蒼真が療養院に駆けつけた時、ごった返す人混みの中に、一目で、苑の姿を見つけた。数人の、ひどく柄の悪い男女が、苑を取り囲んでいた。「どきな。あんたには関係ねえことだ。これ以上、首を突っ込むなら、容赦しねえぞ」「今日、このお節介は、最後まで焼かせてもらいます。関さんに、指一本でも触れられるものなら、やってみなさい」苑の、整った顔には、一切の恐怖の色はなく、その瞳の涼やかさは、普段よりも、さらに増していた。蒼真は、ここへ来る道すがら、すでに状況を把握していた。この関さんという老人は、三人の息子と一人の娘がいるにもかかわらず、長年、この療養院で暮らしている。子供たちが、皆、彼を厄介者扱いし、面倒を見たがらないからだ。関さんには退職年金があり、療養院での暮らしも、快適で、自由だった。だが、半年前、関さんの古い家が、区画整理で、六千万以上の立ち退き料になった。その日から、関さんの平穏な日々は、終わった。息子の一人が、子供の結婚の結納金が必要だと言って金を借りに来たり、もう一人の息子が、娘の大学の学費が必要だと言う。誰もが、もっともらしい理由をつけて、関さんの金を、根こそぎ奪い取ろうとしていた。関さんは、ここ数年で、子供たちの本性を、すっかり見抜いていた。誰が、どんなにもっともらしい理由で金をせびりに来ようと、関さんは、一銭たりとも渡さなかった。この金は、この療養院で、自分の命を繋ぐために使うのだ、と。子供たちが、それで納得するはずがない。そこで、揃って押しかけてきて、関さんを連れ帰ろうとしたのだ。金を分け与えれば、今後は、自分たちが、交代で面倒を見る、と。関さんは、すべてお見通しだった。関さんは、断固として、同意しない。そこで、子供たちは、関さんを、無理やりにでも連れて行こうとした。苑は、それを見ていられず、割って入った。そして、目の前の光景が、繰り広げられたというわけだ。挙句の果てに、何人かは、苑に下心があるのだとまで言った。関さんの金を狙って、彼の養女にでもなろうとしているのだ、と。「あのじいさんは、関だ。あんたは何て苗字だ。家族じゃないあんたに、そんな口を利く権利があんのか?」関さんの娘は、いかにも、意地悪そうな顔をしていた。「今日、じいさんを連れて帰らせたくね
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