誠也は丈の言葉に答えず、「あなたは今、救急処置室から戻ってきたのか?」とだけ尋ねた。「ええ!」丈は誠也の向かい側のソファに座り、大きく伸びをしながら言った。「疲れました。危うくあの世行きになるところでした。あと1分遅かったら、手遅れでした」誠也は眉をひそめた。「そんなに酷かったのか?」「内臓出血ですよ。一命は取り留めましたが、集中治療室で数日様子を見る必要があります......」「内臓出血だと?」誠也は丈の言葉を遮り、彼の目をじっと見つめた。丈は目を閉じて、凝り固まった肩を揉んでいたため、誠也の異変に気づかなかった。「昨日まで元気だったのに、今日急に倒れたんです。ですから、人間、一日一日を大切に生きなければいけないんですよ。いつ何が起こるか分かりません。この患者さんみたいに......」「どこだ?」丈は怪訝な顔をした。目を開けると、誠也の険しい表情が目に入り、「どうしたんですか?」と尋ねた。「内臓出血だと?誰がやったんだ?」誠也は低い声で、怒りを抑えながら言った。「『誰がやった』って」丈は背筋を伸ばし、怪訝そうな顔で誠也を見つめた。「80過ぎのおじいさんですよ。誰が殴るんですか?」誠也は驚いた。「おじいさん?」誠也は眉をひそめ、握り締めていた拳を少し緩めた。「お前がさっき、処置してたのは......」「私の患者ですよ!」丈は、誠也が何かおかしいと感じた。「80過ぎのおじいさんのことなんて、どうでもいいでしょう!私が朝、何の用で電話したのか、気にならないのですか?」誠也は何も言わずに唇を噛み締め、丈を見るその目は、明らかに呆れていた。丈は、ますます分からなくなった。「碓氷さん、一体どういうつもりですか?あなたはおかしいですよ!もしかして、朝、電話に出なかったのは、何かあったのですか?どこに行ってたのか知りませんが......まだ話が終わっていませんよ!碓氷さん......」バタンッ。と、ドアを勢いよく閉めて出て行ってしまった。丈は閉まったドアを見つめ、眉をひそめて呟いた。「一体、何なんですか......」-病室で、綾が目を覚ました。星羅が付き添っていて、綾が目を覚ますとすぐに、「具合はどう?」と尋ねると、「大丈夫」と綾は答えた。脳震盪の症状がないことを確認し、星羅はホッとした。
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