綾は誠也の方を向くと、軽くため息をついた。「あなたの大事な息子のせいよ」誠也はきょとんとして聞き返した。「安人は、彼女を口説きに行ってるんじゃないのか?」「ええ、その通りよ!」綾はフンと鼻を鳴らした。「だけど、付き合った途端に、女の子を海外に連れ回して、おまけに」綾はあの子のことを気遣って、それ以上はっきり言うのをためらった。そして、彼女は言葉を選んで続けた。「ただ、あの子はまだうぶだから心配なのよ。安人が、ちゃんと女の子を守るってことを分かっているのかしら?」誠也は少し考えて、ようやくその言葉の裏にある意味を悟った。彼は困ったように口元を緩めた。「俺たちの息子が、そんな基本的なことも知らないはずないさ。お前は心配しすぎなんだよ」綾は眉をひそめ、誠也を見た。「本当に、私が心配しすぎなだけかしら?」「俺たちの教育に自信を持ってよ」誠也は妻を抱き寄せ、優しく諭した。「安人は昔から賢い子だ。それは俺たちがちゃんと教えきたのもあるけど、元々の性格もある。あの子は昔から、自分が大切にしている人たちに強い責任感を持ってるだろ。その気持ちがあれば、理性を失ったりはしないさ」綾は夫の言葉に頷いたものの、まだ不安は拭えなかった。逆に今まで苦労してきた環境で育った桜が、自分に自信が持てず、安人を好きだという気持ちだけで、何でも彼の言う通りになってしまうんじゃないかと心配で堪らなかったのだ。そして、綾は今や、陰で桜を支える立場でもあるから、仕事でも、もっと成功してほしいと願っているのだ。それと同時に、未来の姑になるかもしれないからこそ、心からあの子を案じていた。精神的に自立するまでは、結婚だけが人生のゴールだなんて思ってほしくない。女の子は、どんな時だって、まず自分を愛して強くならなくちゃいけないのだ。そこまで考えると、綾は言った。「ねえ、あなた。こういう話は母親からはしにくいから、安人に話してくれない?遠回しでいいの。女の子をちゃんと守れって念を押してちょうだいよ。だってあの子はまだ未熟で、成長が必要なのよ。だから安人にも彼女を守れるような立場になって欲しかった。すぐに結婚して子供を作るのはやっぱり避けたいのよ」これを聞いた誠也は、呆れたように笑った。「お前なあ、若い連中は有り余るくらい元気なんだ。少しくらい羽目を外すのが
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