悠翔はうつむいた。確かに、安人の言う通りだ。彼は、どうしても芸能人になりたいわけじゃない。それに芸能人って、結構面倒くさいのだ。外に出るだけで完全防備しなきゃいけないし、自由なんてまったくないから。今まで頑張ってこれたのは、すべて桜のためだった。でも今、桜は安人と付き合っている。だから彼も一瞬にして目標を失ったようだ。なにより、安人が遊びで付き合うような男ではないことを悠翔自身が一番分かっているのだ。彼が桜を選んだからには、きっと結婚まで考えているのだろう。百歩譲って、もし将来、安人と桜が別れたとしても……二人がかつて恋人だったという事実がある以上、悠翔は自分と桜が付き合うことはないだろうと思った。胸の奥が少しチクリと痛んだけど、思ったほど辛くはなかった。もしかして優希が言ったように、桜への執着や好きっていう気持ちは、ただのファン心理だったのだろうか。結局、悠翔は安人の条件をのむことにした。去り際に、安人は念を押した。「桜には余計なことを言うなよ。優希と俺の母さんにはもう会わせたけど、あいつはまだ二人が俺の家族だって知らないんだ。母さんが輝星エンターテイメントの会長だってことも、絶対に口を滑らせるな」悠翔は納得がいかない。「なんで隠すんだよ?あなたたち、桜のことが嫌いなわけじゃないだろ!」その言葉を聞いて、安人は軽く笑った。「だから優希にお子ちゃまだって言われるんだ。お前には何も分かってない」悠翔は言葉を失った。お前は腹黒いから、さぞかしわかっているだろ!……それから安人は悠翔の部屋を出ると、桜の部屋へと向かった。エレベーターの前を通りかかったとき、ちょうどドアが開いた。エレベーターから咲希が出てきた。その後ろには、大きなスーツケースを二つも引くアシスタントがいた。悠翔や桜の完全防備な姿と比べて、咲希の格好はいつも派手で目立つものだった。整形をした顔には完璧なメイクが施されている。全身ブランド品で固め、ピンヒールを履いている姿は、いかにも勝ち気な雰囲気だった。こうして二人は廊下で鉢合わせた。安人は足を止め、レディーファーストの精神で咲希とアシスタントを先に通そうとした。おそらく、咲希はこんなに背の高い男性に会ったことがなかったのだろう。彼女は思わず顔を上げて安人を見つめた。そ
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