容赦なく、|眼前《がんぜん》の者たちを|斬《き》り|刻《きざ》んでいった。 手首を軽くひねり、剣で下から上へ。|空《くう》を裂いていった。そのときに出た風圧が後方にいる|殭屍《キョンシー》たちにまで|及《およ》び、化け物たちを吹き飛ばす。 |咄嗟《とっさ》に黒い|焔《ほのお》で階段を作った。宙へと放置した|殭屍《キョンシー》たち目がけ、剣を振り下ろしては、|血
行き先が決まって一時間ほどたつと、|京杭《けいこう》大運河の頭が見えてきた。 そこで|獅夕趙《シシーチャオ》こと|黒 虎明《ヘイ ハゥミン》と別れを告げ、|全 思風《チュアン スーファン》たちは再び荷馬車を走らせる。 ガラガラと、荷馬車は砂利道を進んだ。|京杭《けいこう》大運河を横に見下ろしながら、川沿いをゆっくりと前進する。 ひと気はなく、あるのは山や草木といった大自然ばかりだ。ときどき鳥の鳴き声が|轟《とどろ》くが、平和を絵に描いたような静けさがある。「──ここ最近の忙しさに比べたら、だいぶのんびりと出来そうだね」 ねえ|小猫《シャオマオ》と、子供へ声をかけた。けれど少年は白い仔猫たちに夢中になっているようで、彼の声など届いていないよう。ひたすら動物たちと|戯《たわむ》れ、きゃっきゃっと、楽しげだ。「ね、ねえ|小猫《シャオマオ》? ほら、私の膝の上に……」「やだ」「そ、そんな事、言わないでほら……」 |空《むな》しいまでに両腕を広げる。けれど子供の興味は、完全に彼から離れてしまっていた。 「…………」 彼は微笑みを|絶《た》やさないまま、腕を引っこめる。さらには落ちこんでしまい、部屋の|隅《すみ》で|膝《ひざ》を抱えて【の】の字を書いていた。グスッと鼻をすすり、口を|尖《とが》らせる様には強者の面影は|微塵《みじん》もない。 ──動物どもめ! 私の|小猫《シャオマオ》を一人|占《じ》めしおって! |憎《にく》い。あいつらが憎い! |華 閻李《ホゥア イェンリー》へ向けている愛
夜になると|全 思風《チュアン スーファン》たちは|焚《た》き火を囲んで、これからについて話し合っていた。 彼の膝の上には|華 閻李《ホゥア イェンリー》がおり、|逞《たくま》しい腕に包まれながら食事をしている。 そんな子供の横には、大量の食材が山のように積まれていた。焼き魚はもちろん、町で仕入れたごま団子や|包子《パオズ》など。どう考えてもひとりでは食べきれないであろう量の食材たちだ。けれど少年はそれらをもろともせず、次々と平らげていく。「……い、|閻李《イェンリー》、それは私たち四人ぶんの、一日の食品だぞ?」 町に情報収集へ|赴《おもむ》いていた|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》は、ついでにと一日ぶんの食品を買いこんでいた。 最初はそれらを少しだけ置き、皆で食べていた。けれど子供のお腹の虫が収まることはなく……さしもの彼ですら、子供の純粋な眼差しには勝てなかったよう。諦めのため息とともに、全ての食品を差し出すことになったのだった。 そんな|経緯《けいい》のある食品は、あっという間に半分以下になってしまう。「……うん、あいかわずの食べっぷりだね?」 子供の、無限の胃袋に慣れている|全 思風《チュアン スーファン》ですら苦笑いをするしかなかった。旅の途中でそれを知った|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》と顔を見合せ、肩をすくませる。 |黒 虎明《ヘイ ハゥミン》だけは子供の胃袋事情を知らないため、絶句していた。 数分たつと、山盛りだった食品がきれいさっぱり消えていた。全てを食べ終えた子供はお腹をさすりながら、椅子代わりにしている彼を軽くつつく。