「何か手伝おうか?」 キッチンの入り口からひょっこりと顔を出す紅夜に苦笑する。「良いってば。出来たら呼ぶから、運ぶ時だけ手伝って?」 リビングでゆっくり待っていてくれればいいのに、気になるのかちょくちょく見に来る紅夜。 そのたびに手が止まるから少し困るんだけど、構ってくれて嬉しくもある。「……やっぱいいな」 手の動きを再開させた私をじっと見ていた紅夜が呟いた。「え? 何が?」 すぐには視線を向けられなくて声だけで聞き返すと、彼が近付いて来るのが分かった。「美桜が俺の家でこうやって料理したりするトコ。……このまま一緒に暮らさない?」「っ! でも、学校もあるし……まだ学生なのに同棲はちょっと……」 一緒に暮らす。 その魅力的な言葉に心臓が大きく跳ねた。 でも色々と問題はある。 学校もそうだし、何より紅夜と付き合ってることをお母さんにすら話していないから。「分かってるよ。……でも、そういう言い方するってことは嫌じゃないんだよな?」「え? それはもちろん」 キリが良かったのでそこで顔を上げて紅夜の顔を見ると、嬉しそうに細められた目と合った。 そのまま唇が落とされる。「んっ」 触れて、リップ音付きで離れた彼の唇が囁く。「じゃあ、高校出たら。大学生になったら、同棲も良いだろ?」「そう、だね」 先のことは分からないけれど、今は望みだけを口にする。 そうしたいって、思ったのは事実なんだから。 チュッ 紅夜の唇がまた触れてきた。 彼の手が腰を抱き、キスも深くなってくる。「んっこう、や……ちょっと」「んっだめ、もっと欲しい」 求められる喜びに身を震わせるけれど、私は心を鬼にした。
Terakhir Diperbarui : 2025-06-02 Baca selengkapnya