悠翔はスーツ姿で、髪も少し短くしていた。どことなくビジネスマンらしい雰囲気をまとっていた。「俺は出張でね」悠翔は桜を見て言った。「君はどうしてここに?」「音楽番組の撮影です」桜はあたりを見回した。「急な豪雨で帰れなくなって、ロケ班が部屋をおさえてくれたんですけど、安人がどうしてもこのフロアの部屋がいいって言うから……」「いかにも彼らしいな」悠翔は笑った。「安人さんは、君のこと、目の中に入れても痛くないくらい大事にしてるからね」桜は頬に手を当てた。「他のタレントさんに見られて、特別扱いされてるって思われちゃうから困ってます」「自腹で部屋を変えたんだから、文句を言われる筋合いはないさ」悠翔は少し間をおいて言った。「俺も今日、星城市に帰る予定だったけど、この豪雨じゃあ仕方ない。もう一泊するしかないよ。せっかくだから、今夜は俺が奢る。ルームサービスにする?それとも下のレストランの個室で食べるかい?」「エレベーターで他のタレントさんと会うかもしれないから、ルームサービスにしません?」桜は言った。「岡崎さん、もしよかったら私の部屋で食べるのはいかがですか?」「いいね。君は今や超人気者なんだから、外では確かに気をつけないとね!」「では、どうぞ!」桜は笑顔で悠翔を部屋に招き入れた。悠翔はにこりと笑って、桜のあとについて部屋に入った。……一方、安人は会議を終えてオフィスに戻ったところ、個人のスマホのライン電話が鳴った。桜専用に設定している着信音だ。安人はスマホを取り出すと、オフィスのドアを閉め、ロックを解除してビデオ通話に出た。「やあ、久しぶりだね、安人さん」画面の向こうに、悠翔の整った顔が大きく映し出された。それを見た、安人は一瞬黙ったあと言った。「なんでお前なんだ?」安人はデスクの前に座ると、眉をひそめ、あからさまに嫌な顔をした。「お前の顔なんて見たくない。俺の奥さんにスマホを返せ」「ひどいな、奥さんができたら、こっちはもう用済みかよ!」悠翔は皮肉たっぷりに言った。「前に桜さんのことをよろしくって頼んできたときは、そんな態度じゃなかったくせに!」安人は冷めた表情で悠翔の言葉を無視し、ただ尋ねた。「桜はどこだ?」「ここにいるよ!」悠翔は呆れたように言い、安人のデレデレぶりに我慢ならないという様子で、
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