蝿の王ベルゼブブたちによる襲撃から一夜明け、セラフィナたちは狂信者たちの巣窟と化した墓標都市エリュシオンを目指し再び移動を始めた。 既に敵に認知されていても不思議ではないと判断したセラフィナはシェイドたちにエリュシオン自警団員に扮するよう指示を出すと、自らもエリュシオン自警団の外套を羽織り、フードを目深に被って素顔を隠していた。 街や村に立ち寄っても極力、人との接触を避け、素顔を見られぬよう慎重に立ち回る。不思議なことに、何処に敵が潜んでいるか、誰が敵で誰が味方か分からないと、周囲の者全てが敵に思えてくるものである。疑心暗鬼に陥り、少しずつセラフィナたちは精神的に疲弊していった。 そんな、ある日の夕刻── セラフィナたちは、進路からそう外れていない小さな街で宿を取ることにした。人気のある場所であっても狂信者やベルゼブブに襲われる可能性は決して少なくはないが、野宿よりは幾分か危険度が下がるだろうと、そう判断してのことであった。 何せ、旅の初日はベルゼブブたちの流した血の匂いに引き寄せられたのか、マゴットの群れや死の精霊アルコーンといった魔族たちも襲来し、ほぼ夜通し移動手段であるマスティマや物資を守るために戦い続ける羽目になったのだから。 それ故に旅の二日目からは、可能な限り街や村など、人の生活圏で宿を取り、その身を休めることにしていた。それでも、何処に敵の間者が潜んでいるのか分からないため、全くと言っても良いほど安心は出来なかったが。「……ふぅ」 二人部屋に案内されると、セラフィナは安堵の溜め息を吐きつつフードを脱いだ。四六時中、神経を張り詰めていたためか疲労の色が濃い。「……何だか、今までの移動よりもずっとずっと疲れた気がします……」 キリエも何処かげんなりした様子で、ソファーに横たわってぐったりとしている。誰が敵で、誰が味方か分からないと言うだけで、こんなにも疲弊するものなのか。「……墓標都市エリュシオンまで、あとどれくらい時間が掛かるのでしょう?」「そう、だね……墓標都市エリュシオンに着くのは早くて三
Terakhir Diperbarui : 2025-08-16 Baca selengkapnya