R市。プレジデンシャルスイートルーム。綾はドレッサーに座り、スキンケアをしていた。ノックの音が響いた。綾は立ち上がり、ドアを開けた。ドアの外には、腕組みをして立っている大輝がいた。「一緒に映画を見ませんか?」綾は少し驚いた。「どんな映画ですか?」「過去の名作のリニューアル作ですよ」綾は時計を見た。まだ10時前だ。しかし、彼女は退院してからずっと、規則正しい生活を送っていた。しかも、大輝が選んだこの映画は......そう思うと綾は大輝に軽く微笑んで言った。「すみません、もう寝る時間なんです」「冷たくないですか?」大輝は呆れたように笑った。「ただの映画でしょう?私をまるで変質者みたいに警戒しているみたいで、これでも傷つくことはありますので」「石川社長の人柄は信じているんです。でも、本当に休まなきゃいけないんです」綾は真面目な口調で言った。「せっかく命拾いしたんですから、分かってくれますよね?」「分かりました」大輝はため息をついた。「私が悪かったです。じゃあ、いつなら映画に付き合ってくれるんですか?」綾は眉をひそめた。「私は......」「また断るつもりですか?」大輝は綾の言葉を遮り、じっと見つめながら挑発するように言った。「二宮さん、臆病ですね」綾は言葉に詰まった。「何を怖がっているんですか?」大輝は眉を上げて笑った。「私は別に怖くなんかないでしょ!」綾はこめかみを抑えた。「子どもっぽくないですか?口説くのに、こんな挑発するような言い方をするなんて......」「じゃあ、どうすればいいですか?」大輝は肩をすくめた。「あなたはまるで相手をしてくれませんので、本当に困ってるんです!」綾は心底から言った。「諦めたらどうですか?」「私はもう36歳ですよ」大輝は傷ついた表情を見せた。「二宮さん、あと数年で40歳になります。40歳を過ぎた男はもうダメだって、みんな言っているんです」綾は絶句した。「だから、まずは私と2、3年付き合ってみてください。そしたら私が40歳になる前に振ってくれて構わないから!」綾は呆れて笑った。「恋愛は遊びじゃないんです。いつも冗談ばかり言っているのは知っていますけど、こういうことは冗談で済まされないんですよ」大輝は襟を正した。「冗談に見えるかもしれないが、私
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