「それに、星羅は結婚願望がないとはいうものの、結局彼女が記憶喪失したことであなた達は一緒になったんですから、内心ではあなたとちゃんとやっていこうと思っているはずです。でも、結婚生活を彼女のお母さんからあんまりにも干渉されて、次第に思い詰めていきました。あなたも最初は彼女のお母さんが星羅に与える影響に気づいてなかったかもしれません。けど、今は?まさか気づいてないなんて言えませんよね?それなのに、あなたはそういう束縛を黙認しています。それどころか、あなた自身がまた彼女を束縛することに加担しています。星羅は......ずっとあなたが彼女の本当の気持ちに気づいてくれることを望んでいました。それなのに、あなたは独占欲を露わにして彼女を束縛しようとするばかりです。そんな愛情は、彼女のお母さんがやっているのと何が違うんですか?」それを聞いて丈の顔色は青ざめていく一方だった。彼は反論しようにも、言葉が出てこなかった。なぜなら、綾の言葉は全て図星だったからだ。......星羅の病室から出た綾は、救急外来へと向かった。清彦がちょうど到着したところだった。誠也は既に、清潔感のある服に着替えていた。両手には分厚い包帯が巻かれている。少し滑稽に見えた。看護師は注意した。「数日は絶対に水に濡らさないでください。最初の3日間は、毎日、消毒と包帯の交換に来院してくださいね」誠也は静かに頷いた。ちょうどその時、綾がやってきた。清彦は彼女を見ると、すぐに敬意を払い、「綾さん」と挨拶した。綾は軽く会釈をすると、誠也の方を向き、「入院が必要なの?」と尋ねた。誠也は、3分の1ほど残った点滴のボトルに目をやり、「点滴が終わったら帰れるはず」と答えた。綾は少し間を置いてから、「ところで、この数日、誰か世話してくれる人はいるの?」と尋ねた。しかし、誠也が口を開くよりも早く、清彦は即答した。「私がついております!碓氷先生の世話はお任せください!」誠也は言葉に詰まった。綾は頷き、「清彦がついててくれるなら、安心ね」と言った。誠也は絶句した。「初が待ってるから、私は先に帰るよ。あなた達も帰る時は雨に気をつけて、安全運転でね」綾は言った。誠也は彼女を見つめ、寂しそうな表情を浮かべた。それでも、「ああ。お前も気をつけろよ。雨
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