Semua Bab 愛も縁も切れました。お元気でどうぞ: Bab 381 - Bab 387

和人は苑が全く自分を相手にする気がないのを見て心中焦り、はっと手を伸ばして閉まりかけた車のドアを押さえた。「苑！」島崎和人の声にはどこか焦りがあり、さらにはかすかな懇願さえあった。「君が拉致されたことは知っている。父さんが焦っていなかったわけではない、あの島崎葵という狂った女にスイスで閉じ込められていたんだ！私が駆けつけた時にはもう君は……」苑の指が車のドアハンドルを固く締め付け、指の関節が力を入れすぎて白くなった。苑はゆっくりと顔を上げ、眼差しは氷で研いだかのように冷たい。「それで？あなたは今、父性愛を示しに来たとでも？」和人は苑の言葉に刺されて一瞬固まり、喉仏が動いた。声が低くなる。「父さんはただ君に伝えたかっただけだ。これらのことは私が親族を認めることと関係があるかもしれないと……」「あなたの説明は必要ありません」苑は冷ややかに彼を遮った。「小さい頃から、とっくに誰にも頼らないと学びました」島崎和人は苦笑し、複雑な眼差しで苑を見た。「そこは、君は本当に君の母親によく似ている」「母のことを口にしないで！」苑の声が驟然と高くなり、周りの何人かの通行人が横目で見た。島崎和人にそんな資格はない！苑は深呼吸をして込み上げる感情を抑え、声を極限まで低くしたが、一言一句が刃のようだった。「母の死は事故ではありません……この件があなたと関係ないことを願います」島崎和人の顔色が一変し、目の奥に一抹の痛みがよぎった。「苑、私がどれほど人でなしでも、君の母親に手を出すはずがない！」「そうですか？」苑は冷笑し、目の奥の憎しみは刃のように鋭かった。「彼女の死があなたと一切関係ないと誓えますか？」和人はまるで全身の力を抜かれたかのようだった。指がわずかに震え、最終的に力なく車から手を離した。和人は低く言った。「そうだ……私が彼女を死なせた」和人が直接手を下したわけではないが、綾香は和人が原因で死んだのだ。苑の胸が激しく上下し、苑ははっとドアを閉めた。声は氷のように冷たい。「今田さん、車を出して」黒いセダンはそのまま走り去り、和人はその場に立ち尽くし、呆然と車が車流の中に消えもう見えなくなるまで見つめていた。執事の中田辰己（なかたたつみ）が後ろから近づき、

和人は軽く笑い、目の奥に珍しく温かい色が浮かんだ。「後にご当主様に見つかり、私は一晩中祠堂でひざまずかされた。お前はまだこっそり俺に食べ物を届けてくれたな」「島崎様は記憶力がよろしいですね」辰己もつられて笑ったが、すぐにその笑みはまた淡くなった。「中田、ここ数年……ご苦労だった」彼の肯定に辰己の心は震え、ハンドルを握る手がわずかに締まった。「旦那様、そのようなことをおっしゃらないでください。これは私がすべきことです」和人は首を振り、声は掠れていた。「すべきことなど何もない。お前は本来ならそこまで尽くす必要はなかった」辰己はしばらく黙り、軽く言った。「旦那様、この命は島崎家からいただいたものです。私は孤児で、当時ご当主様が私を拾ってくださらなければとっくに道端で餓死していました」「だがここ数年、私はお前に多くの……日の目を見ないことをさせた」彼の反省の言葉を聞き、辰己の表情は依然として落ち着いていた。「旦那様がご命令なさることなら、私は何でもいたします」和人は目を開け、横を向いて彼を見た。目には探るような色があった。「たとえそれが間違っていると分かっていてもか？」辰己はすぐには答えなかった。車が交差点を通り過ぎ、薄暗い街灯の光が彼の顔をかすめ、かすかに目尻の歳月の痕跡を映し出した。中田はようやくゆっくりと口を開いた。「旦那様、人はこの一生で必ず一人命懸けで尽くす人がいるものです」島崎和人はじっと辰己を見ていた。不意に笑った。その笑みにはどこか苦々しさがあった。「中田よ……お前は私よりずっと悟っている」辰己は首を振った。その口調には慰めがあった。「旦那様はただ……どうしようもなかっただけです」辰己がまだ自分に言い訳を探しているのを聞き、和人は低く笑った。「どうしようもない？ただの懦弱な言い訳に過ぎない」島崎和人は一度言葉を切り、声が次第に冷たくなった。「だが今回は私はもう譲らない」辰己はバックミラーで和人を一瞥した。彼の決意を見て取ったのか、多くを言っても無駄だと分かりもう何も言わなかった。車が島崎家の荘園に入っていく。和人は窓の外の慣れた景色を見ていたが、心には何の波乱もなかった。「中田」車を降りる前、島崎和人は最後に言い

