翌朝。空がほんのりと白み始め、朝露が空気に漂っていた。未央はすでに虹陽市刑務所の前に着き、父親の好物を持ってこようとしたが、差し入れが禁じされているので諦めるしかなかった。「キシ……」鈍い音とともに、重厚な鉄の正門がゆっくりと開いた。未央は面会室に入り、ガラス越しにあの痩せた姿が見えた。「時間は一時間です、入っていいですよ」「ありがとうございます」未央は頷き、部屋に足を踏み入れた。その姿は次第に鮮明になっていった。目の前に。男の髪は以前よりすっかり白くなり、背中が少し丸まり、目が濁り、まるで十歳も老けたように見える。未央は鼻の奥がツンと熱くなり、声が震えた。「お父さん、会いたかった」父親の前では、強がる必要がはなかった。白鳥家のお嬢様として、素直でいられるのだ。宗一郎は目も少し赤くさせていたが、甘ったるい言葉が苦手だから、ただ心配そうに尋ねた。「未央、最近はどうだ?西嶋家のあのガキ、まだお前に嫌がらせをしてるだろうか?」前回会ったのは一年前だった。その時、未央は博人と理玖のことで精神的にまいっていたのだ。宗一郎はそれを歯がゆく思ったが、自分が出られないのが悔しくてたまらなかった。今でも出て行って博人の野郎をぶん殴ってやりたいと何度も思っていた。未央は唇をすぼめ、込み上げる感情を抑えてから、かすかに笑った。「お父さん、私は博人と離婚したよ」「何だって?」宗一郎は目を見開き、すぐに心を痛めたような表情を浮かべた。娘が博人をどれほど愛していたか、彼はよく知っている。白鳥グループのあの件がまだ起こっていなかった頃、未央はずっと博人の後ろを追いかけていた。宗一郎はその時からあの男を信用していなかったが、娘の想いを尊重し、無理やりに縁談を進めさせたのだった。だが……その後、白鳥グループは陥れられ、彼はここに閉じ込められることになってしまった。博人がどうして未央と結婚するのを認めたかは分からないが、娘が幸せではないことは感じ取っていた。宗一郎は顔色が暗くなり、両手を無意識に握りしめ、関節の血の気が引き、白く見えた。「未央、この数年、すまなかったな」彼は声がかすれた。その声は悔しさと自責に満ちていた。未央は首を左右に振り、むしろ晴れやかな笑顔を浮かべた。
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