「ん? どうしたの|小猫《シャオマオ》?」「おやつ、ない?」「まだ食べるつもりなのかい!?」 底なし胃袋を撫でながらおやつをねだる子供は、とてもかわいらしかった。 けれど彼も、食品を買ってきた|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》ですら首を強くふって何も残ってないと口々に伝える。 「……そっか。じゃあ、我慢する」 口を|尖《とが》らせた。 聞き分けのよい子供に、誰もがホッとする。 ふと、子供が小さなあくびをした。両目をこすり、頭が|振子《ふりこ》のようにグラグラ揺れている。「|小猫《シャオマオ》、眠たいのかい?」「……う、ん」 両目がとろんとし、|芳《かんば》しくない受け答えだ。 彼は子
るるるっと、かわいらしい鳴き声を喉から出すのは青い|蛇《へび》だ。後ろには、白い毛並みに|横縞《よこじま》模様の仔猫がいる。 仔猫はぐったりとしており、鳴き声はとても弱々しかった。『……るるるっ!』 青い蛇は口を開き、長い舌を見せる。獣らしい|瞳孔《どうこう》で真正面を凝視した。ギロリと、鋭い眼差しが向かうのは二匹の獣である。 一匹は|亀《かめ》のような|甲羅《こうら》を背中にしょっている、尻尾が|蛇《へび》になっている生き物だ。 その隣にいるのは深紅の翼をはためかせた、美しい鳥である。『るる!』 そんな二匹に、青い蛇が怒っているかのように舌を伸ばした。瞬間、鳥が亀の甲羅を足で掴み、どこかへと飛び差ってしまう。 取り残された仔猫と青い|蛇《へび》は、無言で二匹が消えていった先を見つめた。 仔猫が傷を負いながらも必死に起き上がろうとすると、青い蛇は慌てて止めようとする。そんな彼らの目には大粒の涙が|溜《たま》まっていた。次第に仔猫の方が|我慢《がまん》できなくなり、にゃあにゃあ鳴いてしまう。 青い蛇はおろおろと、子供をあやそうと必死だ。けれど仔猫は鳴き止むことはない。 青い蛇は自慢の身体の色が|霞《かす》むほどに、顔色を悪くしていった── † † † † ホーホーと、どこからか|梟《ふくろう》の鳴き声がする。鳴き声に反応するかのように、|華 閻李《ホゥア イェンリー》の|瞼《まぶた》がピクリと動いた。 その動きにいち早く気づいた|全 思風《チュアン スーファン》は、そっと子供の顔をのぞく。
|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》と|黒 虎明《ヘイ ハゥミン》がふたりへと近づいてくる。大丈夫なのかと問いかけては、子供の寝顔を見て胸を撫で下ろしているようだ。 そんな彼らに応えるように、|全 思風《チュアン スーファン》は軽く|頷《うなず》く。「……体力を使い果たして、今は眠ってるだけだよ」 腕の中ですやすやと寝息をたてる少年に、優しい笑みを送った。汗のせいで額に貼りついた子供の前髪をそっと横に|退《ど》かし、周囲を見渡す。 戦闘の|跡《あと》が地面、建物などに残っていた。主に|黒 虎明《ヘイ ハゥミン》が暴れたのか……彼の持つ大剣で|削《けず》った跡が多く見られる。 ──何でこいつ、こんなに|猪突猛進《ちょとつもうしん》なんだ。 |殭屍《キョンシー》になっていた町の住人たちに|哀《あわ》れみすら覚えるような|惨状《さんじょう》となっていた。 肝心の住人たちは皆、人間の姿へと戻っている。なかには目覚めている者もおり、徐々に騒がしくなっていった。 このままここに|留《とど》まれば、要らぬ質問攻めに合うのだろう。そう考え、彼は|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》たちに場所を移そうと提案した。彼らも同じ考えだったようで、|賛同《さんどう》している。「……とりあえず、林の中に行こう」 彼の提案に、ふたりは|頷《うなず》いた。 |瞬刻《しゅんこく》、|瑛 劉偉《エイ リュウウェイ》が腰にぶら下げている八卦鏡(パーコーチン)に変化が現れる。鳴ることはないはずのそれからは、鈴の音のようなものが聞こえてきた。次第に大きくなり、八卦鏡(パーコーチン)の紐はブツッと切れてしまう。「……これはっ!?」