苑は淡々と微笑み、その話には乗らなかった。紗由美は苑を見て、探るように尋ねた。「苑、ねえ……もし私が今田グループの方へ行きたいと言ったら、チャンスはあるかしら？」苑は顔を上げて紗由美を見た。「転職したいの？」紗由美は頷いた。「朝倉グループは今、雰囲気悪くていて、面白くないわ」苑はゆっくりと茶を一口飲んだ。「もしあなたが慎介さんという『命網』をしっかり掴めば、今田グループへ行くのはきっと問題ないわ」紗由美の顔が赤くなった。「苑！」「もし本当に、行きたいなら、慎介さんに推薦してもらえば問題は大きくないはずよ」紗由美の目が輝いた。「本当？」「ええ」苑は頷いた。「でも今田グループは君が思った以上複雑なんだよ。自分でよく考えなさい」紗由美はにやにやと苑の腕を組んだ。「あなたがいるのに何を怖がることがあるの？」苑は笑って何も言わなかった。二人はしばらく話し、紗由美は家からの電話で先に帰った。苑は時間を見た。もう八時半だった。苑は立ち上がって会計を済ませ、タクシーで病院へ向かった。蒼真は最上階の高級VIP病室にいた。視野は極めて良く、病院全体が一望できる。苑がドアベルを押すと、すぐにドアが開いた。蒼真はドアの前に立ち、体にはただ一枚の薄い病衣を着ており、襟元はわずかに開かれ、鎖骨と一部の包帯が覗いていた。蒼真の髪はまだ少し濡れており、シャワーを浴びたばかりだった。「七分遅刻だ」蒼真は淡々と言った。苑はドアを入ると、ついでに閉めた。「道が混んでいました」蒼真は何も言わず、ただ手を伸ばして苑を腕の中に引き寄せ、頭を下げてキスをした。そのキスにはどこか横暴な意味合いがあった。苑は蒼真にドアに押し付けられ、ほとんど息もできなかった。一吻が終わり、蒼真の親指が苑の唇の端を擦った。声は低い。「ハニー、一日ぶりだな」一日千秋の思い。蒼真は苑に会いたかったと言っているのだ。苑の耳の根元がわずかに熱くなり、蒼真を押しのけた。「あなたの傷はまだ治っていないのですから、むやみに動かないでください」蒼真は軽く笑い、苑を引いてソファのそばへ座らせた。「用事は済んだのか？」「ええ、順調です」苑は簡単に今夜の状況を話した。「

苑の唇の端が上がり、不意にいたずら心が湧き、振り返る時わざと足をくじいた。苑の異常を見て、その男の筋肉が瞬間的に固く強張り、右手は無意識に腰へ伸びたが、苑が立ち直るのを見てまた何事もなかったかのように手を離した。やはり蒼真が派遣した人間だ。緊張した時の銃を触る癖まで蒼真とそっくりだ。苑はそれを暴かず、指摘もせず、ただ知らないふりをして前へ歩き続けた。角を曲がる時、苑は不意に歩を速め、身を翻して一軒のコンビニへ隠れた。棚の後ろに立ち、ガラス窓を通して苑はそのボディガードが慌てた様子で追いかけてきて、人混みの中で四方八方を見回しているのをはっきりと見た。「蒼真が派遣した人間はなかなか忠実ね」苑は軽く笑って独り言を言い、相手が遠くへ行ってからゆっくりとホテルへ戻った。万世のプロジェクトは順調に進み、提携先の責任者である江口淳也社長は苑の実力を絶賛した。ある重要な方案報告会で、苑は正確なデータ分析と独自の市場見解で万世の最も手強い数人の董事を説得することに成功した。「白石さん、契約にいくつか不明な点があります。もしお忙しくなければオフィスで詳しくお話ししませんか？」会議が終わり、苑が去ろうとした時、誰かに呼び止められた。オフィスで、江口社長は意味深長に口を開いた。「白石さん、あなたのような人材が今田グループにいるのはもったいないです。いっそ私たちの万世へ来ませんか？条件はあなたの言い値でいいですよ」苑は礼儀正しく笑った。「江口社長のお心遣いに感謝します。ですが私は今田グループでなかなか快適に過ごしておりますので」江口社長は諦めず、また探るように尋ねた。「白石さんは本当に、もう一度お考えにならないのですか？こちらでは副社長の地位をご用意できます。年俸は今の二倍です」苑が答えようとした時、一つの澄んだ男の声が割って入った。「父さん、ご本人が望んでいないなら無理強いするのはやめましょう」一人の濃い青色の高級オーダースーツを着た若い男が入ってきた。男はおよそ二十七、八歳に見え、すらりとした長身で顔立ちは端正で、立ち居振る舞いには温文な優雅さが漂っていた。自分が最も誇りに思う息子を見て、江口社長はははと笑った。「良樹が来たか。来い、紹介しよう。こちらが今田グループの白石補佐だ」江口良樹