綾は少し驚いたが、すぐに言った。「すぐに佐藤先生に電話して、運転手にあなた達を病院まで送ってもらうようにするから」「分かりました」「入院準備は忘れずに。私は直接病院に行くから、そこで合流しましょう」「はい、分かりました!」電話を切ると、綾は佐藤グループ病院へ向けて車を走らせた。雨の日は道路が至る所で渋滞していた。丈に電話した後も心配で、綾はまたすぐに雲にも電話した。雲はすぐに電話に出て、既に病院に向かっている途中だと言った。電話越しに、若美の苦しそうな叫び声が聞こえてきた。綾は雲にスピーカーフォンにするように頼み、運転しながら若美を落ち着かせようとした。......病院に到着すると、綾は車を停めて、産婦人科へと急いで走った。若美は既に分娩室に運ばれていて、丈が外で待っていた。雲は傍にいて、服には血痕がついていた。「どうですか?」丈は深刻な面持ちで言った。「少し出血していて、今、陣内先生が中で検査しています。詳しい状況はまだ分かりません」「確かもう予定された出産日間近ですよね」綾は呼吸を整えながら、丈を見た。「これまでの検査は順調だったし、大丈夫でしょう?」丈は首を横に振った。そして何か言おうとした時、分娩室のドアが開いた。看護師が出てきて、言った。「急産で、第二度会陰裂傷です。でも、病院に早く着いたので大事には至りませんでした。女の子で、3150グラムです。赤ちゃんは羊水を少し吸い込んでしまったので、新生児科に搬送しました。産婦さんは今、縫合中で、2時間様子を見て問題がなければ病室に移れます」それを聞いて、綾と雲は共にほっと一息ついた。......2時間後、若美の経過観察が終わり、綾が手配しておいた個室に移された。若美は病室に移されてまもなく目を覚ました。目を開けると綾の姿が見え、若美は微笑んだ。「綾さん」「若美、おめでとう。女の子よ」綾は彼女の青白い顔を撫でた。「頑張ったわね。赤ちゃんは生まれる時、少し羊水を吸い込んでしまったから、新生児科で数日様子を見る必要があるの。心配しないで。佐藤先生が確認してくれたけど、今のところ赤ちゃんは元気よ」「だから、泣き声が聞こえなかったんですね......」若美の目は少し赤くなっていた。「綾さん、今、北条先生が見えたような気がしました
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