悠良はその言葉を聞いて、顔色が一気に青ざめ、ほかのことなど構っていられず、慌てて何度も頷いた。「わ、分かったよ、もう行っていいわ。でもその代わり、絶対に体を大事にして。少しでも具合が悪いと思ったら、すぐに病院に戻ること」それでようやく伶も引き下がり、彼女の鼻先を指で軽くつまんだ。「キスしてほしいなら、素直に言えばいいのに。まあ、遠回しに言わなくても俺はするけど」そう言ってもまだ飽き足らず、彼は悠良の頭をぽんぽんと叩いた。その仕草を見て、悠良はやっと光紀がさっき妙な気分になっていた理由が分かった。伶の態度は、まるで犬をからかっているみたいだったからだ。光紀はこっそり伶を連れ出した。今の彼の病状を考えれば、医者が許すはずがなかったからだ。二人が病院を出たあと、悠良はひとり残され、手持ち無沙汰になった。ベッドに横になって、適当にゲームでもして時間をつぶそうかと思っていたところで、またノックの音が響いた。彼女はうんざりしたようにスマホを置き、力なく声を出した。「入って」ここ数日、どうしてこうも次から次へと病院に押しかけて来るのか。まるで訪問ラッシュのようだ。誰が来たのか特に考えもせず、どうせ正雄か和志だろうと高を括っていた。ところが、病室に入ってきたのは莉子と雪江だった。悠良の顔から一気に笑みが消えた。今の彼女は誰かに愛想を振りまく気分ではないし、ましてこの二人はかつて自分を殺そうとまでした相手だ。「誰に聞いて、ここに来たの」莉子は作り笑いを浮かべ、果物と花束を提げて、いかにも見舞いに来た人間のように装っていた。「私たち、何だかんだ言っても実の姉妹でしょ。過去のことはもう過ぎたことだし、まだ怒ってるの?」そう言って花束を棚に置いた。「それに、前はお互い利害関係があったけど、今はもう違うのよ。これからは普通に姉妹、あるいは友達みたいにやっていけるじゃない」悠良は聞くなり、隠そうともしない嘲笑を浮かべ、見下すような目で莉子を見た。「私はあんたと友達になる気なんてないわ。それに、あんたみたいな人間と友達?自惚れないで。友達ですら願い下げよ」伶と一緒に過ごしてきたせいか、彼女の言葉もすっかり鋭くなっていた。昔は遠回しに言っていたのに、今は分かった。莉子みたいに二枚舌で
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