|全 思風《チュアン スーファン》が腕に抱える愛しい子は、疲れたように眠っていた。すうすうと、待ち望んだ子の寝息、細い髪、そして美しい顔。そのどれもが彼を、彼として|繋《つな》ぎとめる材料となっている。 ──全て解決とは言えない。むしろ、謎が追加されちゃったぐらいだ。それでもこの手にある温もりは、絶対に夢ではない。 心の底から、|愛《いと》しい子供を取り戻したのだと実感した。己の腕の中で眠る子供の|額《ひたい》、右の手のひらへと甘い吐息を落とす。 |独占《どくせん》欲の|塊《かたまり》であるかのように、子供の全てを目に入れた。 けれど彼の表情は晴れず、むしろ雲っている。「どんなに君を愛したとしても、私が|小猫《シャオマオ》の両親を殺してしまった事に変わりはない。例え故意じゃなかったとしても、そんなの言い訳でしかない」 ごめんねと、一度は引っこんだはずの|雫《しずく》が、頬を|濡《ぬ》らした。 それでも今すべきことは何か。優先しなくてはならないのは自分の感情ではなく、|愛《いと》しい少年の幸せなのだと、心の中で言い聞かせた。 無理やりこじ開けた|蘆笛巌《ろてきがん》から外へと一歩踏みこむ。淡々とした瞳で黒き階段を造り、空高く登っていった。 空を見れば来たときはまだ太陽が昇っていたのだが、今は月に変わっている。「──ああ。いつの間にか、夜になってしまったね」 どれだけの時間、再会の喜びに|浸《ひた》っていたのだろうか。気の遠くなるような……けれどあっという間の、嬉しくて|哀《かな》しい時間だった。 自ら|造成《ぞうせい》した道をゆっくりと進む。やがて近くにある町の上空へと差しかかった。 見下ろした先には死者だけが這いつくばっている。体力や力が|自慢《じまん》であろ|黒 虎明《ヘイ ハゥミン》は、ふらつきながらも
黒の|横縞《よこじま》模様の猫は、その場にちょこんと座った。前肢をペロペロと|舐《な》め、長い|尻尾《しっぽ》をふりふりとしている。 |全 思風《チュアン スーファン》はそれを見下ろしながら、向こう側にいる大切な子供へ想いを|馳《は》せた。 ──この|白虎《びゃっこ》、何がしたいのか。まったくわからない。言葉が通じないのも困りものだ。それよりも|小猫《シャオマオ》だ。あの子の無事な姿を確認しなきゃ。 |白虎《びゃっこ》を持ち上げ、ふさふさな毛を|堪能《たんのう》する。数秒後に猫を下ろし、ひんやりとする壁に手を当てた。「|小猫《シャオマオ》。もしも近くにいたのなら下がっててくれないかい?」「え? 何、するの?」 幼い声が|響《ひび》く。壁の向こう側からする子供の声に|怯《おび》えが混じっているようで、|震《ふる》えているように聞こえた。 それでも彼は「大丈夫だから」と、ひたすらに|口述《こうじゅつ》し続ける。耳を済ませば|微《かす》かだが、服が|擦《こす》れるような音がした。「……下がったかい?」「う、うん」 優しく|諭《さと》しながら腰にある剣を抜く。 ──こういう場所で大きな音を立てれば、下手をすると天井ごと|崩《くず》れるだろう。だけど|壁《かべ》を|壊《こわ》す以外の方法がない。だったら……「そこに|蝙蝠《こうもり》がいるよね? |小猫《シャオマオ》は、そいつに従ってくれればいいよ」 そう言うと、向こう側から「キュッ!」というかん高い鳴き声がした。 ──きっと今、|小猫《シャオマオ》は|怯《おび》えているだろうな。